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八話 全てまるっとお見通し!(ただし私が見通す側とは限らない)

「えっと、その……転移者? それってなんですかー?? 私、ちょっとわっかんないなーっ」


 なんて、鼻の頭をかきながら目線を彷徨わせる。

 よっし完璧な演技。


 我ながら上手く誤魔化せて……いるわけないよねーうん知ってた!

 ジャンネさんが目を見開いてこっちを見てるーどうしよー。


「どの国も召喚の儀式を行使出来るほどの魔石はすでに残っていないはずなのですが……。あなたはどこの国で召喚されたのですか?」


 私の真に迫った名演技を完全に無視して、こちらを見据えて質問を浴びせてくる銀色の髪の女性。


 なんなのこの人ー!?

 虚を突かれた私は完全にテンパっていた。

 やばいぞどうしよう。なんでいきなり転移者だってバレてるるんだ……。


「……ジャンネ・ベターリーフ、彼女を召喚したのは王国なのですか?」


 私が答えられずにいると、黒髪の女性はジャンネさんのほうへと視線を移し、質問の矛先をそちらに変えた。

 ジャンネさんもはっとしたように姿勢をただし、スクードさんへと向き直る。


「……スクード様、私は一年前に王国を追放された身の上です。それに三ヶ月前までは『大監獄』におりましたので、王国の現状については分かりかねます」


 この黒髪の女性はスクードさんっていうらしい。

 というか、二人は知り合いだったの? それにスクード「様」? 王国を追放? 大監獄??

 なんか知らない情報だらけで、頭がこんがらがってきたぞ。


「……そうなのですか、それは悪いことを聞いてしまいましたね」

「……いえ」

「ですが納得しました。だから王国はあのように簡単に陥落してしまったのですね」

「王国が落とされたのですか!? まさか魔族の残党が!?」


 取り乱したように声を荒げるジャンネさん。

 話の流れからすると王国って、ジャンネさんがいた国だよね。そこが攻め落とされちゃったってこと?


「滅亡騒ぎの混乱に乗じて、大監獄が破られたのはあなたも知っての通りでしょう。外に出た囚人たちは王国へと攻め入り、城を落として『盗賊国家』として名乗りを上げたと聞いています」

「……そんな」


 弱々しい声で呟くジャンネさん。

 下を向いてしまって、その表情は私からは見えない。


「さて、王国でもないとなると……あなたを召喚したのはどこの国なのでしょう?」


 ジャンネさんの様子が心配でそちらに気を取られていたら、再びスクードさんが私に問いかけてきた。


「……うぐ、えっと」


 しまった二人の会話の内容がショッキング過ぎて、言い訳考えるのすっかり忘れてた。


「シラサキカナン、私は〈鑑定〉を扱えますのでスキルや名前が見えています。隠す意味はありませんよ」


 なん、だと……?

 ちょっとー!? こっちの世界で〈鑑定〉は、一般的なスキルじゃないんじゃなかったんですかー神様ー!?


「もちろん、その鞄に入っているものについても把握しています」


 うっわー、なんもかんもバレてるー。

 これは誤魔化してどうにかなる状況じゃなさそうだ……。

 バレてる上でなにもしてこないってことは、少なくともこちらを害する意図はないってことだよね……? と、そう信じたい。


「……どこの国に召喚されたのかは分からないです。召喚された場所から外に出たら雲の上だったので」

「……ああなるほど、そういうことなのですか。天空城で……」


 あそこってお城だったのか。てことは、あの仮面野郎は城主様だったのかな?

 私はどこぞの王族をボコボコにしちゃったんだろうか。

 まあ全く後悔はしてないけど。


「いいでしょう、大体のことは理解出来ました。では次の話に移りましょうか」


 スクードさんは少しだけ考える仕草をみせたあとで、顔を上げるとあっさりとそう言った。


 ……へ? それだけ?

 

 知られたからにはもっといろいろ聞かれたり、「よくぞ世界を救ってくれました」とか言ってチヤホヤされたりするのかと思ったら、ずいぶんあっけなく次の話にいっちゃった。

 あれれーおかしいぞ? 一応世界の危機を救ったはずなんだけどなー。


「あなた達は、サンダ村の人間達と共に人間牧場に来たと聞いています。こちらへの移住を希望しているとか」

「はい、可能であればスクード様の保護を受けたいと考えております」


 ジャンネさんがはっと顔を上げ、神妙な面持ちでそう答えた。しかし――。


「結論から言ってしまえば移住は認められません。数日間の滞在ならば許可しますが、それ以降は外へ出てもらうことになるでしょう」


 バッサリと断られてしまった。

 

 まじで……? ここまで来て移住出来ないの?

 いや、私達が勝手に頼って来たわけだし、決定権がスクードさんにあるのは当たり前なんだけど。


「……そう、ですか」


 歯を食いしばり項垂れるジャンネさん。そりゃそうだ。

 ここを追い出されたらみんな行く宛もない。外に出たらゾンビだらけだし。

 もちろん私だって他人事じゃないよ。

 ゾンビにやられることはないにしても、衣食住の問題はあるわけだからね。


「待って下さい。私もサンダ村の人達も行くところがないんです。厚かましいお願いなのは分かってますが、なんとかならないですか? 畑仕事だって雑用だって、出来る限りのことはさせてもらいますから!」


 ガンガン働けますよ! 〈実体化した鋼腕(スティールハンド)〉を駆使して、十人分くらいは働いてみせます!!

 そういう意思を込めて、私は両手を合わせて懇願する。


「シラサキカナン、私は理由なく断っているわけではありません。この町の食料事情では、これ以上の人口を維持することが難しいのです。それに――」

「それに?」


「移り住んだとしてもさほど変わりませんよ。どちらにしろ世界は、そう遠くないうちに滅びるのですから」


 スクードさんは、至極どうでも良さそうにそう言った。

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