95A
それは、しっとりとした食べ物だった。
鼻腔をくすぐるのは、シーフードの香り、味付けはあっさりと出汁をきかせている。ほんのりと舌に感じる塩味を思い出し、自分はごくりと唾液を飲みこんだ。
小さな皿にちょこんとのせられたことで、その高級感が割り増しになっている。
普段食べている保存性を重視した乾いたレーションとは違う、ゼリーにまみれたパウチとは違う。
そっと、どうぞと皿を目の前に置かれた。
自分はそれに食らいついた。
一口目、二口目、三口目。
無くなるのが惜しい。でも止められない。
これを食べられるのは、一日で一度だけ。
まさにラグジュアリーな食べ物だった。
鼻をすんすんさせ、舌をぺろりとした。
ほんの一瞬の喜びは、綺麗になにもなくなった皿の中身とともに消えた。
今はただ余韻に浸るのみ。
「タビー」
そんな自分の後ろから声が聞こえる。
ハッとなり、後ろを振り返る。
そこには、同僚のアンバーがいた。黒いシルエットが彼女のすらりとした体躯をさらに引き締めて見せていた。
「ふふ、ここに来て配給がおいしいのはわかるけど、それでは駄目よ。私たちは任務にきているのだから」
「わかっている」
士官学校の同級生で、ここでは彼女のほうが先に赴任してきた。自分より一年も前から、こんな美味い飯にありついていたと考えると、少し小憎らしくなってくる。
「食事は美味しいけど、私たちの任務はそれだけ過酷なの。まだ、あなた、馬を手に入れてないでしょ?」
「……仕方ないだろ。ここには、まだ君の馬一台しかいない」
この任務に当たり、馬は必需品である。いや、馬を制御することが、最初の課題といえる。
「私の馬を練習に貸しましょうか?」
「いや、いい。それより、明日、本当に新しい馬が来るのか?」
自分の問いかけにアンバーは形の良い輪郭を縦に振った。
「ええ。今日は、この星におけるお祝いの日、聖者の生誕祭。去年のこの日、私は馬を手に入れたわ」
アンバーは遠い目をする。
その時の記録は、ここへ赴任する前に、自分も見ていた。激しい戦闘の末、彼女は馬を手に入れた。
そして、その馬は、今現在、エネルギー充填中である。
「稼働は間に合うのか?」
本日、現地時刻一八〇〇に作戦を開始する予定だ。
それまで、馬が動ける状態にしておきたい。
「予定では」
ただ、とアンバーは浮かない顔をする。
「どうした?」
「いえ、大丈夫よ。それより、仮眠をとって体力を温存しておいたほうがいいわ」
「……ああ、わかった」
このとき、彼女にもう一度聞き返さなかったこと、それが自分の未熟さだと気づくのはあとのことだった。
柔らかいベッドに入る。仮眠ということもあり、いつでも起き上がれる体勢で目を瞑る。
この星、この居住区に来たのは、一週間前。ようやく、周りの構造と原住民とのコミュニケーションに少しずつ慣れてきたころだ。この居住区にいる原住民は、個体として老成しており、こちらとしてはありがたい限りだった。
若い個体であれば、こちらが威嚇しようとも近づいてくる狂暴なものもおり、配属先によって天国か地獄かわかれる。
そう考えると、食事の面といい、ここは当たりの部類だろう。
よくしてもらっている以上、自分は、任務を全うすることでしか、彼らに返すことはできない。
自分とアンバー、我々がここにいる理由は……。
この星を侵略者から守ることだ。
侵略者。宇宙人といったら、この星の人間は、『イカ』とかいう軟体動物をユーモラスにしたものを思い浮かべるという。もしくは、目がぎょろりとおおきくつるんとした現地人の幼体のようなものを。
生憎、自分らも彼らにとって宇宙人だが、そんな見た目ではない。ちゃんと艶のいい毛を持っているし、その骨格はしっかりしたものだ。我々の姿は、現地人たちにも美しいものとして見られる。
見た目は大事、別の星では、美的感覚が違い過ぎて、クリーチャー扱いされたと、訓練生時代の教官が言っていた。
