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湿地川を作った翌日・・・
僕は、1番川の芋畑に、水やりに行った。
芋畑の対岸には、ドングリが植えられている。
ドングリの苗木が3本、
ドングリが数百個、
それ以外にも、数種の苗木が、植えられている。
そして、昨日、僕は、
イモ畑と、ドングリを植えた地面の、
塩分除去を行っている。
畑を作った時には、地面の塩分除去など、
不可能だと思って、放置していたが、
現実的に考えた場合、
津波を受け、海水が染み込んだ地面・・・
そんな場所で、植物が育つ訳が無いのだ。
だから、母の口に、
地面の土を入れてもらい、
苦痛を感じてもらった。
母に、この様な事は、させたくない。
その事を、僕は、自分に言い聞かせ、
塩分の除去を行った結果・・・
本当に、地面の塩分が、除去されたらしい。
母が、味見をして、確認して、
僕も、その心を感じ取ったので、
それは、事実であった。
そして、今日・・・
その畑に、水をあげに来たのだ。
『・・・』
『芽・・・?』
2日前に植えたドングリから、芽が出ていた。
それも1つでは無い・・・
数十個・・・
『早過ぎる・・・』
『偶然・・・・?』
『発芽寸前のモノを埋めた・・・?』
などと、
常識的に考えてしまうが、
現実的に考えると・・・
昨日、塩分除去の時には、
芽は出ていなかった。
つまり、昨日の塩分除去・・・?
昨日、僕は、塩分除去を行う時、
植物に被害が出る事を心配した。
それが、何か作用して、発芽を速めた。
その可能性が考えられた。
つまり、魔法の作用である。
自然の発芽など、考えられないのだ。
生前、僕は、ドングリを拾った事がある。
しかし、芽が出ているモノなど、見た事が無かった。
そもそも、そんな簡単に発芽するのなら、
山は、ドングリの木で、埋め尽くされ、
ドングリの木は、駆除の対象に成っている。
しかし、その様な事実はない。
つまり、2日前に埋めたドングリが、
発芽した理由・・・
それは、魔法の効果なのだ。
魔法の何が、どの様に作用して、
成長したのか・・・?
僕の知る限り、
タネは、光が無くても、発芽する。
だから、土の下から芽が出るのだ。
では、何が必要なのか・・・?
それは、水と適温である。
タネは、水分と、暖かさがあれば、発芽する。
しかし、
水は、川の水だし、
暖かさは、季節によるモノであり、
僕が、塩分除去を行ったのは、
数分の事である。
『その数分で、どの様な影響が出たのか・・・?』
『何が作用して、発芽が進んだ・・・?』
生前、祖母がガンに成った時、
「年寄りだから、ガンの進行が遅い」
その様な話を聞いた。
つまり、若いと「細胞の分裂が速い」ので、
ガンの「成長も速い」という事らしい。
それを踏まえ・・・
では、今回の、ドングリは、
『魔法によって、その細胞分裂が加速した・・・?』
『細胞が増えた・・・?』
『それで、一時的に、成長が早まった・・・?』
以前、母が、狼に噛まれた時、
僕は、その治療を行った。
その時、母の傷は、
目に見えるスピードで、回復したのだ。
『その時と、同じ現象・・・』
塩分除去の影響で、
イモや、ドングリが枯れたら困るのだ。
だから、僕の、無意識が、イモと、ドングリに、
何か、影響を与えたのだ。
これなら、魔法による影響が、数分間であっても、
発芽の理由は、納得出来る。
しかし、と成ると疑問である。
『では、なぜ、ガン細胞は消滅する・・・?』
『なぜ、祖母の、ガン細胞は増えなかった・・・?』
魔法によって、細胞が増えるなら、
生前、祖母の、ガンは大きく成ったハズである。
しかし
『ガン細胞は消え・・・』
『ドングリの細胞は増えた・・・』
『なぜ、そんな都合良く作用する・・・?』




