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これは魔法の書です。  作者: わおん
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現在、牛の大地の池の前・・・



母の足元には、バケツがあり、


その中では、通称、メダカが泳いでいる。



母が、熊の皮で、バケツにフタをしたが、


僕には、千里眼があるので、


バケツの中が見えていた。



魚が、捕獲出来る・・・



これは、大きな希望だった。



しかし、喜んでは、いられない。



このバケツの中の魚たちは、


僕の回復魔法を受けている・・・



『つまり、賢く成ったのでは・・・?』



と心配だったのだ。



僕の近くに居ると、賢く成る。



これは、あくまでも仮説であり、


実の所は解らない。



しかし、タロの賢さを考えた場合、



仮説1、僕の近くに居ると、賢く成る。


仮説2、僕の回復魔法を受けると、賢く成る。



このどちらかが、


タロの賢さの原因と考えられる。



そして、現在、僕の6メートル範囲は、


絶えず回復魔法が放出されている。



では、僕の回復魔法を、


どの程度受けると、賢く成る・・・?



『数時間・・・? 数分・・・? 数秒・・・?』



その様な事を考えた場合、


一刻も早く、この魚を、1番池に運ぶ必要があった。



魚が、賢く成った場合、


その賢さが、一体、どの程度なのか?



言葉を発する事は、無いと思うが、


タロと僕は、心で会話が出来る・・・



それが、数十匹・・・


この後、捕獲する魚を入れれば、


その数は数百匹・・・



『数百匹の魚に、話かけられたら・・・?』



そう考えると、僕は、恐怖を感じた。



すると、次の瞬間、


我々は、1番池の近くに居た。



タイガー池から、一瞬で、千キロ以上・・・



1番池まで、戻って来たのだ。



『僕の魔法は、確実に進歩している・・・』



その成長に、僕は、不安を感じた。



『どこまで、成長する・・・?』



現在、1番池の水位は、10センチ程度、


母に調べてもらうと、


バケツの水温も、池の水温も、


違いは無い様である。



しかし、バケツの小魚を、


いきなり池に入れても、大丈夫だろうか・・・?



お祭りの金魚が、


次の日に、死んでいる理由・・・



それは、いきなり、水槽に入れられ、


水の変化に対応出来ず、


魚が拒絶反応を起こすからだ。



では、どうするか・・・?



僕は、瞬間移動で、バケツを、


池の中に置いた。



池の水位は10センチ、


それに対し、バケツの高さは、30センチ、



池の底に、バケツを置いても、


池の水が、バケツの中に入る事は無い、


そこで、フタを回収。



そして、池の水を、コップ一杯分、


バケツの中に瞬間移動させる。



その際、1匹の魚がバケツから飛び出し、


池に入った。



『死んでしまうだろうか・・・?』



などと、観察したく成るが、


そんな事をしたら、


その魚に、回復魔法が送られ、


賢く成る可能性がある。



そこで、僕は、


小魚入りバケツは、池の底に置いた状態で放置して、


芋畑に瞬間移動した。



そして、新たにバケツを2つ用意して、再び、


「タイガー池」を目指す。



母は、両脇にバケツを抱えている。



そんな母に、バケツを地面に置いても、


一緒に瞬間移動出来る事を、伝えたが、



母は、大切そうに、


バケツを脇に抱え持った。



そして、バケツに回復魔法を送っている。



それが、本当に母の魔法なのか・・・?



そてとも、僕の魔法なのか・・・?



それは解らないが、


それでも母は、バケツに回復魔法を送っていた。



母は、このバケツが大切な事を、理解していたのだ。


母は、僕に、事情を聞かない、



しかし、バケツが、


今後、作れない事を、理解しているのだ。



つまり、僕が死ぬ事を、理解しているのだ。



そして、自分が死ぬ事も、理解しているのだ・・・



僕は、母の事を、偉大な人物だと思った。



一体、何が、そこまでさせるのか・・・?



狼の群れに向かい、1歩を踏み出す勇気・・・



お腹の子供が、死ぬ事を知りながらも、


僕の気持ちを察して、



黙っている精神・・・



自分が巻き添えで、死ぬ可能性に気付きながらも、


後に残るバケツに、回復魔法を送り、


父、祖母、タロの健康を願う心・・・



『なんとしても、母は助ける・・・』



僕は誓った。


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