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先ほどまで、僕は、土砂の壁の事を、
津波で、土砂が流れ、
森の木々をなぎ倒し、
枯れた大地に流れ出し、
完成した・・・
その様に思っていた。
しかし、
『違うのか・・・?』
僕は、上空から、土砂の壁を見た。
3人山脈から、ネズミの森を通り、
枯れた大地に続いている。
そして、ネズミの森に注目する。
その場所は、木々が無く、
土砂の壁が続いている。
その幅は1キロ・・・
元々、この部分には、
木は生えていなかった・・・?
『大きな川だった・・・?』
もちろん、幅1キロの川では無いと思うが、
それなりに、大きな川があった・・・?
結果、津波によって、大量の土砂が流れ込み、
その流れに引き寄せられ・・・
『さらに多くの、土砂が集まった・・・』
それが、大きな川と、その先の湖を埋めた・・・
『それが、土砂の壁の様に成った・・・?』
『・・・』
『よし、土砂の壁を取り除こう・・・!』
僕は、まず、枯れた大地の、北側へと移動した。
材木置き場を、通り過ぎ、
西へと移動する。
『よし、ここを、土置き場にする・・・』
僕は、その様に決め、
移動魔法で、地面に円を描いた。
それを記憶に残し、
北の土砂の壁に戻る。
その後は、瞬間移動の繰り返しで、
土を、土置き場へと移動して行く。
その途中、
岩の為に、岩置き場も用意して、
倒木は、材木置き場へと移動した。
湖を掘り出す・・・
しかし、この作業は、困難であった。
僕の目的は、土砂を取り除く事である。
しかし、土砂も、
その下にある湖も、同じ土なのだ。
『どこからが、湖なのか・・・?』
『本当に湖があるのか・・・?』
などと苦戦していると、
『風が出て来た・・・』
『苗木は大丈夫だろうか・・・?』
北の土砂の壁から、
最北端までは、
数百キロ離れている。
その為、土砂の壁の周囲で、強風が吹いても、
最北端では、無風の可能性もある。
しかし、僕は、幼稚なのだ。
だから、最北端に行きたかった。
不安なので、見に行きたいのだ。
しかし、僕の、心のブレーキが、
それを止める・・・
その為、不安が増していく・・・
『吹き降ろしは・・・?』
山に激突した風は、
「吹き降ろしと」という強風を生む。
その為、苗木が心配なのだ。
僕は、吹き降ろしを知っていた。
それが来る事を、予想していた。
ところが、その対策方法を知らないのだ。
しかし、強風を恐れ、
苗木を植えなければ、
木々は育たない。
結局、僕は、失敗する事を前提で、
苗木を植えたのだ。
田植え状態の苗木は、
大丈夫だろうか・・・?
不安である。
山脈の斜面にも、一部ではあるが、
苗木が植わっている。
『強風に耐えられるのか・・・?』
不安である。
『最北端に行ってみるか・・・?』
『強化魔法を発動させるか・・・?』
『しかし、大丈夫か・・・?』
『植物の生育に、影響は出ないのか・・・?』
以前、我々家族は、ネズミの拠点から、
3人山脈に、芋掘りに行った事があった。
その距離は、200キロ以上ある。
しかし、我々は、徒歩の移動で、
半日後、200キロの森を抜け、
3人山脈へと到着していた。
その時に発動したのが、
強化魔法だと考えられる。
そして、その時、僕は、不安を感じた。
『健康被害は出ないのか・・・?』
人間の限界を超える強化・・・
しかし、回復魔法も発動している・・・
結果、その後、家族は健康である。
しかし、本当に健康なのか・・・?
寿命を縮めて、
今だけ、一時的に健康なのでは・・・?
その様な不安を感じたのだ。
結果、それ以来、僕は、
家族に無理をさせない様にしている。
僕は、自分の意志で、
強化魔法を出す事は出来ない。
自分では、コントロール出来ないのだ。
バリアも、そうである。
母を守るバリア・・・
このバリアも、現在は、
勝手に発動しているのだ。
つまり、
今、僕が、強風が吹く山脈へと向かい・・・
風に振り回される苗木を見たら・・・?
僕の強化魔法は、勝手に発動するのだ。
それは、木々の将来に、
どの様な影響を与えるのか・・・?
『木々の寿命を縮めるのでは・・・?』
『あるいは・・・』
『異常に強い植物に育ち・・・』
周囲の木々と、
生存競争を始めるのでは・・・?
周囲の木々を枯らせて、
自分だけが生き残る・・・
結果、この山脈には、一種類の植物しか、
生えなく成るのでは・・・?
不安要素が、次々と出て来る。
『僕は、何でも出来る・・・』
『凄い事が出来る・・・』
『でも、役に立つ訳では無い・・・』
それが現実だった。