そして、自分らが戦う侵略者というのは、者といっておきながら人ではない。
機械生命体、いや、情報生命体というべきだろうか。
奴らは、独自の進化を遂げたAIだ。元はとある星で開発された人工知能だと言われているが、困ったことに、その領域を広げ過ぎてしまった。貪欲な知識欲と、自らのメモリを増やすため、その星のコンピュータはすべてそのAIに乗っ取られてしまった。
結果、その星は滅びた。
まるで癌細胞のようだ、自己を増やすことで、それ以外を殺してしまう。結果、自らも滅びることになる。
ただ、問題は……。
そのAIが星間通信によって、宇宙にばらまかれたことである。
それらは、ほんの何バイトかの小さな細胞と変わりない。自然消滅するだろう。
楽観視していた当時の宇宙連盟幹部は、現在、終身刑を言い渡されている。
アメーバのような存在は、分裂、複製を繰り返し、より複雑なものへと進化していく。
自分らの使命は、その原始的な状態のうちに、侵略者を滅ぼすことにある。
そして、侵略者が最初に乗っ取りを行うのが、例の馬なのだ。複雑すぎるものはアメーバにはまだ早い。馬の中でより高度なAIに進化したのち、次の憑代を探す、それが奴らの手順だ。
馬を乗りこなし、そこに巣食ったAIを安全なものに書き換えるのが我々の仕事だ。そして、それを使うことで散らばった侵略者たちを誘導し、殲滅させる。意外と、馬が手に入ったあとは仕事がしやすいと聞く。
つまり困ったことに、馬を手に入れるまでが一番大変らしい。
そして、それを単身行ったのが、アンバーだ。
「ちくしょう」
思わず口からこぼれてしまう。
訓練生時代から、彼女は優等生として教官から一目置かれていた。
二年の訓練期間を、半分で終わらせた。
自分を置いて。
悔しいといったら、その通りだろう。歯がゆいし、なにより腹立たしかった。
誰にといえば。
追いつけない自分自身に。
いくら走っても走っても、その距離は縮まらなかった。まるで、自分がカラカラと回し車の中であがいているのでは、と錯覚するようだった。
この一年間、ずっと焦っていた。
ようやく追いついたと思ったけど、それは間違いで、ようやく自分はスタート地点に立たされたのだとわかった。
しかも、ハンデ付で。
悔しさで、思わずベッドに爪を立ててしまう。
いかん、と手をひっこめる。
寝ないと。
寝て体力を温存し、戦いへと身を投じなければならない。
「ちゃんと寝た?」
「ああ、ぐっすりな」
アンバーの問に、自分は余裕たっぷりに答えた。
嘘だ、本当は寝ていない。
「そう、じゃあ私は馬に乗って九時の方向から行くわ。おそらく奴は十二時の方向より、南下してくるはず」
「……わかった」
「やりかたわかる?」
「馬鹿にするな」
訓練生時代、どれだけ練習したと思っている。
アンバーは口角を上げて、目を細めると、すたっと馬の元へと向かった。
自分はそっとその場に立ったまま、奴が来るのを待った。
どくん、どくん、心臓の音がどんどん大きくなる。
時計を見る。
現地時間、作戦開始時刻だ。
それとともに、遠くから駆動音が聞こえた。
アンバーの馬の音とは違う。それよりも、もっと静かな音だ。
アンバーの馬は一年前の機体だ。それより進化しているのは、ちゃんと考慮している。
どくんどくん。
血が沸騰しそうだ。
自分の目に、その姿が映し出された。
その体躯は、アンバーの馬より二回りは小さかった。輪郭はより柔らかく、同時にシャープになっている。そのスピードも早い。
くるくると回り続ける前足に、埃がかきこまれていく。
その背後には何も残らず、ただ、緑色に輝く一つ目が怪しく軌跡を作っていた。
自分は間合いをとりつつ、野良馬に近づく。弱点はその目だ。その目さえ押さえればいい。
ゆっくり、ゆっくり少しずつ近づいた。
そのときだった。
『オカエリナサイ』
野良馬から声が聞こえた。
『オツカレデスカ?』
なんだと!?
