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全長12センチの恐竜の赤ちゃんが、
2匹・・・
その赤ちゃんの、エサとして、
僕は、1頭の牛を殺した。
現在、季節は夏・・・
肉は数日で腐る・・・
割りに合わない・・・
薫製肉は、すでに2ヶ月分ある。
そんな状況で、
さらに、2ヶ月分の薫製を作るのか・・・?
その場合、明日から、
赤ちゃんのエサは、どうする・・・?
薫製肉は、消化に悪い。
つまり、赤ちゃんのエサには向いていない。
つまり、今後も、新鮮な肉が必要なのだ。
では、どうする・・・?
『バリアで包んだら・・・どうなる・・・?』
『夏でも、保存できるのでは・・・?』
台風の、強風も豪雨も、無効にするバリア、
『それで包み込めば・・・』
『腐らないのでは・・・?』
魔法を使う事に、抵抗はあるが、
今こそ、それを試すチャンスであった。
僕は、その事を家族に説明して、
その後、牛肉1頭分を、包み込んだ。
『これが一体どう成るのか・・・?』
毎日、タロに匂いを嗅いでもらい、
安全が確認出来たら、
焼肉にして、母が食べる。
そして、安全が確認出来たら、
生肉を、赤ちゃんに与える。
その様に決めた。
こうして、夜に成り、
家族も赤ちゃんも、眠りについた。
深夜、僕1人の時間、
僕は、賢く成る方法を考えていた。
『失敗から学ぶ・・・』
今、それを実践する時である。
卵から、恐竜の赤ちゃんが生まれた。
しかし、今日の今日まで、
僕は、その事を、知らなかった。
鳥が生まれる可能性・・・
恐竜人間が生まれる可能性・・・
生まれる前に、見えない手で、
確認する事は出来た・・・
しかし、僕は、それをしなかった。
その結果、今日の「ごたごた」に、つながった。
それを踏まえ、
僕は、胎児の僕を、
観察するベキなのでは・・・?
と思える。
しかし、それは大きなリスクである。
確認をすれば「意識」をしてしまう。
僕は、人間の赤ちゃんを見た時、
足が短い様に思える。
これが「意識」である。
その長さが正常なのに、
少し、短いと感じてしまう。
そして、僕は、それを「無意識魔法」で、
修正してしまう可能性がある。
つまり、不自然な形状にしてしまうのだ。
結果、出産の時、その不自然が原因で難産に成る。
生まれた後も、それは、正常な体型ではない。
本来の形状こそが、
赤ちゃんを、正常に育てる為に、必要な形状なのだ。
それを僕の「無意識魔法」が改悪してしまう。
その危険性があった。
卵の内部を確認しなかったのも、
それが理由であった。
僕の身勝手な意識、
「長い、短い」
その様な感覚で、卵の中の何かが、
改悪され、不自然な形状で産まれて来る。
その危険性を考えた場合、
卵の中身を、確認する事など、出来なかった。
『では、卵の中身は見ずに・・・』
『産まれて来る何かを、恐竜と予想して・・・』
『準備して置けば、良かったのでは・・・?』
その様にも思えるが、
産まれて来るのが、
鳥なのか・・・?
恐竜なのか・・・?
あるいは別の何かなのか・・・?
それが解らない段階で、
「恐竜」と「意識」した場合、
無意識魔法が、どの様に「影響」するのか・・・?
その不安もあった。
正直、考え過ぎだと思う・・・
しかし、僕の魔法は、
気付いた時には、進歩している。
結果、今の段階で「影響」が無くても、
次の瞬間には、解らない・・・
その様な不安がある。
その為、僕は、この2週間、卵の事は、
出来る限り考えなかった。
そして、今現在も、
僕は、胎児である僕自身の事を、
なるべく考えない様にしている。
しかし・・・
今日、僕は、恐竜の誕生によって、
事前に調べ、用意する事の大切さを学んだ。
ところが、僕が、それを行うと、
産まれて来る僕の身体に、
不自然な影響を与える危険性がある。
結果、事前の準備の重要性を学んだが、
それを生かせない・・・
それが現実であった。
『こんな事で賢く成れるのか・・・?』
大切な事を学んでも、
魔法が邪魔で、それが生かせない・・・
僕は思った。
一生、死ぬ事の無い魔法使いよりも、
学んだ事を生かせる人間の方が、
有利なのでは・・・?
次の世代に、その知識を与え、
次の世代が、それを進歩させ、次に伝える。
原始人には、コンピューターは作れない、
しかし、その子孫は、コンピューターを発明した。
『魔法使いの僕に、出来ない事を・・・』
『原始人の子孫が、実現する・・・』
『人間は、1人で生きている訳では無い・・・』
『受継ぐ為に、生きているんだ・・・』
その日、僕は、何か重要な事を学んだ様に思えた。
しかし、この時の僕には、
それを生かす事が出来なかった。




