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これは魔法の書です。  作者: わおん
16/2278

016

現在、僕は、コタツに足を入れ、


座椅子に座り、アニメ映画を見ている・・・



台所に居る母は、そう思っているだろう。



しかし、僕は、テレビなど見ていない・・・


それ所では、無かったのだ。



現在、僕の胸の前で、


羽毛が空中停止をしている・・・



母からは、僕の背中しか見えないので、


羽毛は、見つからない。



その瞬間、僕の中から、モヤモヤが消えて行く。



僕は、以前、もう実験の必要は、無いと考えた。



『自分が、魔法使いかどうか・・・』


『それを確かめる実験・・・』


『もう、その必要は無い・・・』



その様に考えた。



『僕は、逆立ちコマを倒せる・・・』


『10円玉を指で弾き、回したモノも倒せる・・・』



以前、その事実に気付いた時、


僕は、自分が、魔法使いである事を「確信」したのだ。



しかし、それは嘘だった。



本当は「確信」など無かったのだ。



だから、毎日、練習と称して、


実験を繰り返していたのだ。



僕は、自分に嘘を、ついていたのだ。


だから、毎日、不安だったのだ。



以前、僕が、4歳の時、


紙飛行機が6の字に、飛んだ事があった。



僕の手の動きに合わせて、動いたのだ。



これが偶然である訳が無い。


でも、それでも信じられなかった。



その後、僕は、5歳に成った。


そして、毎日、魔法の練習を続けている。



しかし、当時の僕は、


自分が、幼児である事を、理解していた。



『幼児には、理解出来ない、何かがある・・・』



僕は、その事を、理解していた。



だから、いつも不安だった。



『これは、本当に魔法なのか・・・?』


『これは、別の、何かなのでは・・・?』



『ズルなのでは・・・?』



もちろん、ズルなどしていない。


でも、何か、ズルをしている可能性がある。



サイコロを転がす時に、


1の目が出る様にズルをする・・・


そんな技術など、僕には無い。



でも、あるのかも、知れない。



幼児の僕には、解らないだけで、


僕は、それを、やっているのかも、知れない。



逆立ちコマが倒れるのも、


幼児の僕には、解らない、


ズルがあるのかも、知れない。



『僕は、ズルをしていない・・・』


『でも、僕が気付いていない、だけで・・・』


『僕はズルを、しているのかも、知れない・・・』



『僕は、ズルいのかも、知れない・・・』



僕は、これまで、そんな不安を感じていた。


幼児にも、常識はあるのだ。



変身ヒーローなど、実在しない。


あれは、大人が芝居をしているのだ。


嘘なのだ。



そんな事は、幼稚園の、みんなが知っていた。


それが、常識である。



魔法なんて、本当は存在しない。


5歳児の僕には、


それが、理解出来た。


それが、常識である。



『でも、自分だけは、例外なのかも・・・』



その様にも思えた。



実際、魔法が使えるとしか、


考えられない事が、何度もあった。



ズルをしている自覚は、無かった。



『でも、ズルかも、知れない・・・』



『大人が見たら・・・』


『それは、魔法じゃないと・・・』



『簡単に、説明出来る事なのかも、知れない・・・』



僕は、その様に考えていた。



僕の、常識が、僕に不安を与えていたのだ。


僕の常識が、僕を、馬鹿にしていたのだ。



ところが、今、目の前で、


羽毛が、空中停止をしている。



その結果、僕の中の、モヤモヤが、


完全に消えていた。



『これで、いいんだ・・・』



実際に出来ているのだから、


これで良いのだ。



僕は立ち上がった。


その瞬間、羽毛を見失ってしまった。



しかし、問題は無かった。



僕は、玩具を取って来るといって、


子供部屋に向かう。



母が、階段の下に来て、


玩具を取ったら、直ぐに下りて来る様に言っている。



僕は、その声に返事をしながら、


子供部屋のドアを、少し開き、指で軽く突いた。



すると、ドアが開いた。



軽い力では、開く訳のないドアが、


完全に開いた。



子供部屋に入った僕は、


姉の机の上で、逆立ちコマを回した。



こんな事をしていたら、


母が来るかも、知れない・・・



そんな不安の中、コマを回した。



逆立ち後の、逆立ちコマが、


小刻みな、移動を繰り返す。



これは、あくまでも、自然な現象である。



しかし、次の瞬間・・・


そのコマが、僕の意思通り、8の字に動き出した。



僕は、逆立ちコマを手で止めると、


それを玩具箱に戻し、


ミニカーを取り出し、リビングへと戻った。



この日、僕は覚醒したのだ。


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