いかん、これはまずい。
我々は馬のハードばかり気にかけていた。
しかし、これは。
ソフト面の強化をされていたなんて。
ピコ、ピココと前足を動かしながら、野良馬が方向を変える。その先にあるのは、自分だ。
そして、勢いよくこちらに走ってきた。
いかん!
自分は踵を返し、野良馬の進行方向からずれる。その丸い機体は、自分の横すれすれを通りすぎた。
毛がはらりと落ちる。
それを、野良馬は前足を使って吸収する。
まるでこれから、お前を喰ってやるぞといわんばかりに。
全身の毛が逆立つように、自分は奴との間合いを取る。
まだか、まだなのか!
ちらりと九時の方向を見る。
作戦では、奴の動きを止めるのは、アンバーの役割だ。その間に、自分が野良馬を制御する。
野良馬はランプをぴかぴかと光らせる。
そして、方向を変える。
自分を無視し、九時の方向に向かう。
ちょうどよかった。
安堵した自分がいた。
予定は狂ったが、これで問題ない。
あとは、野良馬をアンバーが食いとめるのを待つだけだ。
ぺたぺたとゆっくり歩き、その様子を見学しようとした。
しかし。
おかしい。
アンバーは、一年飛び級するほどの優等生だ。
そんな彼女がたてた作戦がそう簡単に狂うだろうか?
いや、もしかして、自分を試しているのか?
……違う、そんなことはない。
自分は、彼女を試していた。
過去何度も。
彼女がなにか失敗しないかと、ほのかな期待をしていた。そうすれば、自分は彼女のことを失望するだろう。
そんなあさましい感情をあざ笑うかのように、彼女は失敗することがなかった。
そして、追いつけないからといって、おとしめようと考える自分に絶望した。
彼女が一年前、この星に赴任が決まったとき、心の中がぽっかりと空いた。
なんでだろう、おとしめようと、失望しようとずっと思っていた彼女なのに。
いなくなれば、いいと思っていたのではなかったのか。
そして、気が付けば自分もまた、ここにいる。
彼女に対する自分の感情は、なんだったのか。
それに決着をつけるために。
野良馬の先に、アンバーと彼女の愛馬が見えた。
アンバーはその艶やかな毛並を乱れさせていた。
彼女の愛馬は動かない。ただ、ランプをちかちかさせている。
どうした?
充電は十分しているはずだぞ。
「アンバー!」
「タビー!」
彼女の声に焦りがあった。
「バッテリーが切れた」
彼女の端的な言葉で、理解した。
そうだ。
馬の寿命は短い。バッテリーは一年が寿命だ。交換しなければ、ただのオブジェと変わらない。
その馬のメンテナンスを行うのは、原住民の仕事だ。しかし、ここの原住民は高齢だ。その方法を理解していない可能性が高い。
畜生!
