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これは魔法の書です。  作者: わおん
124/2329

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我々は、岩塩の大地の横断に成功して、


牛の生息する平原に到着した。



目視では、牛の群れ以外は、


見当たらない・・・



そこで、僕は、


音を見る千里眼で、周囲を調査・・・



草・・・


草の擦れる音・・・



その発生源が、輪郭と成って見える。


実際に、音が見えている訳ではない。



もし、音が見えていたら、


全方向、全ての空間が、見える音で埋め尽くされ、


逆に、何も認識出来ない。



では、何が見えているのか?



おそらく、音の発生源・・・


音では無く、物体が発する振動・・・


それが、僕の魔法反射に、


影響を与え、


物体の輪郭が、見えているのだ。



その範囲は、平地であれば、


半径1キロ程度。



『狼はいない・・・』


『恐竜もいない・・・』


『ネズミもいない・・・』



『動物の数は、そんなに少ないのか・・・?』



少し考える。



『ここは、まだ、岩塩の大地に近い・・・』


『結果、動物が、少ないのかも知れない・・・・』



『雪も積もっていない・・・』


『山が遠いから・・・』


『この辺りには雨雪が降らない・・・』



『つまり、水が無い・・・』



『では、なぜ、牛は、ここに居るのか・・・?』



少し考えた。



『あっ!塩・・・岩塩の大地で塩分補給・・・』



生前、僕は、牧場の牛が、岩塩をもらっている光景を、


見た事があった。



どうやら、牛は、塩が好きらしい。



『その為に、こんな場所に来ている・・・』



『つまり、この後・・・』


『水の飲み場に、引き返す・・・?』



『よし・・・!』


『追跡だ・・・』



僕は、千里眼で、周囲を警戒する。



そして、家族には、横1列、


しゃがんだ状態に成ってもらい、


移動魔法の幅を、10メートル程度にして、


牛の群れに近付いた。



我々は、家族全員が、同時に、


移動出来る様に成っていた。


牛との距離、300メートル・・・



3人と1匹は、緊張している。



牛は、草しか食べない、


その事は、説明したが、


それでも恐いのだ。



ちなみに、この牛は、


僕の知っている牛では無い。



あくまでも、牛の様な動物であり、


本当に、牛である保証は無い。



その為「草しか食べない」


という保証も無い。



しかし、もし、あの牛100頭が、


肉食であったなら、そのエサは、どこに居る?



現実的に考え、牛の身体で、獲物を追いかけ、


それを仕留める事など、不可能なのだ。



つまり、あの動物は、牛なのだ。



その事を、母に伝え、母は、父と祖母に伝えた。


しかし、そう簡単に、恐怖は消えない様である。



それが野生の警戒心なのだ。



『では、牛は、どうなのか?』



牛を観察する。



『牛は、こちらに気付いているのか・・・?』



300メートルで、気付かない事はない。



現在、3人と1匹は、しゃがんでいる。



しかし、ここは、草よりも土の地面が多い、


障害物は、ヒョロヒョロの木が1本、


これでは、身を隠せない。



つまり、牛にも、



『我々が見えているハズ・・・』



『牛の視力は・・・?』


『牛に、反応がない・・・』



牛が、襲って来る様子は無い。



母の不安も、少し、やわらいだ様である。



僕は、周囲を警戒しながら、考えた。



周囲のモノから、


可能な限りの、情報を引き出す。



『ヒョロヒョロの木が1本ある・・・』



それ以外は、1本も無い。



『つまり、この木は、非常に珍しい、例外・・・』


『高さ、2メートル・・・』


『周囲に、池や川を見当たらない・・・』



しかし、



『木が、2メートルまで育った事は、事実・・・』



周囲の草の様子を観察・・・



草よりも、土が見えている面積の方が多い。



『つまり、雨は少ない・・・・』


『草が維持出来る、最低限の雨量・・・』



『水が、少ない・・・暮らし難い環境・・・?』



『では、山に近付けば・・・』


『雨が降りやすい地域に、成るだろうか・・・?』



『ここから、何キロ程度だろうか・・・?』



ここまで、考え・・・


僕は、問題に気付いた。



『この先、移動魔法が使えない・・・』



ここまでの道のりは、


平地だった。



地面が見えており、


安全なポイントに、移動する事が出来た。



しかし、この先は、



草が生え、石が転がり、枝も落ちている。


足に刺さる危険性がある。



毒蛇や、サソリも居るかも知れない・・・



その全てを、千里眼で見分け、


安全なポイントに移動する・・・



『それは無理だ・・・』


『出来る保証が無い・・・』



危険過ぎた。



その為、僕の移動魔法は、発動しない、


ハズである。



『では、どうする・・・?』


『歩くのか・・・?』



牛の大地を進めば、


その先には、森があり、


その先には、山もあるだろう。



『何キロ、歩く・・・?』



ちなみに、


ネズミの森から、岩塩の大地までは、


約180キロもあった。



つまり、こちら側の森を、目指す場合、


おそらく、それと同等の距離、


あるいは、それ以上の距離がある。



そう考えておくベキである。



『もし、180キロ、歩くとして・・・』


『その移動時間は・・・?』


『人間は、1時間で・・・』


『どの程度、歩ける・・・?』



『解らない・・・・』



そこで気付く・・・



『そもそも、森を目指す必要があるのか・・・?』



『この先、少し行った所に・・・』


『牛の水飲み場があったら・・・』


『そこで、暮らせば良いのでは・・・』



と納得しそうに、成ったが、



『駄目だ・・・』



僕は、気付いた。



『他の原始人を、探す必要がある・・・』



このままでは、3人と1匹は、


滅んでしまう・・・



生前の世界では、


『結婚をしない自由、子供を産まない自由・・・』


その様な、考え方もあった。



しかし、それが可能なのは、


社会が存在しているからである。



お金が解決してくれる、社会・・・


病院があり、


介護施設があり、


生活の保護がある。



『誰かが、やってくれる・・・』



それがあるから、成立するのだ。



ところが、ここは、原始時代・・・



『こんな野生の平原で・・・』


『最後の1人に成ったら・・・』



『今後、生まれるかも知れない、僕の兄弟・・・』


『その兄弟が、1人残されたら・・・』



僕には、持論がある。



『生むのなら、育てるのなら、保障が必要』



という事である。


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