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僕の考えは、正しくない・・・
必ず見落としがある・・・
気付いていない、何か・・・
その何かに気付く方法・・・
『それが無い・・・』
本来なら、誰かに相談するベキ状況であった。
僕1人では無理なのだ。
しかし、原始人の、父や、祖母に、
それを、相談するのは、残酷である。
もし、突然、
『台風対策を考えて下さい・・・』
山の崩壊を食い止める方法を、
考えて下さい・・・
そんな事をいわれ、
一体、何を考える・・・?
何を答える・・・?
その答えに、どの様な責任を負う・・・?
僕の、生前の父は、新聞記者だった。
その為、政治の話を口にする事が多かった。
国民は、政治家に文句をいう・・・
実際、その多くは正しい・・・
しかし、では、自分に出来るのか・・・?
自分が、政治家の代わりに、
文句のいわれない政治を、行えるのか・・・?
その費用は実在するのか・・・?
本当に、可能な事なのか・・・?
何を、根拠に、それが出来ると思う・・・?
自分の都合の良い、空想なのでは・・・?
そんな空想に、税金を使い、
その失敗の責任を、
国民の1人が背負えるのか・・・?
実際、そんな事は不可能である。
文句はいえる・・・
アイデアは出せる・・・
しかし、責任は持てない・・・
それでは、無能な政治家と変わらない。
生前の父は、僕に、その様な事を教えた。
そして、僕は、それを理解していた。
そんな僕は、今現在、
原始の支配者である。
王であり、政治家なのだ。
しかし、
僕は、僕の魔法で何が出来るのか・・・?
自分でも、解らないのだ。
それなのに、
原始人の、父や母や祖母に意見を求め、
『一体、何をさせる・・・?』
失敗の責任を、父や祖母に押し付ける・・・?
この状況で、意見を求めるとは、
そういう事である。
遊びでは無いのだ。
この世界を守る為の判断・・・
それを、無力な者に求め、
僕は、失敗の責任を逃れる・・・
それでは、卑怯な政治家である。
では、理想的な政治家とは、
『どの様な存在なのか・・・?』
考えてみる・・・
『政治家は、国民を守る為に行動する・・・』
『国民には無い力を、持っているのだ・・・』
その力を得る為に、政治家に成ったのだ。
『だから、失敗の責任は、自分で負う・・・』
『それが政治家だ・・・』
これが、生前の父の話を聞いて、
僕の中に生まれた持論だった。
『国民とは、家族である・・・』
『その家族を守る為に、国はある・・・』
『力ある者は、家族を守る義務がある・・・』
だから、僕は、家族に、
災害対策に関して、意見を求めない。
求めては、いけない。
『肉と魚、どっちを食べたい・・・?』
そんなレベルの話では無いのだ。
『山脈が崩壊して、我々は死にます・・・』
『では、どうしますか・・・?』
そんな事を、国民に問いかけて、
一体、誰が、対応出来るだろうか・・・?
対応出来るのは、
力を持った者である。
そして、この世界で、
その力を持っているのは、
魔法使いの僕である。
だから、僕は、自分で考え、
自分で行動する。
僕にしか出来ないのだ。
自分で考え家族を守る・・・
僕には、その責任があるのだ。
などと、考えながら・・・
僕は、冷ややかな気持ちに成った。
『我ながら、ご立派な考えだ・・・』
『しかし、では、最善の考えは・・・』
『どうすれば、出て来るのか・・・?』
『今、名案に思えても・・・』
『2日後に、考えの浅さに気付く・・・』
そんな失敗を繰り返さない為には、
『何をすれば良いのか・・・?』
僕は、そんな事を、考えながら、
山脈の苗木を、1本ずつ包み込み、
根を成長させる・・・
それを繰り返した。
現在、30センチの苗木は、あきらめ、
今まで通り、10センチの苗木を植えている。
長さ30センチの苗木と、
長さ10センチの苗木・・・
どちらが強風を大きく受けるのか・・・?
と考えた場合、
30センチの方が、被害が大きい様に思える。
それに比べ、10センチの苗木を、
5センチ植え、
根を10センチ伸ばしたモノであれば、
強風に耐えれる様に思えた。
つまり、30センチの苗木よりも、
10センチの苗木の方が、
生き残る可能性が高いのだ。
そして、
この環境で30センチに育てば、
それは、この環境に耐える事が可能な、
30センチの苗木に、成長するのだ。
あくまでも、僕の予想である。
2日後には、
その間違いに気付くかも知れない・・・
僕は、その後も、
山脈の苗木を、1本ずつ包み込み、
その根を成長させて行った。