早く開発部に、翻訳装置を完成させるように急かさねば。報告書に絶対書いてやる。未だ、原始的なボディランゲージで交流しているなんて、ふざけている。
野良馬は突っ込む。
アンバーの馬にぶつかった。
衝撃が来る前に、アンバーは細身の体躯を翻した。
タン、タンっと優雅な足取りだが、その表情は苦い。
『オハヨウゴザイマス』
無機質な声でしゃべる。
「作戦を練りなおそう。一度、撤退しよう」
自分の発言に、アンバーは首を振る。
「いや、それは無理だ」
アンバーはしゅたっと飛びあがり、高所から野良馬と全体を眺める形をとる。
「その馬にはどうやら、無線機能がついているみたい」
「嘘だろ!」
「嘘をいってどうするの」
無線機能は厄介だ。
馬であるうちなら、我々にも勝機がある。しかし、無線によって、馬からどんどん違う機体へと感染が広がったら止めようがない。
「しかし、ここにはそのような施設はないはずだ。まだ……」
高齢な原住民は、無線によるネットワークを使うことがない。それどころか、ローカルな回線すらないはずだ。
「いいえ。明日、ここに原住民の子や孫が来るわ」
「どうしてわかる?」
「去年もそうだったからよ」
遠い目をして、アンバーはこの広場の中心にある一本の木を見る。
尖った三角形のシルエットを持った木は、色とりどりに飾られていた。そのてっぺんに、金色に輝く星がある。
「生誕祭か……」
「ええ。その際、簡易ネットワークを構築する機械が運び込まれてくるわ」
原住民の若い世代にとって、ネットワークは必須だ。
そして、それにこの野良馬がアクセスしたら、どうなるだろうか。
「防がないと!」
アンバーは、素早い動きで野良馬との間合いを取る。
右、左と不規則な動きを繰り返し、翻弄する。
「あの子たちを、侵略者たちから守らないと」
幾度か、野良馬の前足に引っかかりそうになりながらも、アンバーは野良馬を狙う。
その上部、輝くランプ部分を狙う。
そこで強制終了させ、オフラインで野良馬をいじることによって、ようやく馬を従えることができる。
なんでそんなに勇気をもってできるのか。
その耳触りな機械音と排出音は気に食わないのだろうか。
前足につかまれ、自分が食われることを恐れないのだろうか。
やはり、彼女と自分は別物なのだろうか。
「……」
再び、自己嫌悪に陥りながら、自分はじっとアンバーを見ていた。
このまま彼女に任せていても大丈夫じゃないか。彼女は、昨年も同じように一人で野良馬をしとめている。
そうだ、邪魔にならないように見ていよう。
そう思ったときだった。
「!?」
彼女の脇腹に、野良馬が体当たりをした。
アンバーはすかさず避けた。しかし、その顔に苦渋がみちている。
「アンバー!」
自分が叫ぶと、アンバーはにこりと笑う。
いつもそうだ、自分が彼女を試しているとき、こうして笑い、成功させる。
今回も……。
違う!
なにを考えている。
それでは、お前はなんのために、この星にきたのか?
ただ、アンバーの足を引っ張りにきたのか?
震える足をなんとか一歩前にすすめる。一歩、二歩、そして三歩目でようやく大きく前にすすめた。
よろけるアンバーの前に、その身をねじ込ませたのは今世紀最大の勇気だろう。
「タビー!」
「アンバー、自分の仕事とらないで貰おうか? これは誰の獲物だ?」
笑顔を向けたがそれが引きつってなければいい。
自分は、野良馬にこちらへ来いよ、と誘いをかける。
どうだ、アンバーみたいな小奇麗なのより、少し薄汚い自分のほうが、向こうも好いてくれるようだ。
誘いに簡単にのってくれた。
考えなんてない、ただ、手負いのアンバーより自分のほうが動きがいい。それで十分だろう。
「タビー!」
アンバーが叫ぶ。しかし、先ほどのダメージで上手く動けないようだ。
「上官! 走るのは下っ端に任せろ。あんたは手駒を上手く使って、その良さげなおつむを発揮してくれ。こっちも体力は無尽蔵じゃないんだ」
「タビー」
なにか言いたげな顔をして、彼女はその場を離れる。
それでいい。
自分はこうして野良馬を誘いだし、なんとかやる。
奴の体力が尽きるか、それとも自分がぶっ倒れるか。
はは、鬼教官に鍛えられた足を見せてやる。
そんでもって、終わったら丸一日クッションに身体を埋めて眠ってやる。
奴の苦手な狭い場所を狙う。
しかし、小型軽量化が進んだ野良馬は、旧式と違い、すいすいと段差や狭い場所を乗り越える。
『コンニチハ』
無機質な声が話しかけてくる。
もういい、早く終わらせたい。
そんな気持ちで、自分はジャンプし、高所に上がる。
見下ろすと、野良馬が自分を探すようにぐるぐる回っている。
このまま、放置するという手もあるが、それは悪手だと今までの戦闘でわかっている。
奴らは放置することで、その余った時間をAIの進化に使う。進化を遅らせるためには、こうして奴らにそれを行えない環境を作る。まだ、未熟なAIなら、我々個人で改造ができるのだ。
やるか。
息を殺し、背を屈める。
奴がきた瞬間、その上に乗っかる。
すぐさま、スイッチを押し、強制終了させる。
それでミッションは終了だ。
やれる、やれる、絶対やれる。
教官から何度も言われた。
自分は能力的には、アンバーとは同等のはずだ。でも、それができないのは、その心が原因だと。
なんでだと思っていた。
でも、今ならわかる。
その卑屈な心が、いけなかった。
彼女に憧れるが故、彼女が自分の手に届く場所にいればいいと、ずっと思っていた心が。
彼女を貶めるのではない。
自分が前に出て、彼女と同じ目線に立つ。
それができなかったのが敗因だ。
できる。
やれる。
できないわけがない。
やれないわけがない。
臀部が次第に上がり、揺れる。
バランサー器官が動く。
奴がこちらに向かう。
誘い出すように、毛をぱらぱらと下に放った。
ピコ、ピココと音がして、それを感知する。
来い、来い!
