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これは魔法の書です。  作者: わおん
302/2328

302

朝食の後、


僕は、家族に、恐竜の赤ちゃんを、


手放す事を、説明した。



殺す訳では無い・・・


捨てる訳でも無い・・・



我々の居ない場所で、


肉を与えて、


ある程度まで育て、


成長したら、



牛の大地に連れて行き、


数日は、その様子を見守り、



狩りが出来る事と、


外敵を撃退出来る事を確認、



その後、お別れする。



その段取りを説明した。



すると、意外な事に、


全員が、それに同意した。



赤ちゃんを、捨てる事を選んだのだ。



僕は、その事に少し驚いたが、


それは仕方なかった。



毎回、母の腕が傷だらけに成るのを見て、


父も祖母も、母自身も、


恐竜の飼育が、困難である事を、


理解して居たのだ。



こうして、僕は、


恐竜の赤ちゃん2匹を、


北大川に連れて行った。



川の近くに巣穴を掘り、


そこで、母が、最後に肉を与え、


そこに赤ちゃんを放置・・・



『溺れないだろうか・・・?』



北大川は、


ネズミの森の中を流れる、大きな川である。



本来は、その川幅が、


40メートル以上あったと、考えられるが、


現在は、台風後の増水が収まり、



水が激減して、その水位は10センチ、


川幅は、5メートル程である。



しかも、流れは止まっている。



『恐竜の赤ちゃんの身長は・・・』


『頭から、足までで10センチ・・・』



『4日で、3センチも伸びた・・・?』


などと、考えながら、



赤ちゃんを残し、


我々は上空へと移動した。



バリアの効果なのか・・・?


それとも、上空だからなのか・・・?



赤ちゃんには、我々が見えない様である。



結果、赤ちゃんは、巣穴に戻り、


眠った様だ。



母の悲しみが伝わって来る・・・



『我が子を捨てたのだ・・・』


『僕が、捨てさせたのだ・・・』



しかし、母は、原始人である。



ある意味、野生動物なのだ。



その為、仲間を守る本能が強い・・・


恐竜を飼う事の危険性・・・



理屈では無く、


本能で、それを理解していた。



守るベキは、恐竜の赤ちゃんでは無い。


父や祖母なのだ。



とても残酷だが、


それが事実である。



1時間後、帰宅・・・


本日から、メス牛の放牧を行う。



1ヶ月近く、柵の中で育て、


その間に、タロに服従したメス牛、



現在では、父や祖母が、マッサージをすると、


牛は、喜ぶ様に成っていた。



近い将来、これを殺して、食べれるのか・・・?



その様な不安が、これ以上、大きく成る前に、


放牧して、タロとメス牛で、生活させる。



そして、それが上手く行けば、


1週間後、新しい牛を連れて来て、


柵の中で飼育する。



これを繰り返し、


牧草地での放牧を行う。



放牧を行えば、今後、


牛のエサやりは、不要に成る。



父や祖母の負担も減って、


家作りに専念出来るのだ。



そして、放牧が上手く行けば、


今後は、魔法を使わなくても、


父、母、祖母、タロは、


自分達の力で、生きて行ける様に成る。



再び、家族に必要とされる誇りを持って、


生きて行けるのだ。



家族全員が、その事を理解していた。



誰も、僕の魔法に不満は持っていない。



しかし、僕が、魔法を使う事で、


父や、祖母の、必要性が、


失われている事は、事実であった。



父が、死んでも、


祖母が、死んでも、



母は困らない・・・



もちろん、悲しむ・・・



とても、悲しむ・・・



しかし、


食べ物に困る事は無い・・・


病気で困る事も無い・・・



災害で、困る事も無い・・・



全ては、息子がやってくれる・・・



息子である、僕がいれば・・・



僕が、魔法を使えば・・・



生活は、困らない・・・



それが事実である。



魔法は、


人の生きる意味を奪う・・・


人の価値を奪う・・・



生きる誇りを奪う・・・



それが、魔法である。



しかし、今後は、


僕が魔法を使わなくても、


牛を育て、


魚を捕まえ、


芋を育て、


それらを食べて生きて行ける。



1年後には、そんな日がやって来る。


今日は、その第1歩なのだ。



全員が、その事を理解していた。



しかし、全員の表情は暗い・・・


悲しいのだ・・・



『恐竜を捨てたのは・・・』


『失敗だったのか・・・』



そんな気持ちに成るが、



ナイフを持って、暴れる幼児・・・


そんな子供とは、生活出来ない。



だから、捨てたのだ。



『家族の為に捨てたんだ・・・』



『実際には、捨てた訳では無い・・・』



僕は、自分に言い聞かせた。



牛の放牧を開始、


牛の柵には、出入り口が無い。



その為、僕が、瞬間移動で、柵の外に出した。



その結果、多少動揺するメス牛・・・



それを、タロが、落ち着かせ、


牧草地へと連れて行った。



その後、とまどいを見せたメス牛だったが、



タロが居る事で、安心出来るのか、


牧草地の草を食べ始めた。



では、次である・・・



元々、我々は、ネズミの拠点で、


生活する予定だった。



しかし、僕が、脳死を回避した事で、


牛の、段階的な飼育が可能に成った。



本当は、僕が、死ぬ前に、


40頭の牛を、牧草地に連れて来て、


放牧する予定だったのだ。



つまり、野生の牛を、


牧草地に放ち、


自力で生存させる。



そして、


僕を失った家族が、


3ヶ月に1度、


ネズミの拠点から、


200キロを数日かけて移動して、



牧草地に行き、


牛を狩り、その肉を干し肉にして、



ネズミの拠点に持ち帰る。



その様に考えていた。



なぜなら、ネズミの拠点には、


芋畑があるのだ。



つまり、ネズミの拠点の近くで、


野生の牛を放置した場合、


牛が、芋の葉を食べてしまい。



芋が育たず、収穫が不可能に成るのだ。



その為、ネズミの拠点から、


南へ200キロの場所に、


牧草地を作り、



その地域で、野生の牛を、


自然繁殖させる計画だった。



ところが、僕が脳死を回避した事で、


状況が変わった。



牛を、育てて、飼い慣らし、


それを繁殖させる事が、


可能に成ったのだ。



その為、我々は、ネズミの拠点を捨てて、


牧草地の近くに、家を建てる事にした。



では、現在、ネズミの拠点の近く、


1番川の北側の、芋畑は、


どう成っているのか・・・?


というと、



僕が、毎日、水やりに行っていた。



そして、その芋が、


収穫の時期を向かえていたのだ。



実際、それは、芋では無い。


何かの根である。



それを、僕が、芋と呼んでいるのだ。



本来、山の中で、育つ、芋の様な植物・・・



それを平地の日当たりの良い場所で、


毎日、水を与えて育てたのだ。



『一体、どの様に成長しているのか・・・?』



見えない手を使い、時々調べているので、


大きく成長している事は解った。



そして、このまま、育て続けると、


芋から、新しい芽が出てしまう事も解った。



だから、今日、収穫に向かうのだ。


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