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僕が、原始人の胎児に転生して約2ヶ月・・・
季節は冬・・・
つまり、死ぬ程、寒いのだ
結果、毎日の移動は、自殺行為であった。
その為、我々は、
山中の横穴を拠点に、生活している。
そして、現在、深夜・・・
家族を全員眠らせ、
僕が、1人で見張りを行っている。
僕は、眠る事が出来ないのだ。
だから、考え事を続けていた。
胎児の僕に、
脳が出来た時、
僕の脳は、魔法の負担に耐えられず、
崩壊するかも知れない・・・
つまり、死んでしまう可能性がある。
僕は、死んだ場合、一体どう成るのか?
そんな事は、解らない。
しかし、僕が死ねば、家族が困る。
カビと異臭の、劣悪な環境・・・
その様な環境で、生きていられるのは、
回復魔法の力なのだ。
だから、今、僕は、
『死ぬ訳には、行かない・・・』
家族を、安全な場所に、移動させるまでは、
死んではいけない・・・
『では、僕の脳死は・・・』
『一体、どの様にすれば・・・』
『回避出来るのか・・・?』
生前の僕は、脳を使い、魔法を発動させていた。
そして、最終的には、
脳が、魔法の力に耐えられず、
死んでしまった。
現在、胎児に成って、2ヶ月目・・・
その為、まだ、脳を使わずに、
魔法を発動せる事が出来る。
しかし、今後、胎児の僕の、
脳が完成して、機能を開始したら?
その場合、僕は、再び、脳を使った魔法を、
発動させる可能性がある。
生き物である以上、脳があれば、
脳で考え、実行する。
動物には、その機能が存在する。
僕の判断で、脳の使用を止める事など、
不可能なのだ。
『つまり、僕は、脳を使ってしまう・・・』
『その場合、僕は、どう成る・・・?』
『僕の脳は、破壊されるのか・・・?』
『そして、僕は、死ぬのか・・・?』
しかし、脳が、破壊された場合、
『即死するのか・・・?』
『死ぬまでに、時間があるのでは・・・?』
『その時点で僕が・・・』
『まだ、胎児であった場合・・・』
『その間に、治す・・・?』
『僕の回復魔法に・・・』
『その様な事が可能なのか・・・?』
そこで、考えてみる。
僕は、毎日、家族の回復を行っている。
これにより、家族の咳は止まる。
『一体、どの様な原理で、咳が止まる・・・?』
咳の原因は、腐敗した空気である。
それが、肺や気管にダメージを与え、
その影響で、咳が出る。
『回復魔法で、その影響を消している・・・?』
『影響とは・・・?』
『肺や気管の炎症・・・・?』
『それを消す・・・』
『その様な方法で、治っている・・・?』
『それを脳に置き換えると・・・』
『魔法を使えば、脳が炎症を起こす・・・』
『そんな魔法を使い・・・』
『脳の炎症を消しながら、魔法を使う・・・』
『脳を炎症させながら・・・』
『炎症を消す・・・?』
『これだ・・・』
僕は、以前、
千里眼を使った事で、母の脳が壊れ、
植物人間に成ったのだと、
勘違いした事があった。
その時、僕は、
母の脳を破壊しながら、
母の脳を治療する事を考え、
そんな事は、不可能だと、
断念した事があった。
しかし、現在、
『本当に、不可能だろうか・・・?』
『出来るのでは・・・?』
もちろん、
空気が悪くて、身体を壊す事と、
自分の無茶で、身体を壊す事は、
別物である。
自分の意志で、
自分の脳を、壊している最中に、
自分の脳を、治す。
馬鹿げた話である。
それは、充分に承知している。
しかし、考える。
『壊してから、治療する訳ではない・・・』
『壊れてから、治療したのでは遅い・・・』
『脳が壊れて、魔法が使えなく成る・・・』
つまり、
『壊れる前に治すのだ・・・』
『壊れていない段階から、治しておく・・・』
『燃える前から、消火活動を開始する・・・』
『結果、燃え難く成る・・・』
この原理である。
『その為には、何が必要か・・・?』
『過剰な回復力・・・』
『壊れる前から、回復を行う・・・』
『その為には・・・』
『日常、絶えず回復を発動させる・・・』
『そんな事、出来るのか・・・?』
『いや、今現在、それは出来ている・・・』
『絶えず、回復を行っている・・・』
『僕の意思とは関係無く・・・』
『回復魔法が発動している・・・』
『だから、母は、疲労が少ない・・・』
『父と祖母と比べると、咳も少ない・・・』
『しかし、咳は出る・・・』
『つまり、現在、僕の回復魔法は弱い・・・』
『そこで、回復魔法を、強化する・・・』
『一体、どうやって・・・?』
僕の魔法は、一度、発動すると、
その後は、使える。
無意識が、それを阻止する事もあるが、
千里眼や、回復に関しては、
使う事を考えなくても、
見えるし、回復する。
逆に、これを止める事が出来ない。
意識を失っても、人間は呼吸をするし、
軽い出血なら止まる。
それと同じである。
考えているのでは無く、
仕組みで、行っているのだ。
『それを強化する・・・』
『どうやって・・・?』
そこで考える。
『無意識に出来る呼吸を、意識的に行う・・・』
これは出来る。
深呼吸である。
『では、回復は・・・?』
『傷口を見て、治る事を意識する・・・』
『本当に、それで回復力が向上するのか?』
僕は、千里眼で、胎児の自分を見た。
『これが、脳なのか・・・?』
『まだ、機能していない・・・?』
医学的知識の無い僕には、
それが、脳なのか・・・?
それも判断出来ない。
しかし、将来、脳に成るであろう・・・
その箇所を見て、
回復する様に念じた。
『解らない・・・』
『本当に効果があるのか・・・?』
『何も実感出来ない・・・』
『つまり、無駄である可能性が高い・・・』
『別の方法を考えよう・・・』




