011
現在、子供部屋の前・・・
僕は、悩んでいた。
僕が、ひらめき、初挑戦した事は、
成功率が高い。
これは、経験上の事実であった。
おそらく、脳の仕組みと関係している。
その為、ひらめいた芝居をして、
1回目を演じても、
1回目現象は起こらない。
『では、どうすれば・・・』
『1回目の状態が、作れるのか・・・?』
そして、考える。
『なぜ、コマは、毎回倒せる・・・?』
コマ倒しは、1日1回しか挑戦していない。
『これも、ある意味、1回目現象なのか・・・?』
しかし、初日は、
何度も挑戦して、何度も倒せた。
『なぜ・・・?』
『なぜ、倒れた・・・?』
それは、8の字に動かそうとして、
失敗しての、結果である。
そして、あの時、失敗で倒れているとは、
思っても、いなかった。
『だから、出来たんだ・・・』
そして、ひらめいた。
僕は、子供部屋に入り、
玩具箱からサイコロを出し、試しに振った。
そして『6出ろ!』考えた。
すると1の目が出た。
思った通りだった。
『これが1回目現象だ・・・』
僕は、この数ヶ月、
1の目を出す為に、サイコロを振っていた。
つまり、僕にとって、サイコロを振る行為は、
1の目を出す為の、行為なのだ。
だから、今回『6出ろ!』と考えても、
僕の、無意識は、1が出て欲しいのだ。
それなのに『6出ろ!』と命令されたのだ。
だから、僕の、無意識は、
その命令を断ったのだ。
その結果、魔法が発動して、
1の目が出たのだ。
『では、どうすれば・・・』
『毎回、この現象を・・・』
『起こす事が、出来るのか・・・?』
試しに『2出ろ!』と考えながら、
サイコロを振ってみたが、
失敗だった。
考えて欲を出せば、
『僕が、命令して・・・』
『無意識が、それを断る・・・』
その現象が、起こらない。
僕は、欲を出していない、つもりでも・・・
そもそも、1を出す為に、
もう1度挑戦する訳だから・・・
『2出ろ!』と言いながらも、
僕の気持ちは、無意識と同様、
1が出て欲しいと、考えてしまう。
この状況で『5出ろ、3出ろ』などと考えても、
それは、芝居であり、
僕の無意識に、バレているのだ。
つまり、この現象を起こす為には、
僕が、本気で『6出ろ!』と考え、
それに対して、僕の無意識が・・・
『何ヵ月も、1を出す練習をしていたのに・・・』
『6なんて出したくない・・・!』
という、本気の抵抗を、引き出さないと、
魔法を発動させる事は、出来ないのだ。
『では、今後は、どうすれば良いのか・・・?』
再び、考える・・・
何度も、何度でも、考える・・・
僕は、魔法が、
非現実的である事を、知っている。
普通、そんな事は、無理だと、理解している。
『無理と解っている魔法で、コマを倒せる・・・』
『しかし、コマを操作する事は、出来ない・・・』
『どちらも、無理と、解っている・・・』
『それなのに、倒せる・・・』
『それなのに、操作は出来ない・・・』
倒す事も、ある意味、操作である。
つまり、僕は、コマを操作する魔法を、使えるのだ。
『それなのに、なぜ・・・?』
僕は、考えた。
そして、気付いた。
『倒すのは、一瞬・・・』
『でも、コマを、動かすには・・・』
『数秒間、魔法を使い続ける必要がある・・・』
『そして、その時、欲が出る・・・』
欲は、自分で、止める事が出来ない。
そもそも、『8の字に動かしたい・・・』
その思いで、やっているのだ。
「動かしたい」と、欲が出て、当然なのだ。
そして、疑問を感じる。
『そもそも、欲はと、何だ・・・?』
『この場合の、欲とは、何だ・・・?』
残念ながら、当時の僕には、
それを、考える事は、困難であった。
ちなみに、僕が、求めた答えとは、
以下の様に成る。
『欲とは、不安・・・』
『魔法が発動しない不安・・・』
『不安があるから、欲が出る・・・』
『出来ないから・・・』
『欲を生み出す・・・』
『魔法が存在しないう思い・・・』
『それを振り払う為に、欲を出す・・・』
『つまり、この場合・・・』
『欲を出すという事は・・・』
『出来ない事を、認めた事に成る・・・』
『だから、魔法は発動しない・・・』
当時の僕は、考え方が解らなかったので、
感覚的にしか、物事を理解出来なかった。
しかし、それでも、一応、
欲を出す事が、問題である事は、理解出来ていた。
だから考えた。
『では、どうすれば良いのか・・・?』
そして、ひらめいた。
『欲を、止める事が、出来ないなら・・・』
僕はサイコロを転がした。
そして、その瞬間、
僕は、手の平で、自分の、ほっぺたを叩いた。
すると、
『よし!1が出た!』
ほっぺが痛い。
手加減などしていない。
サイコロを転がした瞬間、僕の無意識は、
1が出る事を、願っていたハズ・・・
そして僕も、そう考え、欲を出す・・・
その結果、欲が邪魔をして、
魔法が発動しない。
ハズだった・・・
しかし、その瞬間、僕は、平手打ちで、
欲が出るのを、邪魔したのだ。
実際には、1を出そうと、
考える気持ちは、消えない。
しかし、平手打ちが恐くて、
『1出ろ!』と欲張って、
考える事は、出来なかった。
『こわくて、欲張る事が出来なかった・・・』
結果、魔法が発動して、1が出たのだ。
つまり、この経験を繰り返し、
『何度も、魔法を発動させれば・・・』
『何度も、成功させれば・・・』
『出来る事が、当然だと思える様に成れば・・・』
『出来て当然なのだから、欲は出なく成る・・・』
つまり、その後は、恐怖が無くても、
『魔法が使える様に成る・・・』
『よし! これだ・・・!』
『魔法を使う時、自分を叩けば良いんだ・・・!』
と、思った瞬間・・・
母が、僕を止めた。
子供部屋に行ったまま、戻って来ないので、
心配して見に来たのだ。
すると、僕は「うんうん」唸りながら、
考え事をしていたらしい。
その日、僕は知恵熱を出した。
結局、僕が何をしていたのか?
母には、理解出来なかった。
しかし、サイコロは没収され、
その日は、強制的に寝かされた。