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湿地川の、南側で、草を育てる理由・・・
それは、牛のエサとして、必要だからである。
牛を育てる事で、蚊の発生が心配ではあるが、
我々が、生活するネズミの拠点から、
この牧草地までは、200キロ離れている。
『本当に大丈夫なのか・・・?』
そんな事は、解らない。
しかし、僕が死んだ後、
家族が生きる為には、食料が必要なのだ。
芋畑が壊滅した場合・・・
その保険が必要なのだ。
だから、牧草地を作るのだ。
芋畑が壊滅した場合、
牧草は、無事なのか・・・?
牛は、生息出来るのか・・・?
実の所、無理だと思う。
しかし、何もせずに、死ぬ訳には行かないのだ。
しかし、この土地は、津波を受け、
塩が残っている。
では、どうする・・・?
魔法の力で、草を品種改良して、
塩分に強くした場合、
それは、牛のエサとして、使えない可能性もある。
そこで、考えた。
『地面の塩分を除去する・・・』
『地面の塩分を消費して・・・』
『川の水を瞬間移動させる・・・』
『上から、雨の様に落下させる・・・』
『それで、牧草を、普通の牧草として育てる・・・』
牧草に、水をやる時、地面の塩分を消費する。
地面の塩分を、瞬間移動のエネルギーに使う。
『出来るのか・・・?』
そして、気付く。
ここは、湿地帯である。
そして、その前は、草原だったのだ。
つまり、本来、水やりなど、不要なのである。
そこで、考える。
生前、僕は、祖母のガンを消している。
つまり、不要なモノを、消す事は、出来るのだ。
つまり、水やり無しでも、
塩分の除去が出来る・・・
と思ったが、
現在、我々が居るのは、
湿地帯である。
先ほど作った湿地川によって、
その水の多くは、川に流れ込み、
この湿地帯は、元湿地帯に、変りつつあるが、
それでも、この湿地帯は、
3ヶ月間、湿地帯だった場所である。
つまり、
『塩分が除去されている・・・?』
この地面は、3ヶ月間、
塩抜きが、行われていた訳である。
その塩が何処に行ったのか・・・?
それは不明だが・・・
『確認の必要がある』
僕は、母に、事情を説明した。
結果、母が、湿地帯の土を、口に入れる・・・
そして吐き出し、川の水で口をすすぐ。
「塩、味、解らない」
それが母の感想である。
つまり、この土地であれば塩分除去は、
必要ない・・・
現在、季節は、春を迎えつつある。
『つまり、草は育つ・・・』
『牧草地に成る・・・』
これは、大きな発見だった。
湿地帯だった場所は、
塩抜きがされていて、
植物が育つのだ。
しかし、そう成ると・・・
『では、芋畑は、どうする・・・?』
1番湿地帯も、塩抜きはされている。
その水が、川に流れ込む事で、
干上がり、数日後には、元1番湿地帯に成る。
『芋畑には理想の土地だ・・・』
『では、1番湿地帯に芋畑を作るか・・・?』
と思ったが、
『洪水が起きたら・・・?』
地形の性質上、その場所に、湿地帯が出来のだ。
つまり、山で大雨が降れば、
『その湿地帯に、大水が押し寄せる・・・』
やはり、畑に関しては、洪水の被害が心配で、
湿地帯だった場所は、使えない・・・
『やはり、現在の芋畑が最善だ・・・』
我々は、1番川の芋畑に移動した。
ここでも、再び、
母が、地面の土を、口の中に入れる・・・
その光景を見て、
僕は、罪悪感で、苦しく成る。
申し訳ない気持ちに成る。
母は、土を吐き出し、
第1川の水で、口をすすぎ、
僕に言った。
「塩、味、する」
出来る事なら、
僕が、自分でやりたい・・・
母に、この様な事は、させたくない。
僕の、罪悪感は大きく成る。
しかし、それが狙いである。
僕は、
地面の土から、塩を消費するイメージを行う。
母に苦痛を与えた原因・・・
それを消費するイメージ・・・
本当に、そんな事で、
上手く行くのだろうか・・・?
僕の魔法は、基本、
大切な人の、役に立ちたい・・・
その気持ちが重要である。
そして、この、塩分除去に失敗すれば、
それが成功するまで、
母に、土の味見をさせる事に成る。
『それは、嫌だ!』
僕は、芋畑を見て、
その地面から、塩分を消費するイメージをする。
消費する事で、瞬間移動が発動するイメージ・・・
通常は、その様な事をしなくても、
瞬間移動は行える。
塩分の除去をする為に、
瞬間移動を行う必要も無い。
生前、祖母のガンを消した時と、同じ事である。
しかし、今回は、
芋畑に水をやる必要もあるので、
瞬間移動を行い、そのエネルギーとして、
地面の塩分を消費する様に、イメージした。
では、通常時は、何をエネルギーにして、
魔法を発動しているのか・・・?
そんな雑念が入るが、
僕の瞬間移動は、定着しているので、
次の瞬間、
川の水が、数メートル上に移動して、
芋畑へと降り注いだ。
回復魔法で、畑の芋を確認・・・
芋は、正常である。
ダメージがあれば、
回復魔法が反応する・・・
では、地面の塩分確認である。
母に味見してもらう。
「塩、味、無い・・・・」
それが、母の感想だった。
僕は、母と心が通じている。
結果、母が、僕に気をつかい、
嘘を言った場合、
それは解る。
それを踏まえ、
母は、嘘を言っていない。
『本当に、塩味が無いと感じている・・・』
『2口目だから、薄く感じるだけ・・・?』
『本当は、変化が無いのでは・・・?』
その様な疑問もあるが、
その後、僕は、
地面の塩分を消費するイメージを繰り返し、
川の水を、芋畑や、ドングリ森予定地に、
落下させる作業を、繰り返した。
ちなみに、30メートル以上から落下させると、
川の水は、雨の様に分散して落下した。
『これで良し・・・』
実際は、良くは無い。
問題だらけである。
地形の性質上・・・
山に大雨が降れば、牧草地は、湿地帯に戻る・・・
その時、牧草は、どう成る・・・?
牛は、どう成る・・・?
実際、僕は、何も解決出来ていないのだ。
その時、この芋畑は、生きているのか・・・?
そんな事は、解らない。
しかし、時間である。
こうして、我々は、牛の解体を行う父の元へと帰った。




