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僕は、他人事なら、理解出来る・・・
ワイドショーのコメンテーターは、
自分の事を、賢いと勘違いした、無知な人間、
自分レベルの経験を、
世界レベルと勘違いして、
得意気に成る・・・
ワイドショーの出演を、引き受けた瞬間・・・
人は、その様な人間に成ってしまう。
生前の僕は、それを理解していた。
震災の教訓などと言いながら、
ハイヒールを問題視しない。
それで避難が出来るのか・・・?
クレーマーを問題視するが、
天気に関して、
気象予報士に文句を言う。
政治の文句は言うが、
自分では、何も出来ない・・・
生前の僕を、それを見ていた。
僕は、愚か者を理解出来る。
しかし、僕自身が、愚か者なのだ。
では、どの様にすれば、
自分の愚かの行動を、
止める事が出来るのか・・・?
『魔法を使わない・・・』
などと考えながらも、
我々には、魔法が必要である。
現在、我々は、大陸の東側で生活している。
そして、その東側には、ハチが居ない・・・
津波以前は、居たらしいが、
現在は居ない・・・
それが、どの程度、深刻な状況なのか・・・?
解らない・・・
『しかし、生前の知識で考えれば・・・』
『ハチは、必要だ・・・』
ハチが居ないと、
森が滅ぶとテレビで言っていた・・・
『それは、本当か・・・?』
『CMで見たし、アニメ映画でも見た・・・』
『ハチが受粉に役立つ事も知っている・・・』
『つまり、ハチは、必要だ・・・』
では、大陸の西から、
ハチを連れて来ても良いのか・・・?
理屈の上では、連れて来れば良い、
実際、牛や魚は連れて来ているのだ。
しかし、恐くて、実行出来ない。
本当に、ハチを連れて来ても、
大丈夫なのか・・・?
昨日までの僕は、
地面の塩分除去は、正しい事だと思っていた。
ところが、
塩分除去によって、
虫が絶命したと、
先ほど、理解した。
僕は、間違った事をしていたのだ。
しかし、塩分の除去は必要だった。
問題だったのは、
塩分と一緒に、除去した「何か」・・・
その「何か」を除去した事で、虫が絶滅した。
しかし、本当に、そうなのか・・・?
保証は無い。
あくまでも、小学生レベルの予想である。
つまり、虫の絶滅に関して、
今後、別の答えが、出る可能性もあるのだ。
それを踏まえ・・・
ハチを連れて来て良いのか・・・?
どの様な問題が起こる・・・?
『ハチに刺されて死ぬ・・・?』
『アナフィラキシーショック・・・?』
スズメバチに1度刺されると、
体内に免疫が出来る。
そして、その免疫が、
過剰反応するタイプの人がいる。
その人が、再び、スズメバチに刺されると、
発作が起きて死んでしまう。
『この世界の、ハチでも・・・』
『それで、死ぬのだろうか・・・?』
それを確認した時、
家族の誰かが死ぬ時である。
『ハチは、保留だ・・・』
では、次である・・・
僕が、地面の、塩分除去を行った時、
一緒に取り除いてしまった「何か」・・・
その何かは、
自然に復活する成分なのか・・・?
例えば、牛の大地や、山菜森や、狼山から、
土を集め、その土を、
枯れた大地や、ネズミの森や、3人山脈に、
染み込ませる事が・・・
『必要だろうか・・・?』
考えても、解らない、
そこで、ヒントを探す・・・
そして、思い浮かんだのが、
川の小魚だった。
現在、枯れた大地には、川が流れている。
もちろん、この川も、その上流も全て、
塩分除去を行っている。
そして、その後、
その川には、牛の大地から、連れて来た小魚、
通称・メダカを放流したのだ。
僕は、そのメダカに、エサを与えていない。
つまり、
地面から、取り除いた「何か」が無くても、
生物は生きて行けるのだ。
という事は、
大陸の西の土を、こちらに持って来て、
地面に染み込ませる必要は無い・・・
それが、僕の出した答えだった。
しかし、本音を言えば、
僕は、恐がっていたのだ。
ハチを連れて来て・・・
土を運んで来て・・・
『何かが起きたら・・・?』
そう考えると、恐くて、実行出来なかったのだ。
その為、実行出来ない事は、他にもある。
僕は、重要な問題に気付いていた。
『ダンゴ虫・・・』
ダンゴ虫は、落ち葉を食べて、
それを、土に変えてくれる。
もし、山にダンゴ虫が居ない場合、
落ち葉は、バクテリアに分解され、
腐る・・・
結果、異臭を放つ・・・
つまり、山を正常化させる為には、
ダンゴ虫も必要なのだ。
特に、ネズミの拠点や、牛の拠点の地域は、
日本に似た気候である。
その為、ダンゴ虫は有効である。
しかし・・・
僕は、ダンゴ虫を探しに行かなかった。
何かをする事が恐いのだ。
正しいと思って行動した事が、
間違いだった場合・・・
それが恐くて、行動出来ないのだ。
逃げているのだ。
しかし、逃げる事の出来ない事もある。
卵が、動き始めたのだ・・・




