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現在、僕は、
メス恐竜の胎内に存在する魂である・・・
正確には、受精した直後の細胞ではあるが、
身体と呼べるモノは、まだ存在しない・・・
そんな中、僕は、ある可能性に気付いた。
『脳が機能しても、死なない方法・・・』
その方法がある・・・
僕の無意識は、
その可能性に気付いている・・・?
しかし、僕の無意識の正体は、
僕なのだ。
つまり、僕に理解出来ない事は、
実行出来ない。
だから、僕は、考えた。
脳型魔法が発動しても、
脳が死なない方法・・・
生き延びる方法・・・
生前、僕は、魔法に関して調べていた。
しかし、図書館には、その様な本など存在せず、
その代わりに、
ピラミッドに関する本や、
動物図鑑を見る事に成った。
そして、その時に知ったのが、
ダーウィンの進化論である。
キリンの祖先は、首が短かった。
それは化石が証明している。
キリンは、草食動物である。
その為、キリンの先祖は、草を食べていた。
しかし、草を食べる草食動物は多く、
草が減って行く・・・
そこで、キリンは、
木の葉を食べる様になった。
それを数千年、数万年と繰り返す間に、
キリンの首は進化して、長くなった。
つまり、環境や生活によって、
動物は進化する。
その様な考え方が、
ダーウィンの進化論である。
しかし、僕は、それに疑問を感じていた。
『では、シマウマは・・・?』
どの様な、環境で生活をすれば、
馬が「シマウマ」に進化するのか・・・?
シマ模様には、
遠近感を、錯覚させる効果がある。
結果、シマウマは、肉食動物に襲われ難い・・・
という事らしい。
しかし、それが本当なら、
当時、同じ地域に住んでいた動物・・・
つまり、
キリンも、牛も、猪も、鹿も、
全て、シマ模様に進化したハズであり、
それを襲うライオンは、
シマ模様で、錯覚を起こさない様に、
進化したハズである。
実際、シマ模様の魚も居るので、
シマ模様が、生き延びる上で、
役に立つ事は解る。
しかし、一体、何をすれば、
身体がシマ模様に成るのか・・・?
なぜ、シマウマや、一部の魚は、
シマ模様に成れたのか・・・?
この様な疑問は、他にもある。
目玉模様のある「蛾」や「魚」が存在する。
目玉模様によって、大きな動物と錯覚され、
襲われ難い様である。
しかし、本当に、偶然、この様な模様が、
生まれたのだろうか・・・?
普通に考えれば、
様々な模様が生まれたが、
その中でも、シマ模様と、目玉模様が、
多く生き残り、
子孫を残し、
現代に続いている。
と成るのだが、
しかし、それなら・・・?
花に「そっくり」な「ハナカマキリ」は、
どの様にして、生まれたのか・・・?
ハナカマキリは、ランの花に
「そっくり」である。
結果、蝶などは、ハナカマキリを、
花と勘違いして、接近して来る。
そして、食べられるのだ。
色々な姿のカマキリが生まれ、
その中の1つが、
その地域のランの花と、
偶然、そっくりで・・・
本当に、そんな偶然があるのか・・・?
僕は、納得行かなかった。
どう考えても、
そこには、意志がある。
少しでも有利に生き延びたい・・・
その思いが、先祖代々受継がれ、
進化を生んだのだ。
つまり、進化とは、
何世代にも受継がれた意志によって、
起こる現象である。
僕は、自分自身を、その様に納得させた。
では、ここからが問題である。
『どの様にすれば、僕は進化するのか・・・?』
『必死に願えば、進化するのだろうか・・・?』
僕には、魔法で脳死しな脳が必要なのだ。
しかし、
僕には、先祖代々受継ぐ時間は無い・・・
『メス恐竜が腐る前に・・・』
『いや違う・・・』
ここには、肉食動物が生息している。
そこに、メス恐竜の死体があるのだ。
最悪の場合、
今、食べられても不思議ではないのだ。
『時間が無い・・・』
今直ぐ、魔法を使い、
僕を、進化させる必要がある。
ところが、その具体的な方法が解らない。
そして、どの様に進化すれば良いのかも解らない。
僕には、自分が魔法を出している感覚が無い。
先ほどの、異常なレベルの回復魔法など、
本当に、異常な事である。
例えば、
モノが見える時も、
音が聞こえる時も、
それが脳に伝わる感覚など無い。
魔法を使っている時も、
それと同様で、特別な感覚は無い。
つまり、
今、成長魔法が出ているのか・・・?
進化が始まっているのか・・・?
それも解らないのだ。
しかし、何も考えないで、
放置出来る状況ではない。
脳が機能した瞬間、
僕は、再び、死んでしまうのだ。
では、脳が無い状態で、
誕生すれば、良いのでは・・・?
などと、考えたが・・・
それが本当に実行された場合・・・
『僕の兄弟は、一体どう成る・・・?』




