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これは魔法の書です。  作者: わおん
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小屋に関する知識など、


全く無い原始人の祖母が、


丸太小屋を考え出したのだ。



祖母は、自分の存在価値を生み出す為に、


必死に考えたのだ。



そこで、まず、祖母の考えが、


名案である事を、説明する。



しかし、残念ながら、


今の技術では、


それは、作れない・・・



その理由を、実際のイカダを参考に、説明する。



すると、祖母は、


強風で、イカダが、


崩壊する危険性を、理解していた。



その為、その部分の改善方法を、


考えている最中だったのだ・・・



『祖母は、天才なのでは・・・?』



しかし、それは、祖母だけでは無かった。



父も母も、イカダ小屋の問題点を、


理解したのだ・・・



これは、素晴らしい事である。



僕は、自分の認識を、改める必要があった。



『原始人は、賢い・・・』


『教えれば、車の運転も出来るレベル・・・』


『教育があれが、大学に行けるレベル・・・』


それ位の、賢さを感じた。



しかし、僕は、


その賢さに、違和感を覚えた・・・



何か、不自然・・・


何か、不思議・・・



『原始人とは、これ程、賢いモノなのか・・・?』


『それなら、なぜ、山中で生活していた・・・?』



進化の過程で、1度、平地に出た。



そして、直立歩行が可能に成るまで、


何世代も生活していた。



ハズである・・・



ところが、3人の先祖は、


なぜか再び、山での生活に戻った・・・



おそらく、タロを飼っていた部族も、


同様である。



平原を捨て、山に戻ったのだ。



『なぜだ・・・?』



僕の考えでは、


大陸の移動によって、



原始人大陸と、


恐竜大陸が、


1つに成ってしまった。



結果、原始人の楽園に、


恐竜が現れ・・・


原始人は、再び、山に戻る事に成った。



その様に、思っていた。



しかし、


祖母は、イカダ小屋を考え、


そして、それを作る前に、


その問題点に、気付いたのだ。



そして、その話を聞いただけで、


父と母は、その内容と、問題点を、


理解出来たのだ・・・



『知能が高過ぎる・・・』


『これだけ、知能の高い種族が・・・』


『恐竜に、屈するだろうか・・・?』


『なぜ、恐竜を倒さない・・・?』



などと、考えてみたが、


答えなど出ない・・・



結局の所、


『原始人には、現代人と同等の知力がある・・・』


その様に、判断する以外に無かった。



そして、僕は考えた。



『3人の、賢さを生かす為に・・・』


『3人の、可能性を引き出す為に・・・』


『どうするベキか・・・?』



そして、決めた。



『賢いのだから、教えてみよう・・・』



僕は、3人に、縄文式住居の作り方を、説明した。



3人の賢さに、賭けてみる事にしたのだ。



縄文式住居を、イカダに乗せ、


移動する事など、


現実的では無い。



しかし、その構造を教える事で、


それを工夫して、進歩させる知力、


それが、この3人にはあるのだ。



僕は、その様に考えた。



そこで、まずは、模型作りである。



小枝を集めてもらう。


太さは、4ミリ程度・・・


曲がるモノを選ぶ。



長さは、30センチ程度、


真っ直ぐなモノを選ぶ。



母に、段取りを説明して、


地面に、30センチ程度の円を、描いてもらう。



円の中心部分に、穴を掘り、



底に小石を1つ入れ、


30センチの棒を立てる。



石で固定して、


土をかぶせ、


叩いて固める・・・



これで、柱の完成である。



次に、


円の、北側と、南側に、


長さ30センチの枝、



つまり、時計の12時と6時の位置にも、


棒を立て、



その棒の先を、


円の中央で交差させ、


中央の柱に、ツルで固定。



3時の位置と、9時の位置にも、


同様に棒を立て、


円の中央で、交差させツルで固定。



これで、テントの骨組みの完成である。



次に、地面から、10センチの位置に、


横棒を設置する。



12時の棒から、3時の棒に


横棒を渡し、ツルで固定する。



3時の棒から、6時の棒・・・


6時の棒から、9時の棒・・・


9時の棒から、12時の棒・・・



それぞれ、横棒を固定する。



次に、地面から、20センチの位置にも、


同様に、横棒を固定する。



これは、模型なので、横棒の数は少ないが、


3人は、その事も理解していた。



次に、川に近くに群生している植物・・・



葦、アシ、ヨシ、


呼び名は、様々だが、


細い竹に似た植物・・・



簡単に言うと、


筒状・・・


ストローの様な植物が、


存在するか?



それを3人に質問する。



実際には、


「細い、棒、穴、棒、洞穴、見える、棒・・・」


程度の会話と、



母との、感覚的共有を行い、


それによって、


母が、手で筒を作り、


2人に見せる。



その結果、


父が、棒を吹く仕草をした。


つまり、通じたのだ。



そして、その植物を、


「ヨシ」と呼ぶ事に決め、


説明を続ける・・・



実際には、ヨシを使う事を説明する。



「今、ヨシ、無い、今、違う、使う」



3人も、これが、模型での説明である事は、


充分に承知している。



そこで、代用として、枝を用意、


長さ、12センチ、


太さ、2ミリ、


これを、2本、


お箸の様に、そろえる。



その先、一箇所をしばる。



結果、


松の葉や、


漢字の「人」の字の様なモノが出来る。



「枝1本、本当、ヨシ20本」


それを聞いて、



3人は、


この枝が、ヨシの束を、


表現していると理解する。



それを、住居模型の、


1番、低い位置の横棒に、


はさむ。



すると、祖母が、指で、逆さVサインを作り、


それで、横棒に見立てた、腕をはさみ、


その手を、トントンと移動させて行く・・・



つまり、ヨシの束を、複数作り、


それを並べ、外壁を作る・・・


それを、理解しているのだ。



もちろん、


狼の襲撃や、


強風に耐えられない事も、


理解している。



しかし、現在の技術で、作れるのが、


これであり、


この技術を土台に、発展させ、



本当に製作可能な小屋を


考える必要がある。



3人は、それを理解して、納得した・・・



『凄い・・・』



それが、正直な、僕の感想だった。



僕の様に、


鉄を溶かして、


金属製の、刃物を作り、


それで、木造家屋を、建てるなどと、


不可能な、アイデアを並べても、無意味なのだ。



何も出来ない人間程、


得意気に物事を発言する。



そして、無知な人間は、


それを名案と勘違いして、


暴走する。



それが、現代社会である。



そして、現代で僕は、


無知で得意気な人間だった。



3人は、そんな幼稚な僕よりも、


大人である。



自分の実力を、理解している。



本当に可能な事・・・


本当に、自分で出来る事・・・



それを必死に考えていた。



そして、僕は、思った。


『カタコト会話は止めて、本当の会話を教えよう』


その後は、3人と、小屋の作り方を考えながら、


文法の勉強を開始した。


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