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僕は、理屈っぽい人間である・・・
その為、普通を実行する事に不安がある。
『恐竜の赤ちゃんに、何を食べさせる・・・?』
『おそらく肉を食べる・・・』
『しかし、何の肉・・・?』
『本当に、肉・・・?』
『赤ちゃんの時期だけ、虫を食べるとか・・・?』
本来、この様な事は、
事前に確かめ、用意しておくベキ事である。
しかし、本当に、恐竜が生まれるのか・・・?
今の今まで、解らなかったのだ。
恐竜人間が生まれる恐怖・・・
その様な不安も感じていた。
場合によっては、生まれた瞬間に殺す・・・
その様な決意もあった。
その為、何も用意出来なかった。
ところが、生まれて来たのは、
恐竜の赤ちゃんだった。
そしてエサが必要である。
恐竜の赤ちゃんは、食べ物を求めている。
直ぐに対応する必要がある。
『肉・・・?』
『虫・・・?』
『そんなモノを食べさせて・・・』
『大丈夫なのか・・・?』
様々な不安を感じる。
コアラのメスは、
自分のフンで、赤ちゃんを育てる。
『では、この恐竜の赤ちゃんは・・・?』
もちろん、フンなど、
与えない・・・ハズである・・・
しかし、肉を与えても良いのか・・・?
軽率な判断が、
今後、我々を苦しめる・・・
その様な可能性を感じた。
『何の肉を食べさせる・・・?』
『牛肉で良いのか・・・?』
牛の大地には、通称「恐竜池」がある。
そこで暮らす3頭の恐竜が以前、
牛を狩って食べていた。
つまり、この赤ちゃん恐竜も、
牛肉を与えて大丈夫だと思う。
しかし、ここで問題である。
我々と同じモノを、食べさせて良いのか・・・?
『この子たち・・・将来どうする・・・?』
僕は、この赤ちゃんの両親を殺した・・・
その罪悪感がある。
その為、この赤ちゃんを育て、
立派な大人にして、
牛の大地に帰してやる。
その様に考えていた。
しかし・・・
『本当に帰せるのか・・・?』
この2匹の赤ちゃんは、
すでに賢い・・・
その様に思えた。
手を使い、卵のひび割れを開いて、
母に向かって歩いたのだ。
僕は、他の恐竜の誕生を、見た事が無い。
しかし、
これほど、段取り良く、行動するだろうか・・・?
無意味に暴れて、結果、卵から出て来る・・・
それが一般的な、誕生ではないか・・・?
そして、思い出す。
恐竜池の恐竜は、
3頭で役割を分担して、狩りを行っていた。
そして、この赤ちゃん恐竜は、
その3頭と、同種と考えられる。
つまり、本来賢い恐竜に、
魔法の影響を与えた事で、
さらに賢く成った。
そして、今後、大人に成るまで、
我々が育てる・・・
という事は、優秀に成長する。
それを、将来、
牛の大地に帰せるだろうか・・・?
この子たちが、
それを望むだろうか・・・?
可能性として、
一生、家族として、生活する事が、予想された。
しかし、それは、上手く行った場合の話である。
『もし、恐竜の本能が、目覚めたら・・・?』
『将来、親を食べる習性があったら・・・?』
『賢しさと、本能・・・』
『優秀な動物が、本能に目覚めた時・・・』
『我々に、何をする・・・?』
『計画的に、我々を狩る・・・?』
などと考えている間も、
2匹の赤ちゃんは、母に向かって、
口を開いている。
僕は、音が聞こえないが、
赤ちゃんは、「ピーピー」と鳴いているらしい。
現在、牛の拠点には、
乾燥肉と、メス牛が1頭、
『乾燥肉は、消化に悪い・・・』
『赤ちゃんに、与えるモノではない・・・』
メス牛は、飼育方法を完成させる為に、
育てている・・・
現在は、タロの監視が無くても、
暴れない・・・
つまり、このメス牛は、
今後、牛を育てる為に必要な、
我々の教材である・・・
『だから、今日、殺す訳には行かない・・・』
と成ると、
『牛の大地で、牛を1頭、狩ってくる・・・』
『虫も数匹、つかまえよう・・・』
と、いつもなら、
ここで、瞬間移動を行い、
2分後には、牛1頭を持ち帰る事も出来る・・・
しかし、
『赤ちゃんをどうする・・・?』