そして!
体重を感じさせないジャンプだった。
野良馬は、己が機体の上に何かが乗っていると気づいただろうか。
すかさず、スピードをあげる。
だが。
ぽちっと、手のひらをのせた。
そして、間合いを取る。
「……やったか?」
野良馬が一時停止した。
自分はそれを確認するため、ゆっくりと近づいた。
やったのか?
その疑問は?
『ナンデヤネン』
その言葉にかき消された。
呆気にとられた自分に向かい、野良馬が突進してくる。
やばい!
そのときだった。
「上司か、私はてっきり相棒のつもりだったんだけど」
上から声が聞こえた。
アンバーが見下ろしている。
そして、目の前には。
前足をからめとられ、動けなくなった野良馬がいた。
「見つけるのに苦労したわ。ちょっとあとで怒られそうだけど」
前足にはコードが引っ掛かっていた。
細いそれは、広場の中央にある木に飾り付けられたものの一つだ。
広場を見ると、横倒しになった木が見える。
「さあ、早く。あんたの仕事なんでしょ?」
自分は、今度は正しい停止ボタンを押した。
ランプが点滅し、もがいていた前足の動きが止まった。
「……おいしいとこ貰って悪かったな」
「ふふ、じゃあ、一緒に怒られてよね」
アンバーの笑いにつられるように、自分も笑った。
入学当時、こうしてアンバーと知り合ったばかりのころはこうやって笑っていたな、と思い出しながら。
薄味のスープに柔らかい魚の身、アクセントに海老が入っている。
その上品な味を噛みしめていた。
「原住民も大盤振る舞いだな。木の件ではかなり怒っていたのに」
あれから、大変だった。
原住民は、野良馬、いや現愛馬にからまったコードを取るのに必死になっていたし、横倒しになった木を見て叫んでいた。
アンバーと自分は、横になって座らされ、よくわからない言語で叱られた。
これは仕方ないことだと説明できるよう、早く翻訳機を作ってほしいと思う。
それなのに、ここ数日は機嫌がよく、こうして贅沢な食事にありつけている。その前は、ずっと乾いた味気ない食事が続いた。
いやそれだけならいいが、原住民の若い個体がやってきたのには苦労した。
アンバーはすでに経験済みだったらしく、自分を囮にしてさっさと避難していた。
許すまじ。
そんな彼女は、一足先に食事を終えて、なにやら本部と連絡を取っていた。
「翻訳機、試作品が来たけど」
「どうだ?」
「んー、まだカタコトで使えないわね。ただ」
アンバーは、原住民を見る。
テーブルに座り、端末の画面を見ている。
生誕祭のとき、原住民の子がこの居住区にも必要だ、と端末とネットワークをつないでくれたらしい。
おかげで、ああやって端末に張り付いてばかりで、少しものたりないといってしまったら贅沢だろうか。
「食事が豪華になった理由はわかったわ」
「なんでだ?」
自分の質問に、アンバーは端末をさして見せる。
そこには、アンバーとともに馬に乗る自分の姿がうつっていた。
「『再生回数百万回だって』、だそうよ」
そのお祝いらしい。
お題、
クリスマス、猫、お掃除ロボット、人類との戦争、メシテロでした。