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仲間

「で、あんたは一体なんの能力者なの?」


 オーガを討伐した後、無事に仮の身分証を手に入れたダペルは、古傷の男、魔法使いの少女と三人で第二区の関門に並んでいた。並んでいる人数こそ多くはないが、念入りな検査をしているらしく、思いの外時間がかかっていた。


「なっ! お前、なんで俺が能力者だってわかったんだよ……」


 ダペルが警戒の色を露わにすると、少女は一瞬目を見開き、続いて溜め息をついた。


「嘘でしょ……ちょっと鎌掛けただけなのに本当に能力者だったなんて……仮に本当だとして自分からボロを出すなんて論外ね」


「はっはっは、そうかお前、そうだったのか。ただの魔術師じゃねぇと思ってたが、にしてもお前、無防備すぎるだろうが」


「うるせー、嘘だよ嘘。俺はただの魔術師だっつーの!」


「今更遅いわよ。能力者は皆、並外れた魔法の才があると聞くから、あなたもそうなんじゃないかと思ったの。あなた、魔法を使うのは上手いみたいだけど魔術師としてはひよっこね」


「なんだと!」


 ダペルが声を上げると少女は得意気に笑った。


「本当のことよ? ところでまだ名前を言ってなかったわね。私はリリー、あなたは?」


「……ダペル」


 ダペルがぶっきらぼうに名前を告げると少女は再び溜め息をついた。


「そういうところよ、名前なんて知られたら出自がバレるわよ」


「え? お前だって名乗っただろ、リリーって」


「それは偽名よ。いい? 魔法が使えるってことはそれだけで羨望の対象なの。まして能力なんて持っていようものなら、誰に殺されてもおかしくないわね。だから魔術師は謎を纏って身を守るの。これって魔術師ならファイアボールより先に覚える基本の筈なんだけど、あなたの師匠は何を教えているのかしらね」


 息つく間もなく吐き出された少女の言葉にダペルは狼狽えながらも応える。


「俺に師匠はいないよ、強いて言えば本が師匠だけど。持ってた本の魔法は全部覚えたから王都に来て新しい魔法を覚えようと思ったんだ」


「あなた師匠がいなかったの!? ……通りで危なっかしい訳だわ」


「悪かったな」


「悪かったな、じゃないわよ。いい? 過ぎた力は身を滅ぼすのよ?……でも、そうね……魔法の腕は確かだし………よし、決めたわ」


 少女はしばらく一人で考えごとをした後、何かを決意したようだった。


「あなた、私の弟子になりなさい!」


「えっ」


「だから、弟子になりなさいといっているの」


「えええええぇぇ!?」


「正確には弟子兼師匠ね。私はあなたに魔術師のなんたるかを教える。かわりにあなたは私に魔法を教える。体面的にはパーティーを組むということになるけど」


「パーティー?」


 ダペルが首を傾げると古傷の男が口を開いた。


「ギルド……斡旋所で登録する冒険者としてのグループのことだ。それにしても面白い話になってきたじゃねえか。嬢ちゃん、そのパーティーに俺を入れてくれないか? お前たちに興味が湧いてきた」


「そういうと思ってた。前衛が欲しかったところだしこちらこそよろしくお願いするわ。」


「決まりだな」


「まてまてまてっ! 俺を置いて話が進みすぎだ」


 すかさずダペルが止めに入る。


「で、どうするの? 無理強いはしないけど、私たちとパーティーを組むの?」


 話が急過ぎてつい流れを止めてしまったダペルだが、王都で暮らす上で当てがあるわけでもなかった。加えて、出会って間もないながらも二人のことは嫌いではなかった。つまり答えは――


「わかったよ、俺たち三人は今日からパーティーだ!」


「決まりね。さっきも言ったけど私のことはリリーと呼んで。よろしく」


「カーネルだ。よろしく頼む」


「改めて、ダペルだ。よろしくな」


 こうして今ここに、新進気鋭パーティーが発足した。ダペルは新しい世界での暮らしに胸が高鳴るのを感じた。



 ◇◆◇



 それから数時間後、第二区の酒場で三人は新しいパーティーの方針について語り合っていた。


「とりあえず、リーダーは年上のカーネルがいいと思うの」


「俺もそう思う」


「わかった」


 ダペルは賛成しながらもリリーが一番リーダーらしくしていると思ったが、リリーがそういうのだから仕方ない、と口を噤んだ。


「じゃあパーティーの目標を決めましょうか。何かあるかしら」


 当然のようにリリーが仕切っていく。


「俺は楽しけりゃなんでもいいぞ」


とカーネル。


「俺は何も考えてなかったな」


とダペル。


「あなた達何しに王都に来たのよ……これじゃ私がバカみたいじゃない」


「バカみたいって、リリーはなんか目標あったのか?」


「ええ、言ってもいいけど、笑わないでよ?」


 自信無さ気に二人を見るリリー。


「笑わねぇよ」


「うん、笑わないから言ってみろって」


「わかったわ……私の目標はね、その、最強の、魔術師になること」


「おお! 最強か!」


「笑わ……ないの?」


「笑うもんかよ。しかし最強、か。俺も昔同じような夢を持ってた。年食って忘れちまってたが」


 ジョッキをあおるカーネル。


「はっきり思い出したぜ。ありがとよ、リリー」


「え、ええ」


「最強かぁ、それもいいな。決めたぞ。俺、最強になってやる」


「じゃあこのパーティーの目標も自ずと決まったわね」


「ああ。俺たちの目標は、最強のパーティーだ」

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