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現在、僕は、恐竜の胎内に居る・・・
ところが、現在、魔法が使えない・・・
その為、状況が解らない・・・
『この状況で、もし、再び死んだ場合・・・』
僕は、何も対応が出来ない。
つまり、僕は、意識を失い。
僕の無意識が、僕の魂を、
どこかへ移動させる事に成る・・・
つまり、そこで、再び、災害が起こるのだ。
ところが、それだけ、危機的状況であっても、
僕の千里眼は、発動しない。
災害を防ぐ為には、
魔法が必要な事は事実である。
しかし、僕は、魔法の存在を恐れているのだ。
僕の魔法が、災害を起こすのだ。
しかし、今、僕は、魔法を必要としている。
使うベキか・・・
使わないベキか・・・
答えなど、出る訳が無いのだ。
だから、発動しないのだ。
そして、再び考える・・・
『現在、僕は、メス恐竜の胎内にいる・・・』
何の根拠も無いが、
僕の感覚では、2週間ほどで、
僕は、卵として、
地上に出る。
その様に思える・・・
『なぜ、その様に思えるのか・・・?』
『生前に、テレビで見た記憶・・・?』
『それとも、胎児としての感覚・・・?』
『あるいは、根拠の無い思い込み・・・?』
いずれにしても、
僕は、卵に成って、
その中で、成長して・・・
『その途中で、脳が出来上がり・・・』
『そして、脳が機能して・・・』
『その時、僕は、再び死ぬ・・・』
うんざり・・・
その様な気持ちに成るが、
僕には、責任がある。
その日までに、千里眼を使える様にして、
死ぬ直前、自分の身体を消費して、周囲を捜し、
新しい、身体を見つける必要がある。
では、どの様にすれば、
千里眼が復活するのか・・・?
『僕の魔法は、僕を助ける、誰か・・・』
『その誰かの、役に立つ為に、発動する・・・』
『しかし、メス恐竜の役に立つ事・・・』
『何だ・・・それは・・・?』
『何がある・・・?』
『このメス恐竜は、僕の母なのだ・・・』
『助ける価値がある・・・』
その様に、考える事は、簡単である。
しかし、それは、芝居であった。
僕にとって、母とは、
生前の母であり、
助けるベキ母は、原始人の母なのだ。
結果、このメス恐竜を母と考え、
役に立ちたいと考えても、
魔法が発動する事は無かった。
そこで、考え方を変えた。
『恐竜は、何かに狩られるのか・・・?』
『恐竜を狩る、何かが存在するのか・・・?』
存在するなら、
胎内の僕を守る為に、
このメス恐竜を、守る必要があるのだ。
と考え、千里眼の必要性を、
自分に言って聞かせた。
しかし、
千里眼は発動しない。
理由は、簡単だった。
『恐竜を狩る何か・・・・』
『それが実在するかどうか・・・?』
僕は、知らないのだ。
結果、メス恐竜が襲われるなどと、考えても、
それは芝居であり、
本気ではない。
そして、後悔した。
『調べて置く事は出来た・・・』
この世界に来て5ヶ月・・・
『恐竜を狩る動物が居るのか・・・?』
調べる事は出来たのだ。
しかし、僕は、それをしていなかった。
その結果、
『千里眼が使えないのだ・・・』
言い分、言い訳なら、
簡単に出来る。
この原始の世界で、原始人の家族を守る為、
僕は、必死だった。
『恐竜を食べる、動物がいるのか・・・?』
そんな自由研究を、
しているヒマなど無かったのだ。
しかし、事実として、今、僕は、
その答えを必要としている。
僕は、何も見えないのだ。
その理由は、このメス恐竜に対して、
感情移入出来ない事が原因である。
僕の魔法は、守る為に発動する。
それは解っている・・・
解っているが使えない・・・
守るベキ相手が見えないのだ。
原始人の母の時は、
僕は、自分が病院に居ると思っていた。
そして、当時は、目を閉じていても、
天井が見える現象が起きていた。
僕の魔法が、他人に被害を与えるなど、
考えて、いなかったのだ。
その為、僕は、当然の事として、
その現象を利用した。
そして、その結果、千里眼が発動したのだ。
ところが、今は、違う・・・
僕は、魔法を使う事に、危険性を感じている。
魔法など、使うベキでは無いと思っている。
だから、魔法は発動しないのだ。
つまり、
魔法の危険性を理解しながらも、
それを承知の上で、
それでも、魔法が必要な何か・・・
守りたい誰か・・・
そして、その結果、僕も助かる・・・
僕が生きる為に、必要な誰か・・・
それが必要なのだ。
しかし、恐竜に対して、
その様な感情が湧かないのだ。
『一体、どうすれば良いのか・・・?』




