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現在、我々は、大陸の東側に居る。
つまり、
3人山脈や、ネズミの拠点があるのは、
東側である。
そして、今朝、我々は、
ネズミの森を右側に見ながら、
北の方角の調査に向かった。
しかし、300キロほど進んだ所で、
寒さに耐えられず、
昼前には、ネズミ拠点に帰って来た。
その結果、我々は理解した。
北は、壊滅している・・・
つまり、動物は、全て死んでいるのだ。
僕は、その事実を知って、
大きなショックを受けた、ハズ・・・
しかし、なぜか、
気持ちが明るい・・・
『なぜ・・・?』
この様な場合、
暗く、落ち込み、
深刻に考える・・・
その様な状況なのだ。
しかし、落ち込めない・・・
そして、考えた。
『なぜ、落ち込む必要がある・・・?』
『なぜ、僕は、今・・・』
『落ち込むベキと考えた・・・?』
『なぜ、落ち込む、努力をしようとした・・・?』
そして、気付いた。
『こんな状況では、落ち込むベキ・・・』
僕の場合、この発想は、
アニメの影響と、考えられた。
これが、アニメなら、盛上げる為に、
落ち込むベキ、場面なのだ。
落ち込まないと、
「もったいない場面」なのだ。
つまり、僕は、
アニメに感化され、
この様な状況は、落ち込むベキ・・・
その様に考えてしまうのだ。
しかし、冷静に考えれば、
我々は、全く被害を受けていない。
見物に行っただけなのだ。
何も辛くは無い。
これで落ち込むのは、芝居である。
ニュースキャスターが、
苦情を恐れ、
悲しい芝居で、ニュースを読む。
それと同じである。
本当は、悲しい訳が無いのだ。
僕は、本気で、その様に思う。
僕は、性格に、
問題があるのかも知れない。
しかし、本音を言えば、
僕にとって、大切なのは、
父、母、祖母、タロであり、
僕の存在価値は、
その家族を、守る事である。
つまり、段取りで、
落ち込む必要など、無いのだ。
そんなモノは、ただの芝居である。
僕は、納得した。
それにしても、
驚異の移動速度である。
片道300キロ、
途中で、何度も寄り道をしているので、
実際には、それ以上の距離である。
しかし、その様な調査を終え、
昼前に、ネズミの拠点に、
帰って来れたのだ。
こんな早く戻れるなら、
岩塩の大地に行って、
牛肉の塩漬けの様子を、
見てくれば良かった・・・
とも思ったが、
仕込みを行ったのは、
昨日である。
僕の記憶では、
『塩漬けは2週間・・・』
その様な覚えがある。
『まだ早い・・・』
僕は、職人気取りで、
その様に判断した。
そして、僕は、
そんな自分に、不安を感じた。
僕が、知っている事・・・
その多くが、テレビなどで得た知識であり、
経験では無い・・・
『知っている、つもり・・・』
『ただ、それだけ・・・』
僕は、何も知らない・・・
空想で『この様に成る・・・』
そう思っているだけ・・・
それが、
『事実とは限らない・・・』
『テレビ通りに行くとは、限らない・・・』
『僕の、知識には、何の裏付けも無い・・・』
そんな僕が、家族の命を預かっているのだ。
生きる環境を探すには、僕の魔法が必要であり、
僕の判断が重要なのだ。
『無知な僕が、家族の命を左右する・・・』
その思いが、鮮明に成って、
僕に、恐怖感を与えた。
僕が、優秀な人間であれば、
もっと上手く行っている・・・
しかし、現在、この家族を守っているのは、
無知な僕なのだ。
つまり、
『我々は、失敗している・・・』
『僕の判断で、失敗している・・・』
『それは、充分に理解出来る・・・』
『しかし、何を失敗しているのか・・・?』
『僕には、解らない・・・・』
これが、恐怖だった。
これは、芝居では無い。
これは、事実である。
一方、祖母が、何かを考えている。
残念ながら、祖母の語力では、
その考えを、僕に説明する事が出来ない。
結果、母が祖母を抱きしめ。
僕が、祖母の心の映像を見る・・・
『小屋・・・?』
それは、小屋の映像だった。
祖母が考えたのは、
『イカダに、イカダの壁を設置して・・・』
『風を防ぐ・・・』
『イカダに、イカダの屋根を設置して・・・』
『雨を防ぐ・・・』
現代人であれば、幼稚園児でも、
小屋を知っている・・・
しかし、原始人の祖母は、
小屋など、知らない・・・
つまり、祖母は、小屋を、
自分で考え出したのだ。
祖母は、小屋の発明者なのだ・・・
僕は、その事に驚いた。
『イカダで、移動出来る洞穴を作る・・・』
『これで、寒い場所でも我慢出来る・・・』
それが、祖母のアイデアだった。
祖母は、責任を感じていた。
寒いから引き返したのだ。
寒さを我慢出来れば、
もっと北に行けたのだ。
しかし、それが出来なかった。
その事に、祖母は責任を感じているのだ。




