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僕は、幼稚である。
先ほど、苗木を用意した。
ところが、植える場所の、立ち枯れの木々を、
抜く事を忘れていたのだ。
僕は、そんな自分の未熟さに、
恐怖を感じた。
僕の、失敗は、災害を起こす危険性があるのだ。
しかし、
その後は、無駄な好奇心で、
材木置き場の面積に、興味を持っている。
そして、その面積が、青森県の様だと、
笑ったのだ。
もちろん、僕は、青森県の面積など、知らない。
しかし、その様に、思って、
笑った事は事実である。
悩み、苦しみ、それでも、楽しみを見つけ出す。
僕は、生きているのだ。
しかし、
『100年後の僕は・・・?』
『僕の心は、生きているだろうか・・・?』
『生きていて、楽しいのだろうか・・・?』
不安に成った。
今すぐに、何か対策が必要だと感じた。
『本当に一兆年後も、生きていたら・・・?』
『死ぬ事が出来なかったら・・・?』
そんな事を考えならでも、
僕は、土砂の壁から土を集め、
先ほど、
木々を取り除いたネズミの森の最北端に、
その土を補充した。
そして、苗木を植えて、海から真水を取り出し、
水やりを行う。
『僕は、何でも出来る・・・』
なぜか、悲しい気持ちに成った。
その後、ネズミの森の、
最北端から、北の土砂の壁まで、
苗木を植え、進んで行く・・・
現在、台風直後の影響で、
ネズミの森の一部は、
湿地帯と化している。
土砂の壁に近づく事で、
湿地化が強く成っている。
その為、
『まるで田植えの様だ・・・』
水が引いた時、苗木は、
どの様に成るのか・・・?
などと、考えながら、植え続けて行くと、
北の土砂の壁に到達した。
『土砂の壁は、どうしよう・・・』
ある意味、見事な壁である。
しかし、北の土砂の壁には、使い道が無い。
ちなみに、
ネズミの拠点から、南に200キロほど行くと、
現在、父と祖母が、牛を育てている場所、
通称「牛の拠点」があり、
その40キロ南にも、土砂の壁がある。
この「南の土砂の壁」は、
将来、牛を放牧した時、
牛を南に、逃がさない効果があるので、
そのまま放置する事にしている。
しかし、北の土砂の壁は、
今の所、何の機能も無い。
『では、排除するか・・・?』
『本当に、それで良いのか・・・?』
土砂の壁は、
山から、森を抜け、枯れた大地に続いている。
森部分の壁幅は1キロ、高さ5メートル、
枯れた大地部分の壁幅は、20キロ、
高さは、最大4メートル、
それが、岩塩の大地方向に、少しずつ低く成りながら、
40キロ以上続いている。
『これだけのモノを、どこの移動させる・・・?』
『枯れた大地に、土置き場を作るか・・・?』
『移動させて、どう成る・・・?』
『このままで、良いのでは・・・?』
などと、考えて行く・・・
『安易に行動してはいけない・・・』
『考えて、最善を考え・・・』
『それが、本当に最善かを考える・・・』
そして、疑問が浮かぶ・・・
『なぜ、土砂の壁で出来た・・・?』
ネズミの森の木々は、
その多くが、立ち枯れしている。
つまり、津波を受けたが、
倒される程では無かった。
ところが、その森を分断する様に、
土砂の壁が存在している。
そして、それが、枯れた大地にも、
続いているのだ。
『この部分だけ、被害が大きかった・・・』
『津波の影響を大きく受けた・・・』
『この事から、何が解る・・・?』
『あっ!』
そして、気付く・・・
『巨大湖・・・?』
『この土砂の壁の下には・・・』
『巨大湖があるのでは・・・?』
僕は、不思議に思っていた。
なぜ、枯れた大地には、
巨大湖が無いのか・・・?
牛の大地には、あるのだ。
そして、
津波以前の、枯れた大地は、
牛の大地と、似た環境だったと考えられる。
それなのに、枯れた大地には、
なぜ、巨大湖が無いのか・・・?
そして、今、その手掛かりを見つけたのだ。
『土砂の壁の下にあるのでは・・・?』




