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現在、山菜森の奥・・・
通称・狼山の斜面の前・・・
そこで、奇妙な発見があった。
この斜面に一部だけ、
異常に、芋が育っているのだ。
ここは、斜面が急なので、
タロが自力で移動する事は、困難であった。
そこで、
僕が、移動魔法で、タロを支える。
結果、タロは、急な斜面を移動する事が、
可能と成った。
そこで、タロに、
芋の豊作ポイントの範囲を、特定してもらう。
タロが芋を発見して、僕が、見えない手で、
その芋の数を調べる。
これの繰り返しで、斜面の東西南北を調べて行く。
結果、この斜面の、数十メートル範囲だけが、
芋の豊作ポイントである事が解った。
単純に考えれば、
芋が大量に収穫出来るので、
ラッキーなのだが・・・
『本当に大丈夫なのか・・・?』
ここの芋が大丈夫かどうか、
どうやって調べる・・・?
なぜ、このポイントだけ、
芋が異常に育っているのか・・・?
先ほど、ここの芋を、
猪の前に瞬間移動させたが、
猪は、その芋を無視して、立ち去った。
では、ここ以外の、芋なら、食べたのか・・・?
本来、土の中にある芋が、
地面にあった場合、
猪は、警戒する様である。
しかも、それを2回も続けて行えば、
それが、安全な芋であっても、
猪は食べない・・・・
つまり、猪に食べさせる実験は困難なのだ。
もし、食べたとしても、
それが有害であるか、どうか・・・?
その判断も難しい・・・
芋を食べた後の、猪を、
回復魔法の応用で調べた場合、
それにより、回復する可能性がるのだ。
結果、僕は、この芋を無害と、
錯覚する危険性がある。
おまけに、僕の回復魔法を受けた場合、
その猪は、賢く成る・・・
それが、今後、どの様な悲劇を、
生む事に成るのか・・・?
僕には、責任が持てない。
つまり、この芋が有害であっても、
食べた直後、
死ぬレベルの毒性が無い限り、
我々には、その芋の危険性が、
判断出来ないのだ。
つまり、微妙に危険・・・
その様な芋である場合、
我々は、その事実を確認出来ないのだ。
そんな芋を、
タネ芋として使って良いのか・・・?
そして、思い付く。
『では、山菜森は・・・?』
この斜面を下りた場所から、謎池までの直線上も、
『豊作なのでは・・・?』
この豊作ポイントを背に、200キロ進み、
山菜森を抜けた場所に、謎池があるのだ。
そして、謎池の水は、
この山の地下水脈によって、運ばれているのだ。
これが偶然とは思えない・・・
そこで、調査を開始・・・
しかし・・・
『芋が無い・・・・』
他の場所には、
動物が、芋を掘った痕跡があるのだが、
この直線上には、芋を掘った痕跡が無い・・・
そして、芋も無い・・・
タロが探しても、見つからないのだ。
『どうする・・・?』
現在、僕は、脱線している。
僕の本来の目的は、
食料の調達である。
つまり、
こんな不気味な芋を調べるよりも、
別の場所で、芋を探すベキである。
しかし、好奇心には勝てない。
『謎池を確かめよう・・・』
次の瞬間、
1番川の近くに移動していた。
その後、
バケツ置き場に行って、
バケツを1つ回収し、
巨大湖に向かった。
そこで、魚とエビをバケツに瞬間移動させ、
謎池へと向かう。
そして、謎池の水を、
1滴、バケツに瞬間移動させる。
10秒間隔に1滴、
それを繰り返した。
『1分後、魚に変化は無い・・・』
『10分後、魚に変化は無い・・・』
『なぜ死なない・・・?』
『謎池の水は、無害なのか・・・?』
『そらなら、なぜ謎池に生き物かない・・・?』
謎池の周囲を見る・・・
『塩の痕跡は無い・・・』
この大地は、
岩塩の大地が完成した後、
山から崩れ落ちた土によって、
出来たモノである。
つまり、この地面を掘れば、
岩塩の大地が出てくるのだ。
その為、地下水には、
塩分が含まれている。
ハズ・・・である。
ところが、謎池の周囲には、
塩の結晶など、
その痕跡が無いのだ。
つまり、この池の水は、
塩分以外の何かによって、
生物が住めない状態にあるのだ。
しかし、そんな水を、
600滴以上入れても、
バケツの魚は死なない・・・
『どうして・・・?』
『バケツの魚を、謎池に入れてみようか・・・?』
とも考えたが、
それで、魚が、死んだとしても、
水温の違いによる影響が、考えられる。
また、
池の水に毒性が無くても、
水質の違いによって、
魚が死ぬ事もある。
つまり、この水が有害か無害かは、解らないのだ。
そこで、今度は、
豊作ポイントで採った芋を、
1センチ角にカットして、
それをバケツに入れてみた。
しかし、数分経っても、
魚は生きている・・・
『この芋は無害なのか・・・・?』
その時である、母が、芋を1口食べた。
最初から、そうすれば良い事なのだが、
母に、毒芋かも知れないモノを、
食べてもらう事は、
僕には、出来なかった。
僕は、毒治療が出来ない可能性もあるのだ。
治療は、出来ても、
その前に、死ぬ危険性もあるのだ。
しかし、魚が死なない状況を見て、
母は、自分の判断で、芋を口にしたのだ。
僕は、回復魔法を応用して、
母の身体の変化を調べる・・・
『問題無い・・・・』
『僕の考え過ぎだったのか・・・・?』
とも思える。
しかし・・・・
生前、僕は、食の安全という授業を、
受けた事があった。
遺伝子組み換え野菜というモノがある。
その野菜には、虫が付かない。
結果、農薬を使わず、
収穫率がアップする。
つまり、夢の様な野菜である。
しかし、その野菜を食べた虫は、
死ぬ・・・
科学的に調べた結果、
人間には無害というデータが出ている。
しかし、虫が死ぬ様な野菜を、
人間が食べても大丈夫なのか・・・?
今日、1口、食べる分には、無害かも知れない。
しかし、これを、食べ続けた場合、
人間の遺伝子に、
悪影響が出るのでは・・・?
その様な、疑問も残る。
結果、食品メーカーの多くは、
遺伝子組み換え野菜を、使わない方針であり、
製品パッケージに、
「遺伝子組み換え野菜は使用しておりません」
などと明記している。
それを踏まえて・・・・
今、母が1口食べて、
全くの無害・・・
魚に与えても、死なない・・・
それどころが、今、
バケツの中では、エビが、
その芋に集まって来ている。
つまり、我々の世代が食べる分には、
安全なのカモ、知れない。
現在、我々は、子孫を残せる状況では無い。
そんな我々が、3世代先の事を考え、
目の前の、芋を収穫しないのは、
愚かに思える・・・
しかし、僕は、自覚している。
我々は、誇りを守る為に、生きているのだ・・・
そんな我々が、安全に疑問がある芋を、
食べる事は、
『誇りに反する・・・』
それが答えだった。
本音を言えば、
僕の考えは間違っている。
芋が豊作・・・
ただ、それだけの事である。
その恵まれた状況に、
理屈を着けて、不安をあおり、
食べれるモノを、収穫せずに、
立ち去るのだ。
結局、我々は、豊作ポイント以外で、
芋を探す事にした。
猪が掘った痕跡のある地面、
その近くの斜面・・・
非常に効率が悪い。
母とタロには、
申し訳なく思った。




