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現在、1番川の近くの、乾燥室予定地・・・
僕は、家族に、レンガの作り方を教えた。
しかし、本当に完成する保証は無い・・・
もし、レンガが完成しても、
乾燥室が、役に立つ保証も無い。
あくまでも、僕の机上の空論・・・
それによって、我々は行動しているのだ。
つまり、失敗する危険性があるのだ。
思い通りには行かない。
それが現実なのだ。
つまり、食料問題を考えた場合、
乾燥肉以外にも、必要なのだ。
そんな時、祖母は、僕に話しかける為に、
母を抱き締めた。
音が聞こえない僕と会話する為には、
母を抱き締める必要があるのだ。
そして、祖母が言った。
「明日、私レンガ作る、タロ、芋探す連れて行く」
なるほど・・・
その通りであった。
父と祖母が、枯れた大地に残り、
レンガを作り、
僕と母とタロが、
岩塩の大地の向こう側の、
山菜森や、その先の山に入って、
芋を探せば良いのである。
現在、1番川の北側に、
芋畑があるが、
その収穫予定量は、
とても少ない。
我々が過去に、
山の中で、掘り出した芋から、
考えた場合、
芋を1つ植えると、
芋が2本から3本収穫出来る。
つまり、40個埋めた芋が、
順調に育っても、
120個程度しか出来ないのだ。
おまけに、
その芋のサイズは、
長さ10センチ、
太さ3センチ程度であり、
1人、1日、1個では、足りない。
その上、来年の植える為に、
芋を、残しておく必要がある。
その様な事から、
現在の育てている芋では、
全く足りないのである。
と成ると、
1番畑の芋は、
全て、次回のタネ芋に使う必要がある。
そうしないと、来年から、
芋が手に入らない。
と思っていたが・・・・
今日、山菜森では、
芋を見つける事が出来た。
山菜森には、猪が生息していて、
猪は、芋を食べる。
その為、地面には、猪の毛と、
芋を食った跡が、残っていた。
にも関わらず、
タロも芋を見つける事が、出来たのだ。
その量は、少なかったが、
山菜森を探せば、芋はあるのだ。
という事は、
山の斜面など、動物が、掘り難い場所を探せば、
効率良く、芋が見つけられるハズである。
その為には、タロが必要であり、
父や祖母を連れて行くと、邪魔に成るのだ。
祖母は、それを理解しており、
レンガ作りを口実に、
ネズミの拠点に残る事を、志願したのだ。
ネズミの拠点が、安全という保証は無い・・・
その為、祖母は、ネズミの拠点に残る事に、
本能的な不安を感じる。
しかし、祖母は、それを選んだのだ。
僕は、自分が敗北者に思えた。
『どうすれば、立派なリーダーに成れるのか・・・』
僕は、途方に暮れた気持ちで、
祖母の提案を受け入れた。
その日の夜、
僕は、考えた。
先日、巨大湖を見つけ、
僕は、魚を集めに専念した。
それは悪い事ではない。
その為に行ったのだから、当然の事である。
しかし、僕の心に、もう少し余裕があれば、
周辺の調査を行っていれば・・・
ワラ草を、発見していた、だろう・・・
その段階では、ワラ草など、
不要なゴミであった。
しかし、瞬間移動で、数秒移動すれば、
ワラ草の群生地を、知る事は出来たのだ。
そうすれば、
今日の様に、1分に3本しか集められない様な、
効率の悪い事などせず、
僕と母だけで、ワラ草を集め、
午前中に、
レンガ作りの、試行錯誤が出来たのである。
僕が、ほんの少し、周囲を見ていれば、
父や祖母に、無駄なワラ草集めをさせずに、
済んだのだ。
僕は、考えた。
人間は、どの様にすれば成長するのか・・・?
『人間は、失敗から学ぶ・・・』
そんな事を言って、自分に酔う権利など、
僕には無い・・・
僕は、大災害を起こし、
大陸の東海岸を全滅させたのだ。
その中には、
父、母、祖母、タロ、の家族もいた。
僕が殺したのだ。
『失敗から学ぶ・・・』
『そんな事は言えない・・・』
そして今、その犯人である僕が、
リーダーをしているのだ。
魔法という、独占的な力を使い、
事実を知らない被害者を、
働かせているのだ。
罪を償う必要がある。
『しかし、謝罪が一体、何に成る・・・』
『今、本当に必要なのは何か・・・・?』
『この人たちの為に役に立てる事・・・』
『それは、何だ・・・』
『僕に出来る事・・・』
『それは何か・・・・』
『僕は、恵まれているんだ・・・』
『魔法という優れた力を持っているんだ・・・』
『それなのに、それを使う僕が凡人・・・』
僕は、全てが未熟だった。
僕の判断は、全て、何かが欠けていた。




