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ネズミの森に、川を作る・・・
計画する事は簡単だが、
それを実行する為には、
僕は、あまりにも無知だった。
しかし、時間が無い・・・
母の妊娠期間が、人間同様、
10ヶ月である保障は無い。
母は、野生で生きている原始人なのだ。
妊娠期間が、それほど長いとは考えにくい。
『僕が生まれる前に・・・』
『僕の脳が機能する前に・・・』
それまでに、何とか出来る限りを残したい・・・
『皆が困らない環境を、作って残したい・・・』
『何かヒントは無いのか・・・?』
1番川は、我々が発見した時、
枯れた川だった。
しかし、元々は、川だったのである。
結果、1番川は、ネズミの森に続いている。
ところが、その1番川は、森の途中で途絶えている。
おそらく、元々は、地下水が流れ出し、
それが川の水と成っていたのだ。
しかし、森の木々が枯れた現在、
湧き水は無い・・・
『その水はどこに行った・・・?』
おそらく、現在、湿地帯を作っている水が、
本来、一番川の湧き水だったと、考えられる。
『森の木々が復活すれば・・・』
『1番川の湧き水も、復活するのか・・・?』
『木を植えて、育てれば・・・』
『湿地帯を作っている湧き水が、止まり・・・』
1番川の出発ポイントで、
再び、湧き出すのか・・・?
そんな、都合の良い事に、成るだろうか・・・?
木を植えただけで、元に、戻るだろうか・・・?
『本当に困った・・・』
『どうしよう・・・』
悩んでいても、仕方が無い・・・
自然の川とは、曲がりくねったモノである
それが、結果的に、流れの勢いを軽減して、
魚が住める環境を作っているのだ。
しかし、そんな曲がった川など、
僕には、作れない。
泥遊びでは無いのだ。
僕が、好き勝手にカーブさせた川など、
山に大雨が降り、大量の水が流れて来た時、
確実に崩壊する。
そして、その時には、僕は居ない・・・
しかし、ネズミの森の中に川を作らないと、
いつまでも、湿地帯が残り、
そこで、蚊が異常繁殖してしまう。
それを解決する為には、
川を作り、湿地帯の水を、
引き受ける必要があるのっだ。
ところが、僕に、
『絶妙に曲がった川を作る事など・・・・』
『不可能だ・・・』
しかし、森に木を植えても、
湧き水が復活して、
以前の川に戻る保証も無い・・・
では、どうするか・・・?
何度も、何度も考えた。
すると、その時、唐突に思いついた。
『直線の川を4本作る・・・』
山から、流れて来る水を100エネルギーとする。
その100エネルギーを、1本の川に流した場合、
勢いが強く、あふれる危険性がある。
しかし、
川を4本に増やしたら・・・
4本に分散したら・・・
1本の川には25エネルギーしか流れて来ない。
おどろく程、幼稚な思い付きである。
しかし、水の流れを、
絶妙にコントロール出来る川など、
僕には作れない。
水門など、僕が死んだ場合、
誰が、管理修理を行うのか・・・?
出来ない事を、考えても、
無駄なのだ。
と成ると、
製作可能で、放置も可能・・・
それは、1本の川を、
4本に分散させる方法だったのだ。
実際に出来ると決まった訳でも無いのに、
僕の気持ちは、少し明るくなった。
しかし、そんな事で、喜んでいる場合では無い。
現在、母と僕は、山菜森に居るのだ。
考え事に熱中している場合では無い。
出来る限りに、慎重に、
出来る限り、役に立つ何か・・・
それを見極め、持ち帰る事が、
我々の仕事なのだ。
そして、母が言った。
「石、必要、山菜焼く、石」
その通りであった。
枯れた大地には、石が無いのだ。
3人山脈に戻れば、石はあるが、
現在、石の多くは、ドロの中である。
そして、現在、我々は、
通称・山菜森の、石無し川に居る。
『ここにも、石は無い・・・』
しかし、現実的に考えた場合、
この石無し川の、上流に行けば、
石を拾えるのだ。
我々は、川岸にそって、
森の奥へと進んで行った。
ところが、残念な事に、
ここでも、川が途切れていた。
山の斜面にある、岩の隙間から、
消防放水の様な勢いで、水が噴出し、
それが、川に流れ込んでいた。
『こんな水源で、なぜ魚が生息出来るのか・・・?』
無知な僕には、全く解らない。
しかし、そんな事で、
悩んでいる場合では無かった。
川沿いに、上流を目指せば、
石の河川敷に到着すると、考えていたのだ。
ところが、その川が途切れていたのだ。
『仕方ない・・・』
我々は、山を登り始めた。
『原始人がいたら・・・』
『猿人が出たら・・・?』
僕は、内心ドキドキだった。
原始人に遭遇した場合、
それが、同種である保障はない。
大陸の東と南、
数千年・・・数万年・・・
長い時間を、別々に生きて来たのだ。
進化の違いが出て、
チンパンジーとオランウータンほどの、
違いがあったも不思議は無いのだ。
『友好的であれば良いが・・・』
などと考えながら、山を登って行く・・・
『知的生物の痕跡は・・・?』
焚き火の跡や、道具の落し物、
2足歩行の足跡など・・・
その様なモノを探したいが、
瞬間移動を使っている性質上、
安全な地面を探しが、優先されてしまう。
周囲の動物に、我々の存在が認識出来なくても、
『虫にも、それが通用するのか・・・?』
『毒虫に刺されたら・・・・?』
『毒蛇は・・・?』
異常な警戒心で進んで行く。
山に入って1時間後、
我々は、渓流を発見した。
『石が選び放題・・・』




