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これは魔法の書です。  作者: わおん
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僕は、小学1年生に成っていた。



相変らず、姉との2人部屋である。


しかし、結果的に、それが良かったのだ。



僕は、魔法の事を、秘密にしていた。



これは、絶対だった。



『もし、バレたら・・・』


『姉に馬鹿にされる・・・』


『泣かされる・・・』



それは、当時の僕にとって、


最大の恐怖だった。



しかし、姉も必死だったのだ。


姉は、本気で、僕の心配をしていた。



紙飛行機の飛ばし過ぎ・・・



そんな事で、救急車で運ばれる弟なのだ。



そんな弟が、家にいるのだから、


不安だったと思う。



だから姉は、僕が、過剰な練習をして、


倒れてしまわない様に、見張っていた。



僕を馬鹿にして、


練習を、止めようとしていた。



姉は、姉なりに考え、


自分の役目を、果たしていたのだ。



しかし、そんな事など、知らない僕にとっては、


姉に、馬鹿にされる・・・


姉に、泣かされる・・・


それは、逃げ場の無い絶望だった。



僕の中には、その恐怖が、


幼児体験として、残っている為、



『姉には、秘密にする・・・』



つまり、



『魔法の事は、誰にも教えない・・・』


『絶対に、秘密を守る・・・』



その様な自制心が、鍛えられていた。



そして、それが魔法の定着に、


効果を発揮したのだ。




当時、小学1年生・・・


僕は、お化けも、怖かった。



それは、当然である。


怖がる様に、考えられたモノなのだ。



だから、お化けは、怖いのだ。



しかし、お化けは、存在しない。


理屈の上では、それを理解していた。



常識的に考えれば、理解出来るのだ。



お化けの、ニュースなど、


見た事が無いのだ。



これは、僕に限った事では無い。



不思議な力が、存在しない事も、


理解出来る様に、成って行く。



その為、霊が見える子供も、


成長に連れ、減って行く。



「サンタはいる!」という、


同級生の、アピールも、


年々、演技に成って行く。



しかし、その時期、


僕は、魔法を使う時・・・



人に見付かる事に、不安を感じ、恐怖を感じ、


周囲を警戒していた。



ここが重要である。



以前、コマ回しの練習会で、僕は、姉に、


「ヒモを引く力が、弱い」といわれた。



周囲の子も、それに釣られ、


「弱い、弱い」と連呼した。



もし、あの時、僕が、


その影響を、受ける様な人間なら・・・



僕は、この時期、魔法の力を、


失って、いただろう。



しかし、


僕は、あの日、重要な事を、理解したのだ。



社会に流されない勇気・・・



その意思が、小学1年生に成った僕にも、


受け継がれていた。



僕には、社会的な、常識がある。



その為、テレビに、


自称、宇宙人が、登場しても、


僕は、信じない。



「宇宙人と知り合いです」


そんな人物が、登場しても、


僕は、信じない。



その程度の、常識は、あるのだ。



しかし、僕は、


魔法が、実在しない事を、知っているが、


自分が、魔法使いである事を、知っている。



そして、それを証明出来る。



しかし、それを、誰にも知らせない・・・


その様な、強い自制心を、持っている・・・



それが、魔法使いなのだ。




小学校から帰った僕は、


着替えの為、子供部屋に向かった。



小学生に成った事で、子供部屋での着替えが、


許可されたのだ。



部屋のドアを少し開ける。



そして、そのドアを、少しだけ押す・・・


すると、その後、ドアが不自然に開く。



これは、ズルかも知れない・・・


力の加減で、開いているのかも、知れない。



ここまでなら・・・



ところが、1度開いたドアが、


今度は、こちらに向かい、閉じて来る。



ちなみに、閉じて来たドアを、


再び、開かせる事も出来る。



もちろん、最初の1押し以外は、


ドアには、ふれていない。



現在の記録は4往復半である。



では、なぜ、この様な事が出来るのか?



『魔法なのだから、出来て当然・・・』



最初、僕は、その様に思っていた。



しかし、それは違った・・・



開いたドアは、1度、止まる。



その為、


動かない・・・


動かせない・・・


僕が動かせるのは、動いているモノだけである。



羽毛は飛んでいる。


だから、超ギザギザ飛行が可能である。



ラジコンカーは、走っている。


だから、カーブが、可能である。



しかし、ドアは、固定されている。



結果、最初の1押しを、動力として、


開かせる事は、出来ても・・・



魔法で、引き戻す時、


ドアは、停止しているのだ。



つまり、僕の魔法では、動かせないのだ。



では、どうするか・・・?



僕は、集中してドアを見る。



すると、開いて行くドアが、


スローモーションで見える。



そして、ドアが開き、壁に当たる直前、


そのドアの動きが、止まってしまう・・・



完全に止まってしまう。



おそらく、僕の無意識が、ドアの故障を防ぐ為に、


魔法で止めているのだ。



その為、完全に停止する。



しかし、その瞬間に注目する・・・



すると、完全に停止したドアが、


一瞬、ゆれる・・・



『なぜ・・・?』



当時、僕が「ボヨン」と呼んでいた現象により、


開いて止まったドアが、ほんの少し、ゆれるのだ。



『本当に、動いているのか・・・?』



と思える程、弱い振動である。



僕は、その瞬間をスローモーションで、


はっきりと見る。



すると、ドアが、こちらに向かい、再び動き出す。



スローモーションで見なくては、


ドアを動かす魔法は、発動しない。



ちなみに、スローモーションで見る力は、


連射が出来ない。



結果、ドアが開閉する間、


ずっとスローモーションで、見続ける必要がある。



そして、現在4往復半が、限界であった。


非常に疲れる。


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