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二話 復讐するは我にあり!!

 ページを捲る、捲る、捲る。

 そして思考を巡らせる、巡らせる。


 別にね、そこまで結婚に憧れてたわけじゃないんだ。

 まだ出会ったこともない相手らしいし、未練だって持ちようがない。


 たださ、湧き上がってくるんだよね。

 誰かの自分勝手な思惑で、どれだけ私の運命が狂わされたのかっていうのを――いざ目にしてみると。


 心の奥から燃え上がるような、抑えきれない怒りがグツグツグツグツ。


 会社に行っては帰って寝るだけ。

 そんな繰り返しの毎日にすっかり慣れてしまった私に、怒りなんて感情がまだ残ってたことに自分でもびっくりした。


 でもだからこそ、今度は本気の本気。

 今まで生きてきた中でも発揮したことがないくらい真剣に、私は二冊の本に目を通していく。


 もうこの際、リスクを負わず確実に生き残れる方法じゃなくてもいい。

 生き残れる可能性があって、なにより私を召喚した「自分勝手な馬鹿野郎」を思いっきりぶっ飛ばせるような方法――それを探すんだ。




 ◆◇◆◇◆◇◆




 それからどれくらいの時間が過ぎたのか分からない。

 幾通りもの組み合わせの中から一つのパターンを選び出し、私はそれを書き出して神様へ手渡した。



 ――――――


 【一般スキル】

・〈硬質化(スティール)〉20P 身体の任意の箇所を硬化させる。


・〈武器化(ウェポンネス)〉30P 身体の一部を武器へと変化させることが出来る。


・〈多重発動〉100P 同一スキルの同時発動を行うことが出来る。


・〈実体のない腕(ゴーストハンド)〉50P 自在に操作することが出来る「実体を持たない腕」を生み出す。射程は認識出来る範囲。


・〈吸収〔非生物〕(アブソープ)〉200P 生物以外のものに触れることで対象のマナを吸い取る。吸い取る速度は一定。


 【ユニークスキル】

・〈魔石化〉50P 触れた対象を魔石に変える。ただし魔石に変化させるまでに必要な時間は込める魔力と対象のマナ総量による。


・〈アイテムボックス〉50P 入れる物を時を止めた状態で保管出来る、無限の容量を持つ空間。ただし生命は入れることが出来ない。


 【アイテム】

・〈復活の玉〉100P 所有者を一度だけ生き返らせることが出来る復活の宝玉。


・〈神石50個セット〉400P 膨大な魔力が秘められた石。本人が所持するスキルであれば、どんなスキルでも行使することが出来る。ただし消耗品。


 ――――――



 これできっちり1000Pだ。恐らくこれが最善のはず……。


「こりゃまた、ずいぶんピーキーなスキルばっかりを選んだんだねー。神石はユニークスキル用かな? なるほどなるほど」


 私が書き出した用紙を眺めて、神様は意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「〈武器化(ウェポンネス)〉は暗殺者とか密偵向きのスキルだし、〈実体のない腕(ゴーストハンド)〉は上位のゴースト系モンスターが呪いを与えたり命を吸い取ったり、厄災を振りまいたりするためのスキルだね。それから〈吸収〔無機物〕(アブソ―プ)〉は向こうの世界じゃ禁呪扱いされてるスキルだけど、本当にこの構成でいくのー?」


 まじか……スキルブックにはそこまで書いてなかったから知らなかった。

 要するに、どっちも人にバレたら誤解されそうなスキルってことなんだろうけど――。


「その辺は、生き残ることが出来たら考えます」


 私は迷うことなくそう答えた。


「そっか、それじゃあ魔力の回路を作ってスキルを定着させるよん。ハイッ」


 なんとも適当に発せられた神様からの「ハイッ」という言葉と同時に、身体の奥に新しい感覚が湧き上がり、そして綺麗に馴染んでいく。

 頭の中にも変化があり、まるで最初からそこにあったかのようにスキルの使い方を思い浮かべることが出来るようになっていた。


 おおお、これはすごい……。

 でもなんか体に妙な違和感があるな、馴染んでるはずなのになんでだろう。


「次は装備ねー、ハイッ」


 神様の声で、私の服装はさっきまで着ていたジャージ上下から、いかにも冒険者ですといった感じの軽装へと変化した。マントまで付いてて、我ながら結構良い感じだ。


「腰袋に復活の玉と神石が入ってるよ。服と背中のリュックはサービスね、ゲームに付き合ってくれたお礼だから気にしないでいいよん。リュックにはポーションとか食料とか入れといたからさ。ポーションは赤が体力、青が魔力回復だから間違えないようにねー」

「おおお、助かりますっ」


 私は神様にお礼を言って、リュックと腰袋へと手を伸ばして確かめた。


「これで準備万端かなー? もう向こうに送っちゃって大丈夫ー?」

「はい、大丈夫です。神様、いろいろありがとうございました」


 最初はなんじゃこのおじさんは……なんて思ったけど、神様にはいろいろと融通してもらった。

 感謝の気持ちを込めて、私はもう一度深く「お世話になりました」と頭を下げた。


「こっちも久しぶりに楽しかったから全然おっけー。そんじゃ頑張ってー」


 神様がそう言って手を振ると、私の視界は徐々にぼやけていく。


「あ、そうそう。魔力回路を生成した影響で体が少し若返っちゃってるけど、悪影響はないから気にしないでいいからねー」


 視界の全てが白く染まる直前に、頭の中にそんなとんでもない台詞が響いたような気がした。




 ◆◇◆◇◆◇◆




 ――ぼやけていた視界がパッと開けた。


 そこに飛び込んできたのは、いかにも召喚の儀式用といった感じの祭壇のようなもの、そしてその前に立つフード付きローブを着た仮面の人物。


 私は仮面野郎がなにかリアクションをみせるよりも先に〈実体のない腕(ゴーストハンド)〉を発動し、生成した腕に〈硬質化スティール〉をかけてから、その仮面めがけて全力で叩きつけた。


 確かな手応えと共に吹っ飛んだ仮面野郎へと、私はあらゆる角度から〈実体化した鋼腕(スティールハンド)〉を振り下ろしてタコ殴りにする。

 最初は「グッ……!」だの「ギッ……!」だのとうめき声が聞こえてきたが、十数発殴ったあたりでその声も止んだ。


 それからさらに念を入れて数発殴った後――。

 すでに気を失っているのか、脱力して壁にもたれかかる仮面野郎の頭に、最後は自分の腕でパンチをお見舞いしてやった。


「よーし、復讐完了!!」


 崩れ落ちる仮面野郎を見下ろし、私は一番の目標を達成したことを高らかに宣言する。

 そして素早く次の目標に向けて意識を切り替えた。


 仮面野郎をぶん殴るのに二十秒くらい使ってしまった。

 時間がない。


 急いで外に出ないと……!


 部屋の奥に木扉で閉じられた窓を発見した私は、躊躇(ちゅうちょ)することなくそこから外へと飛び出した――。

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