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これは魔法の書です。  作者: わおん
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現在、我々は、家族全員で、


旧ネズミの拠点にいる。



旧ネズミの拠点は、


新ネズミの拠点よりも、


20キロ北にある。



この場所は、元々、


我々が、山を捨て下山した時に、


偶然、平地に出た場所ではあり、


それ以外は、特別な意味は無い。



そして、今後の、生活を考えた場合、


ここには水が無く、不便な場所なのだ。



では、なぜ、我々は、そんな場所にいるのか?



それは、薫製作りの、実験を行う為であった。



開始から3時間、


枝の補給も、


空気の調整も、出来なかったので、


火は、消えていた。



その為、父と祖母は、


本来なら、熱風が吹き出す煙床から、


素手で、イカダ小屋を下ろす事が出来た。



その状況に、祖母は、不満そうである。



祖母は、この燻製作りの意味を、


理解していた。



実際、我々が行っているのは、


燻製作りではないのだ。



大切なのは、


肉を効率良く、乾燥させる事である。



夏場、天日で干すと、腐る危険性がある。



焼いても肉の水分が残り、


賞味期限の延長は、期待出来ない。



しかし、焼き過ぎると、こげる・・・



そこで、燻製器を、乾燥器として使い、


短時間で、肉を乾燥させる事、


それが、今回の目的である。



つまり、祖母にとって、


素手で持てる小屋など、


乾燥器として機能していない、駄作なのである。



とはいえ、肉の良い香りがするらしい、



祖母は、ワクワクしながら、


イカダ小屋の、取り外し式の壁を開ける。



すると、見た目は100点の燻製が、


そこにあった。



美味しそうである。



3人は、


1枚ずつ食べてみる。



その美味しさに、衝撃を受ける3人・・・


どうやら、祖母は、煙の効果を理解したらしく、



「煙、味、塩、味」などと、


父と母に、解説している様である。



塩加減、枝の性質、煙の具合、


これらが、偶然、上手く作用したのだ。



しかし、問題は、ここからである。



この燻製肉を、さらに天日干しして、


保存食にする。



それが、本来の目的である。



理想は、もっと水分を飛ばしたかったのだが、


僕の机上の空論で、


作ってもらった燻製器では、


これが限界であった。



その為、燻製肉を、


石の上に並べ、天日で干す。



この石は、昨日、母と僕が、


集めたモノである。



その為、肉を干す為の、


板状の石も5枚あった。



石1枚のサイズは、50センチ四方、


父と母と祖母が手分けをして、


その上に薫製肉を並べて行く・・・



タロは、この様な場合、


絶対に邪魔をしない。



通常、ペットの場合、


自己中心的な行動で、飼い主を邪魔したり、


本能のままに、肉を食べたり、



我慢はしても、肉に大接近して・・・



とにかく、邪魔をするのだが、


タロは、この様な場合、


自分の意思で、少し離れた場所に移動して、


周囲を見張る。



それがタロである。



3人が、肉を並べ終えた。



『上手く行くのか・・・・?』


『乾燥後の肉を、どの様に保管する・・・?』



実際に、やってみないと、


その結果は解らない。



しかし、


1頭の牛を殺し、


1週間後、残った生肉を捨てるのでは、


あまりに、もったいない。



その為、乾燥肉作りは、


今後、絶対に必要な技術なのだ。



こうして、父と祖母の、会議が始まった。



乾燥室の再設計と、


肉の保管方法を、話している。



『この2人なら、大丈夫だ!』



僕と母は、


2人とタロを残し、


1番湿地帯に向かった。



現在、1番湿地帯は、


僕が作ったミゾによって、その水の多くが、


ミゾに流れ込み、1番川か2番川に流れている。



そんな1番湿地帯を背に、


ネズミの森に入って行く。



森の中は、相変わらず、湿地帯である。



そして、今回の目的は、


湿地帯の、水源を探す事である。



見えない手、千里眼、それらで安全確認を行いながら、


森の中の、湿地帯を進んで行く。



我々が、初めて、平地に出た時、


ネズミの森を抜けるのに、


2日かかった。



『では、今回は・・・・?』



3時間だった。


推定、200キロの森を、3時間で通り抜け、


山の直前まで来たのだ。



目の前には、山の斜面がある。


そして、その岩の割れ目から、水が噴出していた。



僕が、生きていれば、


この近くに、安全な場所を確保する事で、


今後は、一瞬で来る事も出来るのだ。



などと、考えてしまうが、


そんな希望など、誰も叶えてくれない。



神様など、存在しないのだ。



その様な訳で、僕が死んだ後でも、


この水源を使える様にする必要があった。



岩の割れ目から、水が勢い良く吹き出している。


消防の放水レベルの数量だと思う。



『それにしては、地面の水の量が多い・・・』



周囲は水浸しである。



それは、湿地帯のレベルを超え、湖の様だった。



この水が、ネズミの森を抜け、


枯れた大地まで流れているのだ。



『放水だけでは、足りない・・・』


『つまり、他にも水源がある・・・』



周囲を見る・・・



すると、放水によって出来た滝ツボからも、


水が沸いている・・・



『よし、水脈発見!』



実際、僕には、水源と水脈の違いが解らない。



しかし、とにかく、


水が出ている所は、解った。



僕は、これらをまとめ、



通称「消防水源」と呼ぶ事にした。



次の瞬間、


我々は、枯れた大地の、1番湿地帯にいた。



では、作業開始である。


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