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これは魔法の書です。  作者: わおん
255/2332

255

今後、大雨が降った場合、


南北、2千キロ以上の山脈が、


土砂崩れを起こす。



そう確信した僕は、山の補強を開始した。



『山の谷間を見て、土砂を包み込む・・・』



それを、移動魔法で、空中に浮かせる。



『山の崩れている場所に注目・・・』



空中の土砂を移動させ、


その場所に、押し付ける。



土の中の、空気を瞬間移動で、外に出す。



見えない手、形状を整える。



これによって、押し付けた土砂が、


踏み固めた様に丈夫に成る。



これを、通称「押し付け方式」と呼ぶ。



では次に、山を観察、


そして、崩れている場所を探す。



谷間を見て、


先ほどの10分の1程度の土砂を包み込む。



それを魔法で、空中に浮かせる。



『山の崩れている場所に注目・・・』



空中に浮かせた土砂を、水と考える。


これが重要である。



『土砂を、水と考える・・・』



そして、水と考えた土を、


地面に染み込ませる様に、瞬間移動させる。



結果、空中の土砂は、山の斜面の土と、交じり合う。



しかし、その結果、山の斜面は、膨張する。



つまり、地面が、ふくらみ、崩れそうになる。



そこで、山の斜面から空気を抜き取る。



『見えない手で、形状を整える・・・』



結果、山の斜面は、踏み固められた様に成って、


崩れずに済む。



これを、通称「染み込み方式」と呼ぶ。



では、「押し付け方式」と「染み込み方式」



『どちらが、優秀か・・・?』



作業効率を考えた場合、


「押し付け方式」の方が速い。



しかし、強度を考えた場合、


「染み込み方式」の方が強い。



ところが・・・



『では、どの程度、強いのか・・・?』



それが解らない。



例えば、巨木を落下させ、


その強度を比較しても、


実際に、降ってくるのは、


雨である。



では、海水を、真水に変えたモノを、


上空から落下させて調べては・・・?


と思うが、



本当に、そんな事をやっても大丈夫か・・・?



と心のブレーキが、魔法の発動を止めてしまう。



山を修復する事には、必要性があるが、


そこに水を落下させ、崩壊させる事には、


必要性が無い。



大切な実験という意味では、


水の落下も意味がある。



しかし、大切な山を崩壊させてまで、


実験をする必要があるのか・・・?



そもそも、水の落下と、


台風による豪雨は別物である。



水の落下は、一瞬だが、


台風の豪雨は、長時間である。



つまり、僕が、実験を行っても、


台風に耐えるのか・・・?


それは、解らないのだ。



その為、僕の無意識は、


今回の、実験を無意味な破壊行為と考え、


魔法を発動させないのだ。



『では、どうするか・・・?』



染み込み方式を信じて、


山の修復を行うベキか・・・?



ところが、そこにも問題があった。



山の谷間には、多くの岩がある。



その岩の多くは、山から崩れ落ちたモノである。



『では、この岩を、山の地中に戻すか・・・?』



瞬間移動を行う事で、それは可能である。



しかし、


地中に、岩を戻す・・・?



『どこに・・・?』



『元々、地中の、どの部分にあった・・・?』



例えば、山の上部に、その様な岩を戻したら・・・



『その重みで、再び崩れる・・・』



『では、山の下部分に、岩を戻す・・・?』



そもそも、岩を戻す事に、


どんな意味があるのか・・・?



冷静に考えてみる・・・



山は、土だけで出来ている訳では無い。



巨大な岩や、大きな石、小さな石、


様々な石が混ざっている。


それで山なのだ。



僕が勝手に『岩を必要無い・・・』なとど、


岩を戻さずに、山を修復をした場合、


それは、不自然な山に成ってしまう。



例えば、岩を排除した場合、


その部分は、土が多い地面に成る。


つまり、木々が育ち易く成る。



通常、岩が邪魔をして、


木々が、多少育ち難い・・・


それが、自然である。



ところが、僕が岩を戻さなかった場合、


その土地・・・



つまり、山の斜面の一部は、


木々の根がグングンと、伸びて行けるので、


木々が極端に育つ。



結果、その部分だけ、風の影響を強く受ける・・・



そして、『テコの原理が発生する・・・』



それが、山崩れの原因に成る危険性もある。



『つまり、土だけで修復する事は危険だ・・・』


『岩も必要だ・・・』


『しかし、では、どこに・・・』



どの程度、


岩や、石を混入させれば良いのか・・・?



考えても解らない・・・



そこで、山が出来た状況を考える。



『海底火山が噴火して・・・』



噴火した分、海底の弱い部分が、地中に吸収された。



結果、その時、海底プレートが移動して、



『硬い地面に激突して・・・』


『地面がシワに成って・・・』


『そのシワが、山脈に成った・・・』



つまり・・・



巨大な岩が、


山の上部に含まれている可能性もあるのだ。



『地面が押されて出来たシワ・・・』



『岩も、石も、その時に巻き込まれた・・・』



『配合バランスなど、存在しない・・・』



『偶然、そこにあった・・・』



『そして、巻き込まれた・・・』



『そして山脈に成った・・・』



つまり、岩や、石は、どこに含まれていても、


それが自然なのだ。



僕は、僕を、納得させた。



こうして、僕は、自分が修復した山の斜面内部に、


岩や、石を、瞬間移動させ、


それと、引き換えに、土を取り出した。



そして、その土を、染み込み方式で、


斜面の補強に使う。



『これを、南北数千キロ、東西数百キロ・・・』


『全てに行う・・・?』


『間に合うのか・・・?』



空を見るが、


相変らず、風は無く、雲も無い・・・



『季節は、夏の初め・・・?』


『6月・・・・?』


『それなのに・・・』


『海上に雲が無い・・・』



この季節であれば、


太陽の熱で、海の水は蒸発して、



大きな雲を生み出す・・・


ハズなのだ・・・



それが、全く見られない。



『原因は、僕なのか・・・?』



僕の何かが、気象に影響を与えているのか・・・?



僕は、これまで、季節の話を、


家族から、何度か聞いている。



しかし、原始人である3人に、


1年という概念は存在しない。



熱い時期と、寒い時期が来る。



その程度の認識であり、


1年前、1年後・・


その様な発想は無いのだ。



3人は、原始人なのだ。


極端に賢く成ったのは、


この数ヶ月である。



その為、僕が現れる前、


3人が村で使っていた原始人語は、


100程度だった様である。



その為、去年の、この時期は、


どの様な天候だった・・・?


という様な質問をしても、



「雨、無い、ある」


「雨、多い、ある」


「風、多い、ある」


「雨、風、多い、ある」


「死ぬ、ある」



その程度の、情報しか得られない。



つまり、今が異常なのか・・・?


それとも、正常なのか・・・?


それも判断出来ないのだ。



しかし、


『では、どうすれば・・・』


などと、深刻に考えても、


時間の無駄である。



そこで、僕は、山の修復を続けた。


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