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自分しか居ないと思って居る。
その状況で、振り返ったら、知らない誰かが居た。
それで驚くのは、当然である。
だが、36の意思が得た衝撃は、
それ以上のモノだった。
人が殺し合って居たのだ。
結果、彼らの思考は、強烈な影響を受け、
他を見る選択肢を失った。
その為、戦士の日々を見る事と成る。
その後は、その愛着と、習慣によって、
36名は、何の疑いも無く、
彼らを、唯一の人類として、見て居た。
36が理解に苦しむのは、
戦士たちが殺し合う事である。
なぜ、殺す必要があるのか?
元々の役目は、異星を探し、生き延びる事である。
その為、遺伝子改造を受け、コンピュータの指示で、
この星に到着したのだ。
ところが、そんな人類が、殺し合う事で、
人数を減らして居る。
しかも、彼らは、原始的な生活をして居る。
文明の発展よりも、殺し合いを優先して居るのだ。
何とかして、彼らの事情を知りたい。
だが36の念は、36名に限定されたモノであり、
他種族化した地上生物とは、異なるモノである。
その為、見る事しか出来ない。
だが、見る事で、得られる事もあった。
彼ら戦士は、誇りの為に生きて居るのだ。
生きる意味の為に、殺し合って居る。
大変な矛盾に思えるが、
母星から、脱出して、長い旅をした。
その間、何世代もの人類が、
ただの移動の為に死んで居る。
それを正しい事と、コンピュータと遺伝子が、
認識させて居た。
しかし、コンピュータを失い。
その後も、生存を続け、生きる事の意味に、
疑問を持った。
だが、死ぬ必要は無い。
だが、生きる意味も無い。
だから、必死に生きる為、必死に殺し合う。
ところが、そんな戦士が、ある時期から、
殺し合いを止め、競技を始めた。
それが、ルールのある試合だった。
関節技で戦ったり、恐竜に乗って棒で突く。
それらは、合理的に思えたが、
戦士たちは、満足して居ない。
そして、それを見る36名も、物足りない。
つまり、戦士も36名も、過激を求めたのだ。
それが、彼らにとって、初めての、
共通認識と成った。
その葛藤が、戦士の性質を呼び戻し、
トップ・プロを出現させる切っ掛けと、成った。




