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第12話 ギルドへ行こう

 買い物を終え、レイフィード達3人は寮へと戻ってきた。

 荷物を一旦各自の部屋に置き、3人はティオニアの部屋へと集合する。


「ティオさんは本当に王都に詳しいのですね。

 失礼ながら、ティオさんのような方はあまり市井には出て来られないものかと思っていました」


 レイは、ティオの案内する道順が限りなく効率がよいことに素直に感心していた。

 同じことをレイがローズレイクの街でやろうとしても、これほどまでにスムーズにできるとは思えなかった。


「私は、実家にそれほど大事にはされていないから。

 自由奔放に育っているところはあるわね。王都にもたびたび訪れる機会はあったし」 


「え? ティオさんて家族と仲良くないの?

 ティオさんのお父さんって、ティオさんのこと大好きだと思うんだけど」


「そうかしら。貴女、どうしてそう思うの?」


「……え゛?」


 ミリルはうっかり口を滑らしていることに気がついた。

 あわわわと、どうやって誤魔化そうかと思っていると、レイが助け舟を出す。


「数える程ですが、私たちは伯爵様とお会いしています。その際ティオさんの話もありましたので。

 少なくとも、そのときの様子ではとても好意的に見えましたよ」


「そ、そうそう! ていうか親馬鹿じゃないの?」


「……確かにそれはあながち間違った見方でもなさそうね」


「ティオさん?」


 レイには、顔を伏せたティオの声がいつもよりも静かに感じた。

 だがすぐにティオは顔をあげ、その表情はいつもどおりであった。


(気のせいでしょうか……?)


 レイはティオの態度に引っかかりを覚えたが、続く言葉に些細な懸念はあっという間に吹き飛んだ。


「そうだ。まだ昼をまわったばかりだし、これから冒険者ギルドへ行きましょうか」


「「え?」」


 どういう思考回路? とレイとミリルが疑問符を思い浮かべる。


「貴女たち、それだけの強さなら本当にハンターになることも将来の道の一つとして充分に選択肢に入るでしょう。

 というか貴女たちの様子を見ていると、なんだかどう見ても一番向いていないように思えるハンターになるということが、逆にしっくりくるわ。

 なら、一度体験してみたらいいのよ」


「……体験、ですか。それはつまり…………」


「そう、実際に依頼を受けてみましょう。

 仮にも私たちは上級学校の生徒。ハンターとしての登録はすでにできているもの。

 二人とも冒険者カードは持っているでしょう?」


「「……はい」」


 レイとミリルは、冷や汗を垂らしながら返事をした。


(……姉さん、冒険者カードって何枚持ってる?)


(……1枚しかあるわけないじゃないですか)


 本来、上級学校の生徒は、入学の際に事務室で入寮の手続きと共に冒険者カードを配布される。

 レイとミリルは事務室にて、あらかじめギルドでカードを発行してきたと言って誤魔化していたのだが……。


(だよね。…………どうしよう、依頼受注するときに受付でカード見せて、私たちのランクなんて読み上げられたら終わりだよね)


(一発で正体がバレますね……どうにかギルドへ行かない方向に話を持っていきましょう!)


(それしかないね!)


「えっとですねぇ……」


 レイとミリルは脳みそをフル回転させて、思いつく限りの言い訳をひねり出すのだった。




 ◇ ◇ ◇




 無力であった。


「ここが冒険者ギルド……」


 ティオが興味深そうに建物を見上げる。

 ぱっと見て大きな酒場にしか見えないが、実際に中には酒を出している店もあるのだから間違いでもない。


「ほ、本当に行くんですか? また今度ということにしても……」


「不都合があるわけでもないでしょ。善は急げと言うわ。

 私のことなら気にしないで。貴女たちの邪魔にはならないようにするから」


(不都合があるのはこちらなんです……)


(もうどうにもならないね。なるようになるしかないよ。なるたけぱぱっとすませちゃおう)


 レイとミリルは目で会話をして、ティオに続いてギルドへと入る。

 王都のギルドはさすがの広さである。

 待合室として機能している酒場だけで、ローズレイクのギルドがいくつか入りそうだった。


「あれが依頼の掲示板ね。私たちも行きましょう」


「は、はい」


 堂々と歩いていくティオに、レイとミリルが続く。

 どちらが本職のハンターなのかわからなくなってくる構図であった。


「……数が多過ぎるわね。全部見ていたらキリがないわ」


「ティオさん、まずはFランクの依頼を見てみるのはどうかな? DやCランクになったら、きっと私たちじゃ大変なんじゃないかな」


「そうね。今日は依頼の内容よりも、まず体験することを第一優先としましょうか」


 ギルドによって依頼の張り出し方には違いがあるのだが、王都のギルドはランクごとに張り出されているようだった。

 場所によっては期限だったり、報酬だったりでまとめられていることもある。


 ミリルとティオが低ランクの依頼が張り出されている方へと移動していく。

 レイは横目でそれを見て、何気なく、だが素早くギルドの受付へと早歩きした。


「こんにちは。今日はどうのようなご用件でしょう?」


「依頼の受注に。ですが、現在私は護衛対象に内密での護衛依頼を請負っております。私自身はBランクハンターですが、初心者ハンターとして扱ってください。他に連れが一人いますがその者も私と同様に願います」


 冒険者カードを見せながら、レイはティオ達を視線で示しながら早口で話す。

 受付の女性はにっこりと笑い、


「ええ。わかりました」


 と、拍子抜けする程あっさりと了承した。


(……さすがは王都のギルドといったところでしょうか。この程度の厄介事には馴れているのかもしれませんね) 


 レイは小さく一礼をしてティオ達の元へと戻る。

 と、二人の元にはいつの間にか少年が一人増えていた。

 なにやらミリルと熱心に話しているように見える。


「ミリル、そちらの方は……?」


 レイは言いかけて、少年に見覚えがあることに気がついた。

 確か上級学校の生徒だ。

 名前は……ドルドルなんたらだったとレイは思ったが、正確には覚えていない。しかし確実に見た記憶がある顔だった。


「あ、姉さん。この人は……」


「やぁ、僕はドルドレーグ・フランシール。上級学校の同期さ。

 君はこのような場所にいても美しいね」


 ふぁさぁっと黒髪をかきあげる仕草を見て、レイはようやくピンっと来た。


「あ、メイドさんの人ですか」


「…………誤解を招く言い方だけど、おそらく間違ってはいないだろうね」


 少年は整った顔を若干引き攣らせて苦笑する。

 彼は武術試験で、槍を装備したメイドに滅多打ちにされていた少年だった。



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