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現実的に考え、
この大陸の東側・・・
つまり、我々の住む地域では、
全ての動物が、死んでいる。
津波は、山脈を越え、
徒歩2日の森を抜け・・・
そして、平原を150キロも進んだのだ。
それ程の、大きな津波が、
大陸の東側を直撃したのだ。
生き残れる訳が無いのだ。
しかし、本当に、そうなのか・・・?
この津波は、魔法によるモノである。
通常の津波では無いのだ。
その為、3人は生き延びたのだ。
つまり、生き残りが居る可能性・・・
その確認は、必要である。
我々は、再び、南を目指し、
移動を開始した。
昨日、縄文式住居の模型を作った場所、
通称、ネズミ拠点、
そこから、約30キロ程の地点に到着、
前方の地面が、キラキラと光っていた。
我々は、加速移動を、している訳では無いので、
突然、止まっても、何の影響も受けない。
急ブレーキとは、違うのである。
10メートル程度の、小刻みな移動で、
キラキラの地面に接近する。
我々は、すでに、その正体を理解していた・・・
『水だ・・・』
周囲が、水浸し・・・
びちゃびちゃ・・・
深さ3センチの水溜り・・・
それが、数キロ四方に広がっている・・・
僕は、納得した。
『川の水が、ここに流れて来ている・・・』
元々は、山中の渓流を、
ゆるやかに流れていた川・・・
それが、津波による倒木と、土砂で埋まり、
川としての、機能を失った。
結果、土砂崩れダムが出来る。
それが決壊して、
木々を失った山の斜面を、垂直に流れ落ちる。
それが、山の斜面を削り、
水の流れ道を作り、
周囲の水を引き寄せ、
流れ落ちる・・・
しかし、山を下ったポイントには、
倒木のバリケードがあり・・・
その先には、ネズミの森が続いている・・・
結果、そこで水の勢いは、急激に弱まり、
分散しながら、
森に広がって行く・・・
そして、その水が、森を抜け、
枯れた大地に到達した。
それが、この湿地帯を生み出した・・・
と考えられる。
僕は自分に、
『賢い芝居をするな!』と言い聞かせている。
今の、予想も、
ある意味、賢い芝居である。
事実である保証など、
何も無いのだ。
あくまでも、小学生レベルの考えなのだ。
しかし、それは理解していても、
今後の事を、予想する必要はある。
我々には、水が必要であり、
今、その水を見付けたのだ。
『この水は、大丈夫なのか・・・?』
賢い芝居は駄目だが、
状況を、理解する必要はある。
昨日、調査に向かった北側には、
この様な湿地帯は、無かった。
『なぜ、無かった・・・?』
『北には無かった湿地帯・・・』
『なぜ、南にはある・・・?』
そして、予想する。
おそらく、北にも、
湿地帯はあったのだ。
しかし、土地の性質上、
それは、森の中で広がっている・・・
その様に考えられた。
つまり、ネズミの森の中には、
大きな湿地帯が、点在している。
その可能性が考えられる。
つまり、暖かく成れば、
蚊が異常繁殖する可能性がある。
池や、川であれば、
小魚が、蚊の幼虫であるボウフラを食べ、
その量を減らす。
しかし、この湿地帯は、
深さ、3センチ程度、
魚の姿は、無い・・・
つまり、ボウフラの天敵が居ないのだ。
『では、蚊は、どの様に繁殖する・・・?』
通常、蚊のメスは、動物の血を吸い、
その栄養を使い、産卵する。
『しかし、この地域には、我々しか居ない・・・』
『つまり、全ての蚊が、我々を狙う・・・?』
『バリアで防げるのか・・・?』
現状、バリアは、一時的なモノである。
また、寒さ軽減も、
極寒では、その効果が低い・・・
つまり、
『守る力が弱い・・・』
つまり、
『我々は、蚊を防げない・・・』
『蚊取り線香的な、何かを作る・・・?』
『・・・』
『僕は、何を考えているのか・・・』
僕は、自分に、あきれた。




