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これは魔法の書です。  作者: わおん
3/2168

003

翌日、日曜日の朝、


僕は変身ベルトを装着して、


「よし!」


見えない敵と戦っていた。



駄目なのは、解っている。


魔法の実験の方が、大切なのだ。



しかし、姉がいるのだ。


下手な真似は、出来ない。



決して、遊んでいる訳じゃない。



『魔法の実験は、明日から、がんばろう!』




翌日、月曜日・・・


『幼稚園に到着したら・・・』


『変身ベルトの自慢をする・・・!』


と心に誓う僕。



しかし・・・


『いや!駄目だ!』


僕の自制心が、それを止めた。



そんな事をしたら、


誰かが、遊びに来てしまう。



『それは困る・・・』



姉が帰って来るまでの間に、


魔法の実験をしないと、いけないのだ。



だから、僕は、耐えた。


自慢したいのを我慢した。


滅茶苦茶我慢した。



こうして、幼稚園から帰った僕は、


実験を開始した。



まずは、ミニカーを床に置く。



次に、右手の人差し指で、


ミニカーの後部を突き、


フローリングの床を走らせる。



そして、1歩分しか進まない、力の加減を確認。



次に、隣の部屋に行き、


気持ちを作り、


「トイレ、トイレ」と呪文を唱えながら。



四つんばいに成って、ミニカーを突き、


左手を振り上げる。



しかし、


『動かない・・・』


5回続けたが、


指で突いた分しか、動かない。



では次、


本当はボールが欲しいのだが、


僕の家には、ボールが無い。



無いモノは仕方が無い。



そこで代用品を用意した。



1回押すと部屋の蚊が、全滅するという、


小さなスプレー缶・・・



それを床に寝かして、


1歩分しか転がらない、力の加減を確認。



隣の部屋に行き、気持ちを作り、


「トイレ、トイレ」と呪文を唱えながら、


部屋に戻る。



そして、四つんばいに成って、缶を突き、


左手を振り上げる。



『2歩分動いた・・・?』


『力を入れ過ぎた・・・?』



再度、力の加減を確認、2度目の挑戦。



「トイレ、トイレ」



『3歩分動いた・・・』


『力の加減は、間違っていない・・・』


『あっ! 姉が帰ってきた・・・』



しかし、姉には遊ぶ約束があり、直ぐに外出。


チャンスである。



3度目の挑戦、


『動かない・・・・』



4度目の挑戦、


『1歩半・・・これは力の加減・・・』



5度目の挑戦、


『やったー!3歩分動いた』



10度目までは数えたが、


そこから先は、数えていない。



とにかく何度も挑戦した。



現在、最長記録は3歩半、微妙である。


魔法では無く、力の加減という可能性が消せない。



その時、僕はひらめいた。



『カーブをさせれば・・・!』



S字カーブに転がせば、


力加減では無い事が、証明出来るのだ。



当時、アルファベットのSなど知らなかったが、


僕は、必死だった。



その結果、魔法である事を、確認する方法、


それを導き出したのだ。



『よし!やるぞ!』



と思ったが、


その瞬間、母に止められた。



僕のヒザと、足の指の甲は、


何度も床にスレた事で、


皮が、めくれて、


血が、にじんでいた。



どうりでヒリヒリする訳である。


手首も痛い。



僕は、母に怒られ、


小さなスプレー缶を没収された。



数時間後、筋肉疲労で発熱する僕。


母に連れられ病院に行った。



翌日、筋肉痛で思う様に、身体が動かないので、


幼稚園を休む事に成った。



そんな僕を、姉は、


「トイレちゃん」とからかった。



昨日の夜、僕は「トイレ、トイレ」と、


寝言を言っていたらしい。



「そんな呼び方はしないで」と


僕は泣いて、お願いしたが、


姉は、止めてくれなかった。



だから僕は、泣きながら我慢した。


すると、姉の登校時間がやって来た。



『よし!』


『これで馬鹿にされない・・・』


『姉に見られず練習が出来る・・・』



ここで気持ちを切り替える。


泣いていたら、時間の無駄である。



昨日、小さなスプレー缶は、没収されたが、


カーテンがある。



僕はベットから抜け出すと、窓を開けた。



『風が無い・・・』



仕方が無いので、


右手でカーテンを、めくり上げる。



結果、その後、数秒間は、


カーテンが、少し動いている状態に成る。



そこで、僕は、小声で呪文を唱えながら、


左手を振り上げる。



しかし、カーテンが、


ふり上がる事は、無かった。



左腕に激痛が走る。



昨日の実験が原因で、


身体を動かすと、激痛が走り、集中出来ない。



時間が、無駄に成る。


その事で、あせる。



部屋を出て、気持ちを作りたいのだが、


それをすると母にバレる。



『どうすれば・・・』



そこで、僕は、打開策を考える事にした。



以前、トイレのフタを、開けていた時には、


気持ちなど、作っていなかった。



「トイレ、トイレ」などと、


呪文も唱えていなかった。



つまり、呪文は、不要なのである。



『では、何が必要か・・・?』



それは、それが出来て当然という、


思い込みである。



僕は、感覚的に、それを理解していた。



『では、どうするか・・・?』



その事を考えていると、


母がプリンを出してくれた。



録画していたアニメを見せてくれた。


お昼は、ホットケーキを作ってくれた。


気付いた時には、お昼寝をしていた。


目を覚ますと、姉が帰って来ていた。



『しまった!』


『こうなったら、明日も幼稚園を休むぞ!』



僕は、ベストコンディションを作る為に、


『痛いの痛いの飛んで行け~』を、


心の中で繰り返し、回復を願った。



翌朝・・・



『しまった・・・!』



僕は、回復をアピールしてしまい、


幼稚園に連れて行かれた。


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