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これは魔法の書です。  作者: わおん
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原始の世界に来てから、2ヶ月・・・


その間、僕は、ずっと、山中で生活をしていた。



1度だけ、平地に向かったのだが、


到着と、ほぼ同時に、引き返して来たので、



『平地には、恐竜がいて危険・・・』



それ以外の事は、何も知らない。



しかし、我々が生きて行く為には、


新天地が、必要がある。



そして、山脈地帯に居る限り、


我々に未来は無い。



つまり、平地に向かう以外に、


選択肢が無いのだ。



しかし、それなら、


僕の魔法が、もう少し、進歩してからでも・・・



その様な気持ちに、成ってしまう。



しかし、僕の魔法が、都合良く進歩する事は無い。


進歩の為には、本当に必要な状況が、必要なのだ。



とは言っても、


この山脈が復活させれる程、僕の魔法は強く無い。



つまり、このまま山に居ても、


僕の魔法が、都合良く進歩する事など、無いのだ。



では、平地に行けば、何とか成るのか?


それは、全く解らない。



しかし、平地の調査に向かう為には、


雪で水分補給が可能な、この時期以外に無いのだ。



準備は、出来ていた。



数日前から、我々は、


出発の為の、相談を繰り返し、


3人は、自発的に用意をしてたのだ。



祖母の作ったリュックには、


蛇の干し肉と、芋が、入っている。



石槍も、2本増えた。


祖母と母が、それぞれ1本ずつ持つ。



これらは、全て、祖母が作ったモノだ。


祖母は、モノ作りが大好きだ。



石を叩き、


槍先を作り、



そして木々の中から、


直径4センチ程度で、


真っ直ぐに、育っているモノを選び、



蛇皮が、乾燥する前に、


槍先を棒に固定する。



僕が勝手に、祖母と呼んでいるが、


祖母は、父とも、母とも、血縁では無い。



祖母が、長寿である事は事実だが、


ここは、原始の世界である。



おそらく、20代後半。


村では、長老の次に、年長者だったらしい。



僕は、生前の家族を思い出した。


不思議と悲しく無い。



本当に悲しい人は、


悲しんでいる場合では無い・・・



やる事が山の様にある。



生前、参列した葬式で、


そんな話を聞いた事があった。



それが本当かどうか・・・?


それが正しいかどうか・・・?



それを決めるのは、本人である。



そして、僕は、今、


悲しんでいる場合では無いのだ。



では、出発である。



と思ったら、タロが、ネズミを咥えて来た。



3人は、目を輝かせる。


久しぶりの肉なのだ。



ネズミが1匹で居るとは、思えない。



つまり、ネズミが、山に戻って来たのだ。



『偶然なのか・・・?』


『タイミングが、良すぎるのでは・・・?』



『これは、神様の・・・』



しかし、



僕は、神様を信じていない・・・


実際には、信じない様にしている。



我々は、今、


食べ物を求め、新天地に出発するのだ。



本当に、新天地などあるのか・・・?


食料は・・・?


水は・・・?


手に入るのか・・・?



そんな不安を抱きながらも、



『行くしかない!』


『命がけで旅立つ!』



その様な決意で、出発するのだ。



ところが、その瞬間、


ネズミの登場である。



食料が向こうから、やって来たのだ。



当然、気持ちが迷う・・・



『この山で、生きて行けるのでは・・・?』



無理に、新天地を探さなくても、



『この山中で、大丈夫なのでは・・・』


『このネズミは、神様からのお告げ・・・』



その様に考えてしまう状況。



だが・・・



『そんな訳がない・・・』



この状況で、神様を信じるのは、愚かである。



『神様は、居ない・・・』


『神様は、守ってくれない・・・』



だから、津波が、起きたのだ。


だから、3人の村は、壊滅したのだ。


だから、タロは、飼い主を失ったのだ。



つまり、


神様が・・・


という発想は、選択の邪魔でしかない。



僕は、僕の考えで行動するベキであり、


考え抜いた上での、行動なのだ。



今回のネズミの登場は、


偶然の現象なのだ。



神様のお告げでも、


神様の助けでもない。



神様と称するモノに、


希望を持ってはいけない。



確実に失敗する。



希望は、自分で作るモノだ。



ネズミが手に入っても、この環境では住めない。



それが事実である。



僕は、自分の弱気を振り払って、


出発の決意を母に伝えた。



3人も、それを理解してくれた。


ここは臭いし、地震も恐い。



半日後・・・


倒木で埋め尽くされた、元渓流に到着。



母の感覚から察すると、


酸っぱい匂いが、充満しているらいし。



2ヶ月前は、ドロの川だったが、


現在は、茶色い水が流れている。



おそらく、上流に、土砂崩れダムがあり、


そこに溜まった落ち葉が、


お茶の葉と同様、水に色をつけ、


それが、少しずつ、流れて来ている・・・



その様に考えられる。



つまり、


その土砂崩れダムが決壊すれば、


この川は、再び、鉄砲水に襲われる。



我々は、滑りやすく、グラグラする倒木を、


乗り越え、川を渡る。



その距離30メートル以上・・・



空には、なぜか、タカの様な鳥が、


数匹、旋回している。



『僕たちを狙っているのか・・・?』



と思ったが、


さすがに、それは無理に思えた。



と思ったら、



タカが急降下して来た。



次の瞬間、


タカが何かを捕らえ、


上昇する。



『小さな動物・・・・?』



千里眼で、ズーム。



『ネズミ・・・』



タカは、ネズミを狩ったのだ。



『この周囲に、ネズミがいる・・・?』



僕の千里眼で視点を変えても、


見つけられない。



しかし、次の瞬間・・・



今度は、別のタカが、急降下して、


ネズミを捕らえ、上昇した。



『なぜ、見える・・・・?』



『タカは、どの様にして・・・』


『ネズミを見つけている・・・?』



などと考えながら、


3人の倒木横断を見守る。



タロは、父に背負われている。



40メートル程度の移動で、


1時間ほどかかった。



我々に、回復魔法が無ければ、


今日は、ここで野宿する事に、成っただろう。



しかし、3人と1匹は元気である。



その為、その後、更に、12時間ほど進み、


森まで1日の距離に到着。



今日は、ここで野宿をする事に成った。


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