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山脈の地面に、水を与える・・・
しかし、水を落下させる訳には行かない。
木々が枯れた山脈の斜面は弱く・・・
簡単に、崩れてしまうのだ。
その為、山脈の斜面に、
水が、染み込んだ状態・・・
その様に、瞬間移動させる必要があった。
『しかし、そんな事が可能なのか・・・?』
生前、SF作品で見た瞬間移動・・・
その中には、瞬間移動に関して、
深刻な表現をする作品があった。
つまり、瞬間移動によって、悲劇を生むのだ。
それを踏まえて・・・
瞬間移動した場所に、壁が存在した場合・・・
人間の細胞と、
壁の成分が混ざった状態で即死・・・?
人間の素粒子と、壁の素粒子が融合して、
別モノに成る・・・?
それとも、1つの空間に、
2つの素粒子が存在して・・・
『爆発する・・・?』
素粒子とは、それ以上の分解が不可能である。
それが、同じ空間に2つ存在した場合、
その2つは、壊れる事が出来ない。
しかし、同じ空間に同時に、
存在する事も出来ない。
ところが、瞬間移動によって、
その現象が起きた場合、
その空間には、驚異的な圧力が発生する。
そして、圧力は熱を生み、膨張する。
結果、ビックバンが発生する・・・?
その様に考えられた。
ところが、僕は、その瞬間移動を、
日常的に使っている。
千里眼があるので、
山の中に瞬間移動した事は無いが、
僕が移動した先には、
空気が存在する。
そして、その空気も素粒子なのだ。
結果、同じ空間に、
「我々」と「空気」
この2つの素粒子が存在して、
ビックバンが起きても、不思議では無いのだ。
しかし、それが起きていない。
『バリアの、お陰なのか・・・?』
『では、材木置き場に移動する巨木は・・・?』
枯れた大地の北側・・・
過去に、僕は、ネズミの森の巨木を、何万本も、
その木材置き場に、瞬間移動させている。
僕の、バリアは、その巨木に対しても、
使われていたのか・・?
それは、疑問だった。
それらの巨木は、
海水を吸って枯れ・・・
乾燥によって割れ・・・・
今現在、使い道の無いゴミである。
僕は、その様に認識している。
それを僕の無意識は、
バリアで守っていた・・・?
それは無いと思えた。
ゴミなのだ・・・
邪魔なのだ・・・
結果、木材置き場の、
10メートル上の空間、
そこに、巨木を瞬間移動させ、
落下させている。
最初は、並べていたのだが、
枝のある巨木を、
キレイに並べる事など不可能なので、
途中からは、落下させて、山積みにしている。
そんなモノを、
バリアで守りながら、落下させているなど、
『ありえない・・・』
と思った瞬間・・・
僕は、気付いた。
『僕の魔法は、包む事で発動する・・・』
『では、どの様な原理で・・・』
『瞬間移動を実現しているのか・・・?』
残念な事に、
空想でも、その理屈は、全く解らないが、
包み込む事と、魔法には、関係がある。
つまり、僕は、魔法を使う時、
それは、包み込む事で、実現させている。
『では、地面の中にある、無数の塩分・・・』
『それを1つ1つ包み込んでいる・・・?』
そんな事が、
本当に可能なのか、どうなのか・・・?
『海水が地面に染み込んで、乾燥した状態・・・』
『そんな塩分に、形はあるのか・・・?』
『その様な塩分を、包めるのか・・・?』
そんな事は解らないが、
事実として、地面の塩分は除去されている。
そして、先ほど、僕は、
海の中から、真水だけを選び、
それを取り出したのだ。
つまり、包み込む能力は、
非常に高性能と考えられる。
では、その水を、瞬間移動させて、
地面に、染み込んだ状態に、出来るのか・・・?
そして、思い浮かべる。
地面の中に、水の板が出現して・・・
結果、地すべりが、起こるのでは・・・?
『山の斜面が崩れるのでは・・・?』
そして気付く・・・
僕は、先ほど、
1キロ四方の水の板を、2キロ四方に広げた。
結果、周囲の空気が混じって、水の板は、
スポンジの様に成った。
『・・・』
『この原理だ・・・』
スポンジ状の水板を、地面内に、
瞬間移動させる。
そうすれば、水は粒に成り、
土に吸収される。
水の板が、斜面の中に出現する訳では無いので、
山は、崩れない
つまり、瞬間移動で、
地面に水を染み込ませる事は、可能である。
『では、実践する・・・』
もちろん、これは、小学5年生が、
自分の都合で考えた、理屈である。
しかし、他に良い方法が見つからない・・・
それが、現実であった。




