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これは魔法の書です。  作者: わおん
18/2276

018

今思えば、それは、1月3日の出来事なのだが、


僕に、今日が、何日という認識は、無かった。


当時、5歳の僕は、そのレベルである。



その日、総合体育館で、


コマ回しを習う事に、成っていた。



子供が17人、それに親が着いて来ていた。


コマ回しの先生は3人。



酒屋さんと、祖父と、佐々木さん。



習うのはヒモで回す、普通のコマ。


全て木製。



何と、そのコマは、


酒屋さんが、作ったモノらしい。



その為、まず最初に、


酒屋さんが、みんなにコマ回しを披露した。



しかし、それが、問題だった。



僕は、これまでの経験上、


それが、問題である事が、


感覚的に、理解出来たのだ。



みんなが、ワクワクしながら、


酒屋さんに、注目している。



次の瞬間、


酒屋さんの、投げたコマが、


酒屋さんの、手の平に乗り、


そこで回った。



それを見て、拍手が起きる。


これが問題なのだ。



最初に見た時の印象・・・


それが、固定概念を作る。



結果、コマ回しの方法として、


酒屋さんの回し方が、印象に残ってしまう。



すると、無意識に、それを真似してしまう。



基本も出来ないのに、曲芸の動作で、


普通に回そうとする。



結果、修得が、難しく成ってしまう。



もちろん、当時の僕に、


この様な説明は、不可能だった。



しかし、それでも、



『これを、お手本にしては、ダメだ・・・』



という事は、理解出来ていた。



次に、祖父が、お手本を見せた。


祖父は、凄い力で、コマ投げた・・・



すると、床に落ちたコマが、


「ごおおおおお」と、


うなりを発しながら、回転している。



結果、周囲からは、歓声が上がる。


しかし、これも問題であった。



今、喜んでいる男子の多くは、


この後、全力でコマを、回すだろう・・・



しかし、それでは、駄目なのだ。



初心者は、結果を出す為に、


無駄な力を入れる。



しかし、力を入れては、駄目なのだ。



以前、僕は、その事を経験していた。



幼稚園で1人の園児が、


「フィーバー・フィーバー」と、


何度も言っていたのだ。



聞いてみると、パチンコ屋のモノマネらしい。



その後は、園児全員が、それを真似る様に成った。


もちろん僕も・・・



僕は、幼稚園の帰りも、それを繰り返していた。



すると、フィーバーの「フィ」の部分で、


口から風斬り音が鳴った。



僕は「フィ」の部分だけを、何度も繰り返した。


すると、小さな音が、何度も鳴った。



『あっ!口笛だ!』



しかし、声が邪魔である。



そこで、今度は、声は出さずに、


息だけをフィと吹き出した。



すると、「ふぃーーーーー」


弱々しいが、口笛が鳴った。



そこで、今度は、力いっぱい吹いた。



当然、大きな音が鳴ると、思っていた。


しかし、口笛は鳴らない。



『なぜ鳴らない・・・?』



僕は、祖父の、口笛を思い出す。



『大きな音が、鳴っていた・・・』



『では、どうすれば・・・』


『大きな音が、鳴るのか・・・?』



そんな事を考えながら、口笛を吹き続けた結果。


母に口笛を、禁止された。



仕方が無いので、


そこからは、仕組みを考えた。



口笛とは、風を切る音である。


その為に口を、ずぼめる。



しかし、


大きな音を鳴らそうとして、力いっぱい吹くと、


その形状が、押し広げられる。



つまり、風を切る隙間が、維持出来ないのだ。


だから、鳴らないのだ。



つまり、大切なのは、


風を切る隙間を、維持する事であり・・・


その技術の修得が、先決なのだ。



つまり、技術が無いのに、


力を入れても、上達などしないのだ。



僕は、口笛から、その事を学んでいた。


もちろん、感覚的にである。



『力は、入れてダメ・・・』



その程度である。



しかし、



『という事は・・・』



初心者が、祖父のコマ回しを、真似しても、


無駄な力が邪魔をして、上達はしないのだ。




そして、最後・・・


お手本の3人目は、佐々木さん。



この人は、地味だった。


普通にコマを回したのだ。



それを見て、子供たちは、


「ハズレ」と感じた様だった。



結果、その後の練習は、


多くが、酒屋さんに集まり。



姉を含む4人が、祖父に集まり。


佐々木さんに習うのは、僕1人だけだった。



しかし、この中の本命は、間違い無く、


佐々木さんなのだ。



佐々木さんは、僕にコマを手渡すと、


僕が受け取った方の、手を指差し、



「そっちの手で、お箸を使うの?」と聞いてきた。



僕は、一瞬迷ったが、どうやら間違いない・・・



「はい」と答えた。



これにより、僕は、初めて、


通称、「こっちの手」が「右手」で、


通称、「反対の手」が「左手」だと知った。



次に、佐々木さんは、僕に歩く様に言った。


そして、僕の前足は、右だと教えてくれた。



佐々木さんは、僕の腕時計を見て、


僕が、時計を、使える事を知って、


ほめてくれた。



そして、時計の回る反対方向に、


ヒモを巻く様に言った。



ヒモを巻き終えたコマを、


右手の、人差指と親指でつまみ・・・



残ったヒモを、


中指、薬指、小指で、軽く握る。



コマをヘソの高さに用意。



右足を1歩前、左右の足は浮かせない。


頭は、右足を追い越さない。


2歩先の床に、ミカンを思い浮かべる。


輪投げを思い浮かべる。


そして投げる・・・



すると、コマが回った。


その後、3回続けて成功するまで、練習した。



佐々木さんは、その事をほめてくれると、


どの様な原理で、コマが回るのか、


幼児の僕に、教えてくれた。



それを聞いた上で、もう1度回すと、


コマが回った。



僕は、コマ回しが出来るのだ。


僕は、とても、うれしかった。


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