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現在、ネズミの拠点を出発して、
南へと向かっている最中・・・
父が何かを、目撃したらしい。
僕は、イカダを止めた。
その後、母の通訳で、
父から、話を聞き。
その現場に引き返す。
瞬間移動3回分、
900メートルの移動・・・
これで、約1秒である。
その速さで、
何かが見えたのか・・・?
電車の様に、走って移動している場合、
風景を見る事が出来る。
しかし、我々は、
瞬間的に、300メートル移動する。
これを3回、繰り返したのだ。
風景が途絶え、
目で追う事など、出来ない。
つまり、父は、一瞬で、
それを発見して、
それを、理解出来たのだ。
『回復魔法の影響で・・・・』
『父の、動体視力が、向上している・・・?』
『それとも、元々・・・?』
父が指差した先に、
それは、あった。
ネズミの森の、木の上、5メートルの位置に、
牛の頭蓋骨が乗っかっていた。
『なぜ、あんな場所に・・・?』
様々な、可能性が、思い浮かぶ。
『空を飛ぶ、巨大な恐竜が・・・』
『牛を狩って食べた・・・』
『結果、木の上に、頭蓋骨が残った・・・』
しかし、これは無い。
牛を捕まえ、飛べる恐竜、
その様なモノが居れば、
3人と1匹は、その鳴き声を聞いているだろう。
鳴かなくても、
空を飛べるのなら、
3人が村で、暮らしていた時点で、
それを、目撃しただろう。
つまり、その様な恐竜は、存在しない。
と成ると、津波である。
津波発生時、
この牛は、森の中に居た。
葉っぱを食べる為・・・?
恐竜から逃げる為・・・?
理由は、いくらでも考えられる。
その時、津波の激流に、押し上げられ、
木に引っかかった。
その結果、溺れ死んだ・・・
あるいは、生き残ったが、
身体の構造上、
下りる事も、落ちる事も出来ず。
そのまま、死んだ・・・
そして、ネズミに食べられた・・・
その様に考えた方が、
納得出来た。
しかし、不思議な事に、
周囲に、胴体の骨は無かった。
『恐竜が、持って行ったのか・・・?』
それは、不明だが、
2ヶ月前、
3人を襲った熊も、脇腹を負傷していた。
おそらく、津波に流され、
木に激突して、引っかかり、
その結果、生き延びたのだ。
タロも、津波に飲まれたが、
木に引っかかり、生き延びている。
つまり、この牛の、その様な・・・
と考え、気付いた。
『元々、骨だったのでは・・・?』
それが、今回の津波で、木の上に引っ掛かった。
そう考えると納得出来た。
もちろん、全ては、僕の空想である。
しかし、気に成る事は、
考えてしまう。
そして、自分で答えを出してしまう。
例えば・・・
『3人村を、襲撃した狼の群れは・・・?』
『現在、どうしている・・・?』
狼の群れも、おそらく、津波発生時、
山頂近くに居て、助かったのだ。
ところが、
この地域で、生き延びているのは、
津波発生時に・・・
山の上に居たか、
流されたが、木に引っかかり、
その後、無事に降りる事が出来た。
その2種類と考えられる。
という事は・・・
『それ以外は、全て死んでいる・・・』
つまり、
『エサに成る動物は居ない・・・』
つまり、
『あの狼の群れは、飢え死にしている・・・』
『では、枯れた大地の動物は・・・?』
僕は、枯れた大地を見た。
元は、ここは、草原だったと考えられる。
そして、動物が生息してた。
しかし、
津波により、全て死んでいる・・・
昨日、北を目指した時、
ネズミの森から、
岩塩の大地方向、150キロ地点まで、
津波が到達していた事を、確認している。
僕は、思い浮かべた・・・
動物が、津波に飲み込まれた場合、
水中で、身体が回転する・・・
その際、地面に強打した可能性もある。
それが無くても、確実に水は飲む・・・
その状態で、100キロ以上流されたのだ。
もし、奇跡的に生き延びても、
生息可能エリアまで、引き返す体力は、
残っていないだろう・・・
ノドが乾き、水を飲んだ場合、
それは、海水である。
結果、衰弱の進行を早め、
死んだと考えられる。
僕は、自分を恥じた・・・
『また、軽く考えていた・・・』
『北か南に行けば・・・』
『生き延びた動物達が多く居る・・・』
『楽観的に考えでいた・・・』
しかし、現実は違った。
『全て、死んだのだ・・・』
津波が発生したのは、満月の夜、
その時、山頂にいて、助かったモノなど、
少数である。
狼は、遠吠えの習性で、
山頂に登ったのかも知れない。
しかし、それ以外の動物・・・
あるいは原始人が、
津波発生時、
真夜中の山頂に、居た可能性は低い・・・
山頂には、水も、食料も無いのだ。
しかも、狼が居る・・・
そんな、山頂に行く意味が無いのだ。




