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これは魔法の書です。  作者: わおん
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現在、父と祖母の悩みは、


燻製器の火力調整であった。



実の所、


我々は、肉の「乾燥器」を作っているのだ。


肉を乾かす事が、目的なのだ。



肉を焼かずに、水分を取り除く必要があった。



焼いた肉を干すと、


脂が分離して、乾燥後もニュルニュルが消えず、


肉の酸化が進む。



つまり、腐るのだ。



ところが、生肉を乾燥させると、


スルメの様に成り、


保存が可能に成る。



寒い時期であれば、


干しているだけで、


自然と乾燥肉が出来たのだが・・・



しかし、これから季節は、夏に成る。



つまり、干していると、


ハエが卵を産みに来るし、


乾燥前に腐ってしまう。



その為、貴重な牛を1頭殺した場合、


その肉を、腐らせない様に、


乾燥器で、乾燥肉にして、


日持ちさせる必要があるのだ。



それを踏まえ、



現在、イカダ小屋式の燻製器は、


本当に燻製器なので、


美味しい燻製は作れる。



しかし、その肉には、


水分が多く残っており、


日持ちは、期待出来ない。



つまり、イカダ式乾燥室は、失敗作なのだ。



では、どの様にすれば、


乾燥器が出来るのか?



答えは、レンガで作れば良いのだ。



その為に、粘土を使う。



本来なら、


父と祖母にヒントを与え、


自力で、レンガ作りに、到達して欲しかったが、


そんな時間は無い。



現実的に考え、僕は、近々死ぬ・・・


それは、今日かも知れないのだ。



では、作業開始である。



先日、


僕と母は、多くの石や岩を集めて来た。



その中には、


50センチ四方で、


厚さ4センチ程度の、


板状の石もあった。



本来は、肉を干す為の石である。



母が、その上で粘土をコネる。



コネ方に関しては、


僕と母は、心が通じるので、


それによって伝わる。



その光景を、父と祖母とタロが、


興味深く見守る。



粘土をコネ終えると、


それを、コロコロと転がし、


太さ1センチ程のヒモ状にする。


これを使い、壷を作る。



今回の粘土は、レンガを作るには、


上等過ぎるのだ。



茶碗を作る様な粘土で、


レンガを作れるのか・・・?



実の所、僕には、それが解らない。



生前、テレビで見た知識では、


レンガは、赤土程度でも作れるのだ。



つまり、1番湿地帯に並んでいる大量の土から、


手作業で、根っこを取り除いて程度でも、


レンガは、作れるハズである。



そこで、まず、今回は、壷を作って、


粘土の使い方、焼き方、


その耐久性を確認するのだ。



粘土をコネ終えた母が、


製作を開始する。



ヒモ状に成った粘土を、


コマ回しのヒモの様に、


うずまき状に巻いて、


直径10センチ程度の円盤にする。



この段階では、ヒモ粘土を巻いただけなので、


表面がデコボコである。



そこで水を使い、表面を平らにする。



これによって、


直径10センチの円形の板が出来る。



つまり、壷の底板である。



次に、壷の壁部分を作って行く。



円盤の外周に、ヒモ粘土を巻きながら、


積み上げて行く。



高さ10センチ、


この段階で、水を使い、表面を平らにする。


これにより、茶道に使う茶碗の様なモノが出来る。



『これで良し!』



本来なら、壷を完成させたいのだが、


僕には、時間が無い。



そんな、あせりから、


ここで、区切る事にして、


ここまでの工程を、


父と祖母にも体験してもらう。



その間、僕は、今、母が作った茶碗を、


魔法で乾燥させる。



本来は、この段階で、数週間、日陰干して、


茶碗を乾燥させ、


その後、焼くのだが、


そんな時間は、無い。



僕の目的は、説明であり、


僕が居なくても、


父と祖母が実践出来る技術を、伝え残す事である。



そこで、僕は、


本来、影干しする事を説明した上で、


魔法を使い、母が作った茶碗の粘土から、


水分の除去を行った。



通常、この様な急激な乾燥を行えば、


粘土は割れる。



しかし、僕は、回復魔法を使いながら、


それを行った。


『反則だ・・・』


僕は思った。



魔法を使った乾燥・・・


割れない為の魔法・・・



これでは、父や祖母が作る茶碗とは、


全く別物に成ってしまう。



つまり、僕の茶碗が完成しても、


父や祖母の茶碗が、完成する保障は無い。



しかし・・・


今回の目的は、方法を教える事である。



『これで良いのか・・・?』



僕は、迷い、そして、あせっていた。


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