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現在、第1山脈の一部に、雨が降っている・・・
本来なら、山脈を通過する小さな雲に、
海水から取り出した真水を加え、
雨雲を作ったのだ。
その結果、雨は降った・・・
しかし、この様な不自然な雨を、
降らせた場合・・・
この星の、気象環境に、
どの程度の矛盾を発生させるのか・・・?
僕の都合で考えれば、
恵みの雨であっても、
この星の、気圧配置を考えた場合、
この季節に、この場所に、
雨が降る・・・
それが、どの程度の、
環境変化を生み出すのか・・・?
その様な事は、全く解らないのだ。
3人山脈を復活させ、
枯れた大地の川を維持する為には、
水が必要だ・・・
しかし、
魔法の雨は、使えない・・・
使ってはいけない・・・
気象環境が崩壊する。
では、どうするか・・・?
海水を真水にして、
山脈に瞬間移動させる事は出来る・・・
山脈に直接、水を与えるので、
気圧配置には、影響は無いと思う・・・
しかし、真水を、山脈に、
瞬間移動させる為には、
千里眼の進歩が必要である。
山の斜面を水で崩さない様に、
千里眼で、山の斜面を見た上で、
適量の水を、分割して与える・・・
その様な高度な水やりが必要なのだ。
しかし、千里眼を進歩させた場合、
僕は、生前の地球を見れる様に成ってしまう。
そして、生前の家族を、
助ける事が出来てしまう・・・
つまり、我慢する事が出来なく成る。
その可能性が、考えられた。
そして、それを実行した場合、
地球の未来は崩壊する。
人間から、努力する価値を奪ってしまう。
それを解っていても、
生前の家族が、困っている状況で、
それを無視する精神力など、
僕には無いのだ。
だから、千里眼を、
進歩させる訳には行かない・・・
しかし、その結果、
この原始の世界で必要な山脈の復活が、
困難に成っている。
現在、僕の千里眼では、
人間が、望遠鏡で見る程度の範囲しか、
見えないのだ。
つまり、第1、第2山脈が壁と成り、
第3山脈の、ほぼ全てが、見えないのだ。
見えないから、安全が確認出来ない。
そんな場所に、水を落下させた場合、
山が崩れる危険性があるのだ。
だから、心のブレーキが機能して、
水が送れない・・・
『では、どうするか・・・?』
答えは出た。
『我々が、飛べば良いんだ・・・・』
山よりも高く飛び、
そこから見渡せば、
『海と3人山脈が、同時に見れる・・・』
しかし、ここにも問題がある。
瞬間移動の出来る僕に、
飛ぶ事など簡単・・・
その様に思える。
生前の僕は、紙飛行機を自由に飛ばしていた。
こちらの世界では、
父の石槍を、移動魔法で、
父の手元に戻している。
これも、ある意味、
飛行魔法である。
つまり、現在の僕であれば、
母を飛ばす事など、簡単な事なのだ。
ところが・・・
『山よりも高く飛ぶ・・・』
それは、とても危険な行為であった。
上空は、寒い。
結果、エベレストなど、
標高の高い山の頂上には、
夏でも、雪が積もっている。
そして我々は、おそらく、
それよりも、高い位置まで飛ぶ事に成る。
僕には、バリアがある。
結果、真冬でも、寒さが軽減出来た。
しかし、上空は、風が強い。
障害物が無い為、
「ジェット気流」などと呼ばれる、強風も存在する。
つまり、上空は、寒くて風が強いのだ。
『バリアで、風を防げるのか・・?』
現実問題、
僕が、バリアと呼んでいるモノが、
バリアである保証は無い・・・
寒さに強い防寒着は、
存在する。
しかし、
強風を無効にする防寒着は、
存在しない。
僕のバリアも、その程度かも知れないのだ。
『上空で、何が起こるだろうか・・・?』
『空気が薄くて、酸欠に成る・・・?』
飛んで、確かめる事は出来ない。
母の安全が保障出来ないので、
心のブレーキが発動して、
我々は、飛べないのだ。
残念ながら、
この世界では、魔法の練習が出来ない。
実験的に、魔法を使う事は、
失敗の危険がある。
つまり、家族に危険がある。
その発想が、ブレーキと成って、
魔法の練習が、不可能に成るのだ。
つまり、本当に必要な状況でなければ、
飛ぶ事が出来ないのだ。
ところが、次の瞬間、
母は、山の斜面を飛び降りた。
斜面といっても、
そこは、ほぼ壁である。
次の瞬間、母は飛んでいた。
実際には、僕の魔法で包まれ、
元の場所の戻されたのだ。
その為、上空に行った訳ではない。
母を助ける事が、目的であって、
上空に向かう必要性など、無かったからだ。
母を怒るベキ状況であった。
胎児が、母親に説教をする。
そんな妙な出来事が、数分続いた。
しかしである。
『飛べる事は解った・・・』
それは、母に感謝である。




