41/41
7
駅に向かって歩いていると、ミナの姿が見えた。
ちょうど駅から出てくるところだった。
「あっ、マカぁ」
「ミナ、今そっちに行くから待ってて!」
「うん!」
笑顔のミナに手を振り、マカは信号を待った。
休日にもなると、駅前は若い人でごった返す。
…失踪事件があろうと、ここにいる人間の何人が覚えているのか。
マカは少しむなしく思え、ため息をついた。
その間に信号は青へと変わった。
慌てて人ごみの中を歩き出す。
向かいから来る人をうまく避けながら、ミナの元へと急ぐ。
―だから気付かなかった。
向かいから歩いてくる人物。
黒尽くめの服を着て、フードを深く被っている。
口元には笑みが浮かんでいた。
マカが向かってくるのを、心待ちにしているように。
そして二人がすれ違いざま。
大切なモノは、ちゃんと守らなきゃ…
いつか失ってしまうよ?
マカの眼が大きく見開かれた。
しかし足はそのまま信号を渡りきってしまった。
向こう側へとたどり着いたマカは振り返る。
しかしそこに、黒尽くめの人物はいなかった。




