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僕が、原始人の胎児に転生して2ヶ月・・・
季節的に移動が困難に成っていた。
寒過ぎるのだ。
その為、我々は、
以前、猪の内臓を捨てた谷から、
数百メートルの地点で、横穴生活をしている。
そして、現在、僕は、悩んでいた。
僕は、近い将来、脳死する。
胎児の僕に、脳が出来て、
それが機能を開始した場合、
僕の意思とは関係無く、
僕は、僕の脳を使い、
魔法を発動させる可能性がある。
つまり、その瞬間、
脳に負担がかかり、
僕は死んでしまうのだ。
しかし、その状況を、回避出来る可能性・・・
僕は、その方法に気付いた。
『母を、魔法使いにして・・・』
『母に、僕の脳を修復してもらう・・・』
しかし、
『では、一体、何をすれば良いのか・・・?』
『どうすれば、母は、魔法使いに成れるのか?』
ヒントはあった。
僕の家族・・・
つまり、
3人と1匹は、毎晩、同じ横穴で眠っている。
そして、その際、誰も、咳をしない・・・
つまり、回復魔法の影響を、受けているのだ。
通常、回復魔法は、
母が抱きしめ、
接地面積を増やし、
魔法の効果を、高めている。
ところが、
横穴で寝ている時、
母は、誰も抱きしめていない。
隣で眠っている。
それだけである。
つまり、抱きしめなくても、
回復魔法を、送る事が可能なのだ。
そもそも、モノを動かす魔法は、
離れた場所に、影響を与えている。
つまり、回復魔法も、
それが可能なのだ。
おそらく、1ヶ月前には、出来なかった。
しかし、毎日、回復魔法を使っていた事で、
成長したのだ。
僕は、思い出した。
千里眼のズーム機能である。
遠くのモノを、一瞬ではあるが、
拡大して見る事が出来る。
その際、水鉄砲をイメージして、
千里眼で発している「何か」・・・
その「何か」を、一点集中で、発するのだ。
それにより、一瞬だが、遠くの鳥を、
拡大して見る事が可能で、
その頭部を、正確に狙い撃ち出来る。
これを、回復に応用すれば良いのだ。
回復魔法で発している何か、
その何かを、母の手に一点集中して、
発する・・・
その瞬間、僕は、不安を感じた。
『回復魔法を、一点集中で発すると・・・』
『一体、どう成るのか・・・?』
『まさか・・・効果が強過ぎて・・・』
『相手が死んでしまう・・・?』
漫画やゲームの世界では、
手からエネルギーを発して、
敵を倒す・・・
『それと同じ事に、成るのでは・・・?』
その危険性が、感じられた。
つまり・・・
『一点集中で、発するベキではない・・・』
『水鉄砲では無く、ドライヤー・・・』
『指先の一点では無く、手の平の全面・・・』
『この方法で、回復魔法を発する・・・』
『これを、母に、やってもらう・・・』
しかし・・・
『それで母が、魔法使いに成れるのか・・・?』
母の胎内に居る僕が、
母の手の平から、回復魔法を出しても、
それは、僕の魔法であって、
母の魔法ではない。
結果、僕を出産した後、
母は、普通の原始人に戻ってしまう・・・
『どうすれば良い・・・』
『母を魔法使いにする・・・・』
『その為には・・・・』
その後、
僕は、僕自身に、説明を繰り返した。
僕の理解を高め、
僕の無意識に、協力してもらう為である。




