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原始人である祖母に、
小屋に関する知識など全く無い。
そんな祖母が、
我々の為に、必死に考え、
小屋を考え出したのだ。
祖母は、責任を感じているのだ。
自分は、役に立っていない。
ある意味、それは事実であった。
祖母は、自分が不要な存在だと自覚していた。
だからこそ、祖母は、必死だった。
自分の、存在価値・・・
それを生み出す為に、
一生懸命に、考え出したのだ。
それが、イカダを応用した小屋作りだった。
祖母には、
『良い環境を作りたい・・・』
『みんな安全に、暮らして欲しい・・・』
その様な思いがある。
それが充分に伝わった。
『作らない訳には行かない・・・』
しかし、
『イカダに、イカダの壁を固定する・・・』
つまり、丸太小屋を作る訳である。
しかし、
それを、実用的強度で、実現するには、
僕は、あまりにも無知だった。
『ツルで固定した場合・・・』
『強風で、壊れる・・・』
我々が使っているイカダは、
丸太を、ツルで固定したモノである。
丈夫なツルを選び、
どれだけ強く、巻き付けても、
最終的に、しばる段階で、
少し、ゆるむ・・・
結果、丸太の隙間に、木材のクサビを打ち込み、
それで、ガタツキを防いでいる。
瞬間移動の時、
イカダには、ほとんど負担は無い・・・
移動はしているが、
平地から平地への移動である。
地面に置いたままの状態に等しい、
結果、クサビが、ゆるむ事は無い。
しかし、もし、このイカダを立てて、
強風に当てた場合・・・
「ギシギシ」と音を立て・・・
クサビが、ゆるむ・・・
これは、間違いの無い事実である。
では、どうするか・・・
『ホゾ穴を掘る・・・』
丸太に、四角い穴を開け、
もう一方の丸太の先を、四角に削り、
差し込むのだ・・・・
つまり、「はめこみ式」で作るのだ。
『ツルで固定するよりも、ガダは少ない・・・』
しかし、我々には、
丸太に、四角い穴を、開ける技術が無い。
石を瞬間移動させ、
丸太に、穴を開けて、
丸棒を刺し、隣の丸太と連結させる。
その様な方法も、思い浮かぶが、
石で開けた穴は、円ではない。
あくまでも、瞬間移動のエネルギーとして、
消費されるだけである。
つまり、寸法を計った様な、
正確な穴は、開けられないのだ。
結果、長さ1メートルの丸太に、
10センチ間隔で穴を開ける・・・
その様な事は、不可能である。
では、
『石器で、それが出来るのか・・・?』
瞬間移動を利用して、
最初に、小さな穴を開ける。
それの穴を、石の刃物で、削り、
必要なサイズに広げる・・・
『理屈では出来る・・・』
しかし、それでは、負担がかかり、
『作業途中で、丸太が、割れる・・・』
では、金属製の道具を作る。
『彫刻刀・・・ノミ・・・』
『ノミを作る・・・』
『方法は・・・?』
僕は、その方法を知っていた。
そう・・・知っていた・・・
知っているだけ・・・
『砂鉄が取れる川・・・・』
『鉄鉱石が採掘出来る山・・・』
『そんなモノ、どこのある・・・?』
『鉄を溶かす・・・』
『タタラを作る・・・』
つまり、
『特殊な土で、器を作る・・・』
『お風呂サイズの器を作る・・・』
『その中に、砂鉄や鉄鉱石を入れる』
『そして、器を熱する・・・』
『ふいご・・・』
『つまり、ポンプで空気を送り火力を高める・・・』
『すると、器の中の鉄が溶ける・・・』
『器の、一部を破壊する・・・』
『すると器から、溶けた鉄が、地面に流れ出す・・・』
『それが固まる・・・』
『その鉄は、叩けば割れる・・・』
『割った鉄を、積み重ねる・・・』
『それを、鍛冶屋の様な方法で、熱して・・・』
『金槌で叩く・・・』
『それによって、不純物が飛び散る・・・』
『積み重ねた鉄を1つの塊にする・・・』
『それが、鋼の元に成る・・・』
しかし・・・
『それを、誰がやる・・・』
『特殊な土・・・?』
『それは何だ・・・?』
『どこにある・・・?』
『誰が探す・・・?』
『土で、風呂サイズの器・・・・?』
『1回目で成功する訳がない・・・』
『強度は? 構造は? 火力は? ポンプは?』
『何回、試行錯誤する必要がある・・・?』
アイデアなど、次々と出て来る・・・
しかし、それで、本当に出来るのか・・・?
『出来ないのだ・・・・』
『知ってるだけ・・・アイデアだけ・・・』
『それで、何とか成るなら・・・・』
『全人類は、優等生である』
『勉強出来ない人など、存在しない・・・』
『運動音痴など、存在しない・・・』
テレビを見るだけで、
『全員、博士やアスリートに成っている・・・』
それが出来ないのだ。
知っていても、出来なければ、役に立たない。
しかし、ここで挫折するのは、
愚かである。
『祖母の考えを生かす・・・』
『小屋を作る・・・』
『そのアイデアを生かす・・・』
では、どうするか・・・?
『テント・・・?』
『イカダにテントを設置する・・・?』
『牛皮のテント・・・・?』
『それとも・・・・』
『縄文時代の縦穴式住居・・・』
『枝の骨組みと、草などを使ったテント・・・』
『これだ・・・』
僕は、3人に説明を開始した。




