013
現在、幼稚園で、お弁当の時間・・・
別の事に集中しながら、魔法を意識する・・・
これにより、魔法が発動する。
僕は、その可能性に、気付いた。
そして、その方法として、
数字を逆に数えるのは、名案であった。
しかし、僕には、使えない。
僕は、確信していたのだ。
『魔法に、呪文は、必要無い・・・』
僕は、経験によって、その事を理解していた。
そんな僕が、魔法の為に、数字を数える。
つまり、それは、呪文である。
『これでは、駄目だ・・・』
『でも、本当に駄目なのか・・・?』
『試す価値は、あるのでは・・・?』
ところが、僕の何かが、
それを駄目だと、判断していた。
『なぜ、駄目なのか・・・?』
僕は、駄目な理由を、感覚的には、理解していた。
しかし、僕自身、その理由を説明出来ない。
『これでは、駄目だ・・・!』
僕は、大切な事に気付いた。
『説明は出来ないが、解っている・・・』
『そんなのは、嘘だ・・・』
僕は、僕に、そう言い聞かせた。
『自分に説明出来ない事は・・・』
『理解出来ていない事なのだ・・・』
だから、感覚的に理解している「つもり」でも、
本当は、理解していないのだ。
複雑な機械を見て、
「凄い」と理解出来ても、
それが何か、理解出来ない。
それと同じ事である。
だから、僕は、僕に説明した。
しかし、当時の僕は、幼児なので、
上手には、説明出来なかった。
しかし、僕は、僕に、何度も説明した。
しかし、残念ながら、当時の僕には、
考える事が、出来なかった。
『何を考えれば、良いのか・・・?』
『どの様に説明すれば、良いのか・・・?』
それが、解らなかったのだ。
ちなみに、当時、僕が、説明したかった事とは、
以下の様な事である。
『魔法を使う時に・・・』
『魔法なんて実在しないと・・・』
『無意識に考えてしまう・・・』
これは、考えていない「つもり」でも、
絶対に考えてしまう。
非常識を演じて、
『魔法は実在する・・・』
その様に考えても、それは演技である。
魔法なんて存在しないという、常識は消えない。
僕は、魔法を使う事が出来る。
それでも、やはり魔法の存在に、
疑問を持ってしまう。
先日、ドアが半分開いた・・・
しかし、それも、力の加減である事を、
否定出来ない。
僕は、人間である。
知能の高い、動物なのだ。
だから、疑問を持ってしまう。
これは、当然の事なのだ。
しかし、常識的に考えていたのでは、
魔法は発動しない。
結果、その常識を振り切る為に、
強く念じてしまう。
ところが、強く念じれば、
それだけ、魔法が「実在しない」事を、
認める事に成る。
魔法が無いと解っているから、
強く念じて、それを望むのである。
『呪文とは、そういうモノなのだ・・・』
『呪文を唱えると・・・』
『欲が出るのだ・・・』
『この場合の、欲とは・・・』
『出来ない事を、認める気持ちなのだ・・・』
『だから、念じてしまうのだ・・・』
『だから、魔法は、発動しないのだ・・・』
しかし、逆立ちコマを倒す事は出来る。
当然の様に出来る。
つまり、間違い無く、魔法は、存在するのだ。
僕は、魔法が使えるのだ。
『自信を持っても良いのだ・・・』
ところが、逆立ちコマに向かって、
「8の字に動け!」と念じた場合・・・
僕の心の中では、
それは「無理な事」と、考えてしまう。
『では、どうすれば良いのか・・・?』
僕は、過去に1度だけ、逆立ちコマの逆立ちを、
魔法で阻止した事がある。
それ程の能力が、僕には、あるのだ。
『しかし、それが、使えない・・・』
『その能力が、引き出せない・・・』
『では、なぜ、引き出せない・・・?』
『理由は、それは無理だと・・・』
『考えてしまうからだ・・・』
しかし、僕は、僕を叩く事で、
『無理だ・・・』
と考える気持ちを、邪魔する事に、
成功しいている。
昨日、それを使い、
サイコロで、1の目を出したのだ。
しかし、自分を叩く方法には、
危険性を感じる。
『本当は、やっては駄目・・・』
『これは、悪い事だ・・・』
『次第にエスカレートする・・・』
『危険である・・・』
そんな気持ちがある。
だから、今後、自分を叩いても、
その罪悪感が邪魔をして、
魔法は、発動しない。
『その様に思う・・・』
『思ってしまうのだ・・・』
『だから、魔法は発動しない・・・』
『だから、別の方法を、考える必要がある・・・』
しかし、その別の方法が、思い浮かばない。
『罪悪感が無く・・・』
『危険性が無く・・・』
『家族にバレ無い・・・』
『そんな方法が、本当にあるのか・・・?』
僕は、この様な事を、
幼児の思考で、何度も何度も考えた。
しかし、
この感覚を、どの様に説明すれば良いのか、
解らない・・・
その為、結局は、感覚的に、
『呪文は、駄目・・・魔法の邪魔・・・』
『叩くのは、危ない・・・』
その程度の事しか、理解出来なかった。
『賢く成りたい・・・』
それが、僕の切実な願いだった。
そして、気付いたら、
僕は、母に連れられ、家の前に居た。
『まただ・・・・』
母と一緒に、家に帰って来たのだ。
ここまで無言であった訳が無い。
『しかし、会話をした記憶が無い・・・』
もし、僕が、母との会話を無視して、
考え事に、集中していたなら、
母は心配して、僕の考え事を、
中断させていたハズである。
つまり、僕は、考え事をしながらも、
母と会話をしていたのだ。
『何を、話したのか・・・?』
興味があるが、母には聞けない。
家の前で母は、郵便局の人と、立ち話を始めた。