281
苗木を1本ずつ包み込み、根を伸ばす・・・
そんな、作業を毎日、繰り返している。
それから・・・
5日が経過したが、まだ終わらない・・・
6日後、まだ、半分である・・・
『意味はあるのか・・・?』
『他に、もっと良い方法があるのでは・・・?』
不安に成る。
そして、不安が、もう1つ・・・
『なぜ、台風が来ない・・・?』
生前の記憶では、
台風20号という言葉を聞いた事がある。
つまり、4ヶ月程度の台風シーズンに、
20回以上の台風が来るのだ。
つまり、1週間に1度、あるいは、
それ以上の台風が、来るハズなのだ・・・
ところが、前回の台風から、10日・・・
『なぜ、台風が来ない・・・?』
1度来ているという事は、
台風を発生させる環境は、
存在しているのだ。
『では、なぜ来ない・・・?』
そして不安に成る。
僕の、無意識魔法が、
何かしているのか・・・?
僕は、その可能性を感じた。
『今、台風が来たら・・・』
『苗木の根出しが間に合わない・・・』
『だから、僕の、無意識魔法が・・・』
『何かをしているのか・・・?』
しかし、冷静に考えれば、
その様な事は無い・・・
もし、無意識魔法に、それ程の力があるのなら、
苗木の根出しも、
山脈の水やりも、
僕の代わりにやってくれる。
しかし、その様な事実は無い。
つまり、僕の無意識魔法は、
台風の発生を食い止める程、
強力ではない。
『では、なぜ台風が来ない・・・?』
原因を考える。
『山脈の木々が無いから・・・?』
本来、山は、水蒸気を発している。
木々が、地面への直射日光をさえぎり、
落ち葉が、保水力の高い土と成り、
雨水を吸収して、保水する。
それが、空気中の水分を増やし、
小さな雲を、雨雲に変化させ、
雨に成って落下する。
結果、山の天気は変りやすい。
しかし、現在、山脈に木々は無い・・・
苗木は植えたが、木々としては機能していない。
結果、山の保水力は低く・・・
空気中の水分も少ない・・・
『それが、台風と関係するのだろうか・・・?』
『山脈が生み出す、水蒸気・・・』
『それが気圧配置に影響を与える・・・』
『それが正常に作用した場合・・・』
『台風が、やって来る・・・?』
『しかし、現在、山脈に木々が無い・・・』
結果、南の海上に、
台風を作る環境があっても・・・
『台風を、生み出していても・・・』
こちら側に、
それを引き寄せる材料が無い・・・?
『その材料とは、山脈の水蒸気・・・?』
『だから、本来、来るハズの台風が・・・』
『別の場所に行っている・・・?』
本来なら、現段階で、5回来ているハズの台風が、
今年は、1度しか来ていないのだ。
幼稚に考えれば、
ラッキーである。
台風被害が減っているのだ。
とても助かる。
しかし、それが、
本当に『ラッキー』なのか・・・?
異常気象が起きているのだ。
父や祖母にも話を聞いたが、
「熱い日、風、雨、強い、死ぬ、いる」
との事であった。
つまり、夏は、台風が来て、
死人が出る事もある。
ところが、今年は、その台風が来ない。
それが、今後、我々の環境・・・
この星の環境に、
どの様な影響を与えるのか・・・?
ラッキーな訳が無いのだ。
死人が出る程の台風・・・
それで守られて来た環境・・・
それが、崩壊しているのだ。
本来、この山脈に来るハズの台風が、
別の場所に行っている・・・
つまり、
本来、台風被害を受けない地域が、
被害を受けている。
その結果、何が起こるのか・・・?
『我々の知らない、山が崩れるのか・・・?』
『ジャングルが崩壊するのか・・・?』
結果、次は、それが原因で異常気象が起こる。
『その時、牛の大地は・・・山菜森は・・・』
『大丈夫だろうか・・・?』
『牛が死んで、森が枯れる・・・』
『そんな事に成るのでは・・・』
不安だった。
事実として、台風が来ない事は助かる。
しかし、
その結果、食糧難が来る危険性・・・
魔法では解決出来ない状況・・・
『その時、僕に、何が出来る・・・』
不安だった・・・
ところが、
不安材料は、他にもあった。
『蚊が発生しない・・・』




