297
恐竜の赤ちゃんの、飼育方法を調べる為に
僕は、牛の大地で、恐竜を探し続けた。
しかし、本来、恐竜の赤ちゃんは、
この時期には、産まれない様である。
卵さえ、見つけられない。
我々の赤ちゃんは、
魔法によって、無理矢理に、
誕生したのだ。
結局、僕は、何も得られないまま、
我々山脈へと引き返した。
そして、引き返した瞬間に気付く・・・
『亀の産卵・・・』
『亀は、卵を砂で隠す・・・』
『恐竜も、それをしていた・・・?』
『だから、卵が見えなかった・・・?』
今回、僕は、見えない手を使っていない。
恐竜や、その卵に、
魔法の影響を与えない為である。
『僕は、何をやってるんだ・・・!』
結局は、全てが無駄だった。
4時間かけて調べ、何1つ解らない・・・
そして、帰って着てから、
単純な事に気付く・・・
そもそも、今回、行く前から、
行っても、無駄な事は充分に承知していた。
それなのに行って・・・
何も得られなかった・・・
僕は、自分の愚かさに「うんざり」した。
衝動的に、もう1度、
牛の大地に戻る事を考えたが、
それは、無駄であると理解出来た。
土の中に卵が、あったとしても、
赤ちゃんの、育て方は解らないのだ。
太陽の真上にあった。
昼である・・・
家に戻って、
家族で昼食の時間・・・
母の50センチ左横には、
牛の骨付き肉・・・
つまり、牛の死体が浮かんでいる。
皮と内臓は、最初に取り除いたが、
それでも、頭部は残っていて、
不気味である。
しかし、父は、その様な事は気にせずに、
石のナイフで、肉を切り取り、
タロに確認させる。
あくまでも、匂いでの確認、
タロは、それを食べない。
その後、巣穴から、
赤ちゃんを連れて来て、
昼食を開始する。
恐竜の赤ちゃんに見せる為に、
祖母が、最初に食べる。
他の者は、食べ終わるのを待つ、
そして、父、
そして、母、
そして、タロ、
前の者が、食べ終わるまで、
次の者は、食べる事が出来ない。
そして、最後に、赤ちゃん・・・
この馬鹿馬鹿しい食事方法・・・
しかし、これは、とても重要であった。
僕は、その事を生前から知っていた。
生前、僕が生活していたのは、雪国だった。
そして、元々、この地域で飼われている犬は、
「熊よけ」の番犬だった。
そして、その中でも優秀な犬は、
猟犬として、育てられていた。
その文化が、近年まで残っていたのだ。
その為、僕の住んでいた地域の猟犬は、
優秀だった。
人間を襲わないのだ。
当然の事の様に思えるが、
お馬鹿ペットが居る様に、
お馬鹿猟犬も存在する。
山で放すと、そのまま逃げて行方不明・・・
数日後、人を襲いニュースに成る。
実際に、その様な事が起きるのだ。
だから、動物への「しつけ」は大切である。
「いじめる」のでは無い。
ペット番組では、
動物の忠誠心を試す為、
過剰な「待て!」を繰り返したり、
不安にさせて喜んでいるが、
それは、ペットに対する「侮辱」である。
ペットを馬鹿にしているのだ。
それでは、本物の忠誠心は育たない。
そこで、重要なのが、食べる順番である。
自分の順番・・・
それを理解させる。
我慢を学ばせる。
だから、祖母は、赤ちゃんの方は見ないで、
肉を食べた。
赤ちゃんの方を見れば、
赤ちゃんは、肉が「もらえる」と勘違いする。
だから、赤ちゃんの方を見ずに、
肉だけを見て食べる。
赤ちゃんは、必死に鳴くので、
それを聞くと、心苦しい・・・
自分よりも先に、赤ちゃんに肉をあげたい・・・
しかし、それを我慢する。
その後、父も同様に、肉を食べる・・・
その間、母は、赤ちゃんを抱きしめ、
やさしく「話かける」
母は、赤ちゃんだけを見て、
やさしく「なぜる」
そして、母が、肉を食べる順番が回って来たら、
母は、肉だけを見て、肉を食べる。
その間、タロが、赤ちゃんを見張る。
その後、タロが、肉を食べている間、
母が、再び、赤ちゃんを抱きしめる。
すると、母から、肉の匂いがするので、
赤ちゃんは、我慢が出来ず、
暴れる。
結果、赤ちゃんの爪で、
母はケガをする。
しかし、母は、そんな赤ちゃんを抱きしめ、
やさしく「話しかけ」
我慢を教える。
そして、赤ちゃんの順番が回って来たら、
母が、赤ちゃんに肉を与える。
我々は、恐竜を家族にする為、
その苦行に耐えた。
ペットとは、愛玩動物である。
つまり、玩具なのだ。
しかし、我々が育てているのは、家族である。
危険な生物を家族にするのだ。
玩具では無いのだ。




