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ネズミの森の最北端・・・
寒い地域・・・
その場所を再生させる為には、
その地域に適応した苗を、
植える必要がある。
『それは、どこにあるのか・・・?』
それは、岩塩の大地の向こう側、
山菜森の最北端である。
気候が同じなのだ。
しかし・・・
山菜森の最北端に行く事には、
リスクがあった。
原始人が生活している可能性・・・
それを感じるのだ。
日本の場合、雪国には、猿がいて、温泉に入る。
つまり、この大陸の最北端・・・
寒い地域でも、
原始人が生活している可能性が、
考えられるのだ。
我々の暮らす、東海岸は、
津波によって、壊滅しているので、
雪国原人が居たのか・・・?
その確認は出来ない。
しかし、この世界の場合、
雪国で生活する事には、
それ成りの、メリットがあるのだ。
雪国には、恐竜が居ない・・・
恐竜は、自力で体温を上げる事が出来ない、
その様な説を聞いた事がある。
事実、現代のトカゲの多くも、
太陽光で、体温を上げないと、
身体が動かない。
その為、冬は、冬眠する。
その為、雪国では、
オオトカゲは、生息出来ない。
基本、暖かい国で生息している。
と、いう事は・・・
夏直前でも、雪が残る最北端に、
恐竜が生息しているとは、思えない。
そして、原始人が、
最北端の雪山で、生活する事に、
メリットは無い。
雪山の斜面を移動する・・・
それだけで、転落死の危険性があるのだ。
つまり、もし、雪国に原始人が居る場合、
その原始人は、森で、生活しているハズである。
と、いう事は・・・
山菜森の最北端に、枝を集めに行けば、
雪国原人に遭遇する可能性がある・・・
僕は悩んだ。
ネズミの森の最北端に、
木々を植える為には、
山菜森の最北端に、
行く必要がある。
しかし、行けば・・・
『雪国原人と遭遇する・・・?』
『その結果、何が起こる・・・?』
開き直って考えれば、
何も起こらない。
向こうには、こちらは見えないのだ。
つまり、我々が、
原人を発見したとしても、
僕が、動揺するだけの事ある。
それで、困る事は無い。
『緊張するだけ・・・』
『興味が湧くだけ・・・』
『僕が我慢をすれば良い事だ・・・』
などと考える事も出来る。
しかし、
『本当に、そうだろうか・・・?』
『もし、雪国原人が困っていたら・・・?』
『もし、子供が泣いていたら・・・?』
『親が病気だったら・・・?』
『僕なら、助けられる・・・?』
『その状況を、無視出来るだろうか・・・?』
と考えると不安であった。
しかし、悩んでも、答えは出ない。
『最北端の苗木が必要・・・』
『その為には、行く以外に方法が無い・・・』
それは、事実なのだ。
数分後、僕は、岩塩の大地の向こう側・・・
牛の大地のいた。
最北端である。
上空では無い・・・
母は、地面に立っていた。
遠くに、山菜森は見えるが、
はっきりとは見えない。
次に、ズーム機能で、木々の枝先だけを見る。
そして、回収した枝先を、
謎池に瞬間移動させて行く。
これによって、森の中に、原人がいても、
見える可能性は低い。
その後、原人の姿を見る事無く、
謎池で、苗木を完成させた。
そして、
ネズミの森の最北端に戻って、
僕は気付いた・・・
『あっ!』
僕は、まだ、ネズミの森の枯れ木を、
抜いていないのだ。
苗木を植える前には、
立ち枯れの木々を、抜いておく必要がある・・・
僕は、それを忘れていたのだ。
僕は、自分に、あきれた・・・
雪国原人に遭遇する事が心配で、
目の前の、当然の準備を忘れたのだ。
この程度で、苗木が枯れる事は無いが、
完全なミスである。
世界記録でゴールしたのに、
ゴール係が準備を忘れていて、
記録は無し。
もし、その様な事が、
世界大会で起きれば、
国際問題である。
そして、僕の場合、
この様なミスは、
この星の崩壊にもつながる・・・
『どうすれば忘れない・・・』
『万全な準備とは、どの様にして行う・・・?』
とても、重要な事なのだが、
その方法が解らない。
誰にでもミスはある。
しかし、僕の場合、
そのミスで、災害が起こるのだ。
『今回は、偶然のセーフだが・・・』
『次は、無い・・・』
僕は、自分に言い聞かせたが、
守れる自信は無かった。
その後、ネズミの森、
最北端の、立ち枯れの木々を、
材木置き場へと、移動させた。
そして、僕は思った。
『どれ位の面積に、成っただろうか・・・?』
最初の材木置き場は、
ネズミの拠点から、4キロ程度の場所にあった。
ところが、材木の山積みは、
崩壊の危険があるため、
その場所を、北へ西へと、移動させていた。
そして、今、上空から、それを見ている・・・
『青森県と同じくらい・・・?』
残念ながら、僕に、それは解らなかった。
しかし、それは、凄い面積だった。
千年後も僕も、
こんな事に興味を持てるだろうか・・・?




