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生きる上で、水は、とても重要である。
全ては、水がある事が前提なのだ。
その為、我々は、水探しの為に、
調査を行っている。
そんな中、湿地帯を見つけた。
つまり、水が確保出来るのだ。
しかし、この湿地帯は、数ヵ月後、
蚊が、異常繁殖する可能性があった。
そして、僕は、蚊取り線香を、
作ろうと考えた。
僕は、そんな自分が、恥ずかしく成った。
『除虫菊、どこにある・・・そんなモノ・・・』
蚊取り線香は、
ジョチュウギク、という植物から作る。
しかし、
知って居る事と、出来る事は、
別物である。
賢い芝居の愚かさは、そこにある。
知っている事を、出来る事と勘違いして、
その時が来たら、何も出来ないのだ。
生前、僕は、テレビで見た事があった。
「ゾンビを殺す!」
玩具の武器を手に、
その様な事を、得意気に言っていた子供が、
ゾンビ役の襲撃を受け、
「こんな玩具で、殺せる訳な無い!」
と絶叫していたのだ。
『蚊の大群を殺せる・・・』
その様に考えるのは、
それと同じ事である。
幼稚なのだ。
しかし、である・・・
『我々しか居ない地域で・・・・』
『我々の血だけが、栄養源だった場合・・・』
『蚊は、異常繁殖出来るだろうか・・・?』
僕の知識では、
蚊は、卵で冬を越す。
卵は、乾燥に強い。
その後、雨が降り、
卵が、水溜りの中にあれば、孵化する。
その間、血は必要ない・・・
では、その卵から生まれた蚊は・・・?
あくまでも、僕の知識だが、
蚊は、血が無くても、繁殖出来るハズである。
つまり、湿地帯があり、天敵が居なければ、
蚊は、増えるのだ。
しかし・・・
『津波で、蚊の卵は、流された・・・』
『150キロ先・・・雨の降らない場所に・・・』
しかし・・・
『本当に、全て流されたのか?』
『そんな訳がない・・・』
『と、思う・・・』
『そもそも、蚊が増えると・・・』
『どれ位、危険なのか・・・?』
『どのレベルの、病気に成るのか・・・?』
僕は、途方に暮れた。
『一体、どうすれば良いのか・・・?』
解らない事だらけで、
無力感に、押し潰されそうに成る。
問題ばかりである。
絶望的な状況なのだ。
僕は、日々、本気で考えている。
しかし、
何も、解らない・・・
何も、解決出来ない・・・
そして、僕には、
先送りにしている大問題があった。
それは・・・
『僕は、無事に誕生するのか・・・?』
という事である。
これまで、何度も考え、
何度も不安に成った。
脳が無いのに、考え・・・
目が無いのに、見え・・・
手が無いのに、動かす・・・
そんな僕に、
『脳が出来たら・・・?』
『脳が機能を開始したら・・・?』
『目が、機能したら・・・?』
『手が、機能したら・・・?』
『僕は、どう成る・・・?』
『生まれた瞬間、僕は、死ぬのでは・・・?』
現在、胎児の僕は、
回復魔法の恩恵を得ている。
つまり、胎児の段階で、
脳が出来、
目が出来、
手が出来ても、
その負担は、回復魔法が軽減してくれる。
その可能性はある。
そもそも、胎児の段階では、
脳や、目や、手を使う必要性が無い。
しかし、誕生の瞬間、
僕は、
通称、魂の脳と、本物の脳、
それを、同時に使う事に成る。
目も、手も、足も、
今まで、魔法で代用していた全てに、
本物が、加わる・・・
『単純に、機能が2倍に増える・・・』
魂型魔法しか知らない、母とは違い、
僕は、脳型魔法も使えるのだ。
『脳型魔法と、魂型魔法が、同時に発動する・・・』
魔法には、使わないという選択視が無い、
修得した魔法は、自動的に発動するのだ。
『それに、肉体が耐えられるのか・・・?』
魔法の暴走で、僕は、再び死ぬ可能性があるのだ。
家族を置き去りにして、
死んでしまうのだ・・・
僕が、死ぬ事で、
父、母、祖母、タロは、
『一体、どう成る?』
僕が、ここまで、連れて来たのだ。
僕には、家族の将来を守る・・・
その責任があるのだ。
そんな中、見つけたのが、
この湿地帯である。
数か月後、蚊が異常発生する可能性・・・
その様な湿地帯・・・
水は、必要だが、
ここにも住めない可能性・・・
途方に暮れる中、
僕は気付いた。
『これを、希望にする以外に、方法は無い・・・』




