023
正月4日目・・・
現在、リビングには、父と母と姉がいる。
僕は、動揺していた。
この時、僕は、
『今なら、逆立ちコマの、逆立ちを・・・』
『阻止する事が、出来る・・・』
『必ず、出来る・・・』
それを感覚的に、理解していたのだ。
『なぜ・・・?』
僕は混乱した。
僕は、コマ回し教室で、学んだのだ。
『感覚での理解など・・・』
『信用出来ない・・・』
『再現が困難で・・・』
『上達が遅れる・・・』
僕は、その事実に、納得したのだ。
『僕に、必要なのは・・・』
考えて、考えて、自分に説明して、
自分を納得させる。
『それが、重要なのだ・・・』
僕は、それを理解したのだ。
そんな僕が、今・・・
それを無視して、感覚的に、
『逆立ちコマの、逆立ちを、阻止出来る・・・』
その様に、感じているのだ。
もちろん、理由は、説明出来ない。
あくまでも、感覚的に、理解しているのだ。
『試したい・・・』
ところが・・・
『絶対に、駄目だ・・・』
以前の僕なら、この瞬間、
子供部屋に行って、逆立ちコマを回して、
その逆立ちを、阻止しただろう。
しかし、僕は、それをしなかった。
今、直感を信じて、勢いで実行すれば、
成功する可能性は、非常に高い。
過去、全て、それで成功している。
しかし、それは、
感覚的に行った事による、
偶然の成功なのだ。
その為、2回目は、失敗する。
そして、出来ない事が、暗示と成って、
3回目が、困難に成る。
毎回、その様に成るのだ。
だから、考える。
実行せずに、考える。
自分を納得させる。
『僕は、何かを、出す事が出来る・・・』
『それが魔法だ・・・』
それは、動いているモノを、動かす効果がある。
少し動くドアを、しっかりと、動かす事が出来る。
だから、少し突いただけで、ドアが開く。
『では、その魔法は・・・』
『どの様な形で、出ているのか・・・?』
『見えない手・・・?』
その様に、思える。
しかし、冷静に考える。
『本当に手なのか・・・?』
『それが身体から、生えているのか・・・?』
見えないのだから、確認は出来ない。
だから、何度も何度も考える。
そして気付く・・・
『手じゃ無い・・・』
『身体から生えている訳でも無い・・・』
僕には、その確信があった。
『僕には、魔法を出している感覚が無い・・・』
もし、魔法が、手や腕の形をしていて、
それが、身体から生えているモノなら、
それには、感覚が必要である。
感覚が無ければ、操作が出来ないのだ。
つまり・・・
『僕の魔法には・・・』
『手の様な、はっきりした形は無い・・・』
『でも、それは、手の代用品・・・』
『その様な、使い方も出来る・・・』
そして気付く・・・
『それで、つかむ・・・?』
『僕の無意識は、魔法を手と考え・・・』
『その手で、回っているコマを・・・』
『つかんでいる・・・』
『感覚が無いのに、つかむ・・・』
『力加減が、出来ない・・・』
『その結果、コマが倒れる・・・?』
『コマが倒れるのは、それが原因・・・?』
どうやら、僕は、無意識の内に、
魔法を、手の様に使おうと、
考えていた様である。
そして、それは、当然の事であった。
元々、僕の魔法は、
トイレのフタを、開ける為の、モノだったのだ。
その為、僕にとって魔法とは、
『見えない手の様な存在・・・』
その様な、思い込みを、生んでしまったのだ。
その結果、魔法で、つかむ様な力を、発してしまう。
『だから、コマが倒れる・・・』
『失敗で・・・』
『魔法が発動していた訳では、無いのか・・・?』
『ある意味、毎回、成功していたのか・・・?』
ここに来て、新しい可能性に、気付いた。
『上手く、機能していない・・だけ・・・?』
『実は、毎回、魔法は出ていた・・・?』
『手の代用品として、出していた・・・?』
それであれば、
以前、毎回、コマが倒れていた理由は、
納得出来る。
『手で、つかむ・・・だから倒れた・・・?』
『感覚は無いけど・・・』
『一瞬だけ、つかめる手・・・?』
しかし、それなら、
『なぜ、コマが8の字に動く・・・?』
当時の僕は、コマの8の字移動が、
可能に成っていたのだ。
『魔法の指で、突いている・・・?』
『一瞬、突いてを、繰り返している・・・?』
『本当か・・・?』
『そんな事が、出来るのか・・・?』
冷静に考えれば、それは不可能である。
『コマを突いた場合、8の字には動かない・・・』
『不自然に動き・・・』
『途中で、コマは転ぶ・・・』
しかし、魔法での、8の字移動の時、
コマの回転が、弱く成る事は無い・・・
もちろん、回転は、次第弱く成るが、
指で突いた様な、動きはしない。
『では、どの様にして・・・』
『8の字移動を、行っている・・・?』
と考えると、
『魔法を手の様に、使っている訳では無い・・・?』
『では、どの様に使っている・・・?』
などと混乱する。
全人類が、答えを知らない・・・
それを、幼稚園児が、1人で考えているのだ。
無茶な話である。




