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明日からは、別行動を行う。
今まで、我々は全員で行動していた。
しかし、状況を考えると、
ネズミの拠点にいる限り、
何かに襲われる危険は無い。
そこで、父、祖母、タロには、
ネズミの拠点に残ってもらう。
そして、母と胎児である僕は、
岩塩の大地の向こう側・・・
つまり、牛の大地に行って、
次の、牛を狩って来る。
現在の瞬間移動があれば、
1時間程度で、終わる。
それを、明日、実行する・・・
その事を、全員に伝えた。
その日の夜、
僕1人の時間、
死なずに済む方法を、考える中、
僕には、解決するベキ問題があった。
『この世界は、不自然だ・・・』
僕は、この問題に、
答えを出す必要があった。
我々が居るのは、大陸である。
この大陸の周囲は、
全てが、山脈に囲まれている・・・
その山脈内に残された海水が、
岩塩の大地を作った。
僕は、その様に考えている。
しかし、
山脈とは、大陸と大陸が、
激突して誕生する地面のシワである。
つまり、3人山脈の向こう側にも、
大陸がある・・・
という事に成る。
しかも、
この大陸が誕生する為には、
東西南北、全ての方向から、
同時に、4つの大陸が激突して、
海水を、大陸内に押し込みながら、
山脈が出来た事に成る。
それで無ければ、
海水が大陸内に残らない。
しかし、現実問題、
『そんな訳が無い・・・』
大陸の移動には、流れがある、
全方向から、大陸が激突して来る事など、
絶対に起こらない。
では、この大陸は、
どの様に誕生したのか・・・?
『誰かが作ったのか・・・?』
『誰・・・?』
これこそが、僕の解決するベキ問題である。
僕が来る以前にも、
誰かが、この世界に来て、
『そして、この環境を作った・・・?』
その人物も、魔法の暴走で死んで・・・
この世界に来たのでは?
僕よりも、数千年、数万年前に、ここに来た。
そして、自分が生き延びる為に、この環境を作った。
僕は、その様に考えてしまう。
自分が、そうなのだから、
そう考えるのは、自然である。
しかし、現実的に、
本当に、そんな人物が存在するだろうか・・・?
歴史上・・・
『魔法使いが、存在したのだろうか・・・?』
『僕は、魔法使いである・・・』
『それは認める・・・』
では、僕以外に、
魔法使いは、存在したのだろうか・・・?
『おそらく、存在しない・・・』
僕は、自分への説得を始めた。
歴史上、僕以外の魔法使いは、存在しない・・・
生前の僕は、癌を治す事が出来た。
しかし、医療の進歩に、悪影響を与えるので、
僕は、魔法による癌治療を封印した。
ところが、
『もし、僕が、あの日、死ななかったら・・・』
『その後も、現代で生きていたら・・・?』
『そして、大人に成長していたら・・・?』
『それでも、癌治療を封印出来ただろうか・・・?』
そんな事、不可能である。
生前、僕の周囲で、癌に成ったのが、
祖母1人だった・・・
だから、僕は、癌治療を封印出来たのだ。
もし、当時、祖父も、癌に成っていたら、
僕は、我慢出来ずに、癌治療を行っただろう。
魔法がバレる事など、関係なく、
魔法で癌を、治しただろう・・・
それ以外にも、生前の僕が、
もし、瞬間移動を修得していたら・・・
それを使っていただろう・・・
僕が秘密にしても・・・
バレない様に使っても・・・
誰かが、その異常に気付いただろう・・・
僕は、幼児期に魔法使いに成った。
そして、変身ヒーローに感化され、
魔法の事を、秘密にして来た・・・
バレなかったのが奇跡である。
それを踏まえ、
僕以外の、魔法使いが居たとして・・・
僕と同じ選択をしただろうか・・・?
魔法を秘密に出来ただろうか・・・?
医学の衰退を防ぐ為、
医療魔法を封印、
警察の衰退を防ぐ為に、
千里眼を封印、
消防やレスキューの衰退を防ぐ為に、
瞬間移動を封印、
そんな事が、出来ただろうか・・・?
助ける事が出来るのに・・・
魔法を使わない・・・
その結果、人が死ぬ・・・
家族が死ぬ・・・
ニュースを見て、
災害を知る・・・
現地に行って、
救助が出来るのに、
魔法を使わない・・・
その結果、多くの人が死ぬ・・・
そんな事が出来るだろうか・・・?
『実際には、不可能だ・・・』
我慢など出来ない・・・
魔法が発動してしまう。
それが魔法である。
生前、僕の魔法は、未熟だった。
その結果、ラジコンカーが勝手に走った。
方法が解らないのに、
逆立ちコマの逆立ちも、阻止した。
それが、魔法使いの初期段階には、
必ず起きる・・・
そんな日常生活を続け、
幼い頃から、死ぬ日まで、
魔法使いである事を、
秘密に出来ただろうか・・・?
『不可能だ・・・・』
『絶対にバレる・・・』
つまり、僕以外に、魔法使いが居た場合、
その人物は、魔法使いである事がバレ、
世界的な有名人に成っている。
しかし、僕の知る歴史に、
その様な人物は存在しない。
僕は、その様に考えた。
その様に考えたかった。
僕は、必死に成って、
僕以外の、魔法使いの存在を否定した。
そして、それには、大切な目的があった。
僕は、神様を信じない、
正確には、信じない様に、努力している。
その様な存在を信じると、
本当に困った時、
神様が助けてくれると、考えてしまう・・・
例えば、崖から落下する最中、
最後の最後まで、あきらめなかった場合、
最後の最後に何かに、つかまって、
助かる可能性がある。
しかし、神様を信じてしまうと、
最後の最後で、
自分では何もせず、
神様に、お願いしてしまう。
目を閉じて、祈りながら落下しても、
待っているのは、ただの激突である。
だから、神様など信じてはいけない。
それが僕の持論である。
そして、この世界に、
僕以外にも、魔法使いが居る可能性・・・
その様なモノを信じてしまうと、
僕は、最後の最後で、
その魔法使いに、祈ってしまう・・・
自分では、努力せずに、
『助けて・・・!』
と救いを求める。
しかし、その様な、魔法使いなど実在しない。
結果、僕の無意識は、再び、
僕の魂を、瞬間移動させ、
その先で、大災害を起こす・・・・
『だから、僕は、祈っては、いけない!』
最後の最後まで、自分の力を、
信じる必要があるのだ。
『僕には、最悪を回避する義務がある・・・!』
となると・・・
疑問が生まれる。
では、この不自然な大陸は、
どの様にして誕生したのか?
僕は、この大陸が、
自然に誕生したモノであると、
自分を納得させる必要があった。
それが、出来なければ、
僕は、心の中で、
やはり、この大陸は、
先輩魔法使いが作ったモノだ・・・
僕がピンチに成ったら、
先輩魔法使いが助けてくれる・・・
その様に考えてしまう。
その様に、考えな様にしても、
それは、考えているのと、同じ事である。
それを回避する為、
僕は、必死に考えた・・・
どの様な自然現象で、全方向が山脈で囲まれ、
その中央に、岩塩の大地が出来たのか・・・?




