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ボーダブレイカ  作者: 高温動物
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出会い

 舞台劇により人気の退いた中庭にて、ミレアは新鮮な空気を吸いこんでいた。

「はぁ……さすがに疲れるわね。こんなハードスケジュールをこなしていたメイルには感服ね」

 今は一時的に変装を解いており、普段の身なりに戻っていた。開催中は警備として定期的に巡回する旨を女中達に伝えてあるので、この姿で巡回していても問題はない。

「……これ、休憩してる意味ないわね。まあいいか」

 やることも無く、メイルへ中間報告をしに行こうかと思った時だった。

「…………?」

 中庭の隅、何かが動いているのが見えた。形から見るに人であることは間違いないが、このような会場隅の暗がりにいる理由はない。


「もぐ……スパイスが……う~ん、こっちのパイも……あ、これ有名な……でもやっぱりパフィンの方が……」

 見ていると、料理を次から次へ口に運び、その都度何事か呟いている。会場の警備はムーンファミリアが行っているはずだが、浮浪者でも侵入したのだろうか。

 さすがに見過ごすわけにはいかず、ミレアは様子を窺いつつ声を掛けた。

「あの、どうかされましたか?」

「むご! ふぁいっ!?」

 口に色々と頬張ったまま素っ頓狂な声を上げた不審者。驚きのあまり転倒しそうになったので、ミレアがその手を掴み止めた。

 触れた感触は柔らかで、明らかに女性のそれだった。


「えっと、大丈夫?」

「しゅ、しゅいませんれふ」

「……まずは飲み込んだら?」

 ミレアが近くにあった水を差し出すと、慌てた様子で少女が飲み干す。

「あ、そんな勢いで飲んだら」

「う、ぶふぇ! ごほっ!」

 品も何もあったものではない。

「何やってるのよ……ほら、別に焦らなくていいから」

 なぜだろうか。少し質は違うが、メイルを相手にしている気分になった。


 咽ている少女の背中を撫でようと手を伸ばした時、雲に隠れていた月が顔を覗かせた。

 月明かりが降り注ぎ、互いの姿が明瞭となる。

「「…………」」

 沈黙。

 ミレアは銀光を反射する髪を見て、少女はミレアの黒髪の揺らめきを見て、


「「――綺麗」」

 全く同じことを、同時に呟いた。

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