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ボーダブレイカ  作者: 高温動物
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龍の伝説

高温動物によるオリジナル小説です。

百合要素がありますが、基本的にはバトル要素メインの復讐劇となっております。

某夏冬の即売会など、書籍化頒布予定となっておりますので、一人でも多くの方に気に入って頂ければと思います。

 今より幾千年も昔。


 この世界には沢山の仲間がおりました。鳥も牛も虫も人間も、皆が仲良く平和に暮らす楽園だったのです。

 そんな平和な世界には、彼らを見守る双子の龍神様がおりました。龍神様はいつでも皆が仲良く過ごせるよう高い山の上から世界を見ていました。


 ある日、いつものように皆が龍神様へ感謝を伝える捧げ物を届けた後のことです。

 龍神様への捧げ物に一匹の蛇が近付きました。彼は名をクリスナといい、三度の飯よりお酒が大好きな悪戯者でした。

 クリスナは龍神様へ捧げられた高級なお酒を一度でいいから飲んでみたいと考え、あろうことか龍神様に見つからぬようこっそり一口飲んでしまいました。

 その時、クリスナの牙がお酒に触れてしまいました。クリスナ本人も気付かぬまま、そのお酒は龍神様へ捧げられました。

 その後、先にお酒を飲んだ龍神様が苦しそうに泣き叫び、のたうち回り、そのまま亡くなってしまいました。


 これを知った龍神様は泣きました。そして怒りに任せ吠え続けました。

「誰が我が愛しき兄弟を殺した! このような仕打ちを受けるとは、哀しみと怒りで世界を焦がしてしまおう!」

 龍神様の叫びは海を荒れさせ、大地を割り、雷鳴を呼びました。

 この事態に生き物達は大混乱。お酒を盗んだ蛇はこっそり逃げようとしましたが、鳥の眼から逃れることは出来ず、あっさりと掴まってしまいました。

 そして、蛇は自分の両腕と両足を取り上げられ、胴体だけになってしまいました。


 しかし、それで龍神様の怒りが静まることはありませんでした。

 その最中、馬たちは密かに龍神様へ祈りを捧げながらこう言いました。

「形は違えど我々と龍神様、本質は同じ。四本の足で地を駆け、優美な尻尾が見る者を虜にするのです」

 それを聞いた龍神様はこう言いました。

「なんと無礼な! 羽も持たず、走ることしか出来ないではないか!!」

 そう叫ぶと、馬の額に生えていた立派な角を折ってしまいました。


 次に、同じように祈りを捧げながら大鷲が言いました。

「形は違えど我々と龍神様、本質は同じ。翼を広げ、空を旅する雄々しき姿が見る者を虜にするのです」

 それを聞いた龍神様はこう言いました。

「なんと無礼な! 甲高いだけの下品な声しか持たず、火を吐くことも出来ないではないか!!」

 そう叫ぶと、龍神様は火を吐き、鳥の寿命を焼いてしまいました。


 龍神様の怒りはいつまで経っても止みません。みるみるうちに世界の形が変わってしまいました。

 そんな中、人間の青年が皆を集めてこう言いました。

「なぜ皆龍神を恐れる? 単に図体が大きく、声が大きく、息が熱いだけではないか。蛇の毒で死んでしまう神をいつまで敬う必要があるのか」

 シルバという青年の言葉に皆が驚きます。神様を恐れぬ姿に恐れすら抱く者もいました。

 しかし、蛇と馬と鳥は違いました。蛇はせめてもの償いに、馬と鳥は龍神様への怒りを持っていたのです。


 彼らはシルバに力を貸しました。切られた馬の角を加工し刃を作り、刃にはたっぷりと蛇の毒を染み込ませました。

 刃を持ったシルバは鳥の翼を借り、吠え続ける龍神の頭上へ辿り着くと、太陽に眼が眩んだ隙に刃を突き立てました。

 龍神は悲鳴を上げながら倒れ、その衝撃で空いた穴が火山となりました。


 皆はシルバを称えましたが、彼は龍神を殺した罰を自らに与え、その後の人生を双子の龍神への祈りに捧げたそうです。

 地と空は鎮まりましたが、龍神を失った生物達はそれぞれ異なる歩みを進み始めることとなるのです。


 ――クリスナ教経典第一節「地龍伝」より――

